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スキルが生えてくる異世界に転生したっぽい話  作者: 明和里苳
第5章 航海編

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第61話 機動力

 さて外交特使団も無事空中分解したところで、俺たちの秋津行き計画はむしろ順調に進んだ。何が順調かって、このたび風属性が無事レベル7に上がったのだ。


同化アシミレーション


 唱えた途端、俺の体はふわりと宙に浮き、舞い上がる。レベル7は自身の体と属性エネルギーが同化するスキルだ。


 まず最初にレベル7に上がったのは、土属性。錬金術でタブレットやオリハルコンを大量生産していたので、派生元の土属性にも経験値が振られたため。しかし、自分の体を岩にしてもなぁ。セルフ石化なんて意味なくね、と思ったものだが、錬金術と連動して自身を金属化出来ると理解した途端にロマンの塊へ。そう、てつのかたまりとなってなにものもうけつけない状態が実現した。とはいえ、アスト〇ンの使い所なんてそうそうないわけで、ゲーム同様、ネタスキルと化している。一度やったらもういい。


 次にレベル7に到達したのは、水属性。水に同化すると、水中の移動が可能になる。まあこちらも、どうしても水中に行かないと手に入らないアイテムとか、水中ダンジョンに行くとか、そんなイベントがなければ使う機会もないだろう。火属性、光属性、闇属性はこれから。火はどうだろう、火山に行く時なんかに役に立つかな?光は光学迷彩にでもなるだろうか。一番興味のあるのは闇属性だ。闇と同化なんて、影潜り的な?しかしレベル7には一番遠い。なんせレベルを6から7に上げるのに、MPを64億も消費しなければならないからだ。


 基本6属性の他には植物魔法、聖属性、雷属性、氷属性が生えているんだけど、この辺もまだまだ。植物魔法と同化は何となく想像が付くものの、聖属性や雷、氷はどんなもんだろう。イメージできないが、あまり役に立たなさそうだ。


 そういえばこの同化スキル、自分自身だけじゃなくて装備品にも掛けられるので、一時的なエンチャントとして使えなくもない。剣に風属性の同化を掛けて、斬撃を飛ばすとか。しかし、レベル7にもなると消費MPが一分間に640にのぼるわけで、それなら普通に属性魔法を叩き込んだ方が早い。しかも元々聖属性を帯びているアダマンタイトやミスリル、雷属性のオリハルコンで武器を作っちゃえば、ずっと属性エンチャントが掛かってるようなもんだしね。


 しかし、風だけは違う。自分が風になってしまえば、即飛行。飛ぶ、飛ばないじゃなくて、風自体が気体であり、かつ飛ぶという現象そのものだからだ。体感、自重が空気と同程度になり、そして重さや温度がある程度コントロール出来るから、高度の上げ下げも思いのまま。もちろん、風の影響をモロに受けて姿勢制御は不安定なんだけど、レベル5の相殺ウィンドオフセットを使うまでもなく、レベル3の風壁ウィンドウォールで風の影響をシャットアウト。そしてレベル1のウィンドカッターを射出することで、任意の方向に飛行できる。レベル6のジェットストリームを使えば、なお速い。


「イヤッフー!」


「いやっふー!」


 テラスハウスに戻って飛行訓練していたら、アロイス様が泣いて悔しがられて、二人一緒に空の旅。アロイス様を抱っこすれば一人分のMPで済むが、今の俺のキャパなら二人分くらいどうってことない。


「くっ…悔しいですわね。大きな転移陣を開けようと思ったら、全属性を上げなければなりませんのに。早く風を上げなければ!」


「まあまあ、ディー。しばらくはクラウスに飛ばしてもらえばいいじゃない☆」


 自力で習得したいディートリント様に、仕組みさえ分かれば自力じゃなくてもいいアレクシス様。対照的なご夫婦だ。しかし、彼らの優先順位は決まっている。全属性レベル5だ。レベル5の転移陣を習得した時、何が起こったか。




===


「範囲収納を習得しました」


===




 そう。元々全属性同時発動は「空間魔法」、そして最初に覚えたのは「アイテムボックス」だった。そのアイテムボックスの魔法陣を同じ板の両面に描いて、その板を半分にスライスしたのが転移陣。転移陣は、アイテムボックスから生まれたのだ。


 レベル5は、属性の作用を打ち消すスキル。その打ち消すスキルでアイテムボックスを作ると、「吸い込む」という効果が生まれた。これは、ある程度の範囲で使用者の任意のアイテムがアイテムボックスに収納出来るというスキルだ。インベントリには元々そういう機能が備わっているけど、全属性をレベル5まで上げれば、俺以外でもアイテムボックスで同じような機能を使えるようになるということ。いずれにせよ全属性を5まで上げたのは俺しかいないから、今のところは俺専用のスキルだけど。




 なおアイテムボックスは、生活魔法レベルで出し入れ口は直径20センチ。これは転移陣で開ける穴と同じ大きさだ。中はおよそ1立方メートルほどの体積のものを格納できる。開いた状態を維持する間、生活魔法の6つ全てを使用するだけのMPを消費する。つまり1分あたり6MP。これも転移陣と同じ。なおアイテムボックスの魔法陣を破壊すると、中に入れていたものがその場にブチまけられ、転移陣の場合は押し戻される。


 レベル1のスキルで作ったアイテムボックスは、穴の直径30cm、消費MP60MP/分、容量10立方メートル。レベル2が直径40cm、120MP/分、20立方メートル。レベル3が直径50cm、240MP/分、40立方メートル。レベル4が直径60cm、480MP/分、80立方メートル。そして5が直径70cm、960MP/分、160立方メートル。ここから範囲収納付き。なお、穴はガッチリと真円というわけじゃなくて、柔軟に形を変え、多少伸び縮みする。セーターを着るみたいな感覚だ。そうじゃないと、レベル4の転移陣でふくよかな先々代ガルヴァーニ夫妻を転移させることはできない。そしてそのお陰で、多少穴よりも大きいものでもアイテムボックスに収納することができる。


 しかしこの範囲収納のスキルのおかげで、穴の大きさによらず160立方メートルまでのものなら、ボックスの中に取り込めるようになった。立方体にすると、1辺あたり5.5メートル弱。転移陣も同様。穴の大きさを気にせず、小部屋くらいの人や荷物を一気に転送出来る。旅行という大移動において、機動力アップは強い味方だ。これだからスキルを伸ばすのはやめられない。




 そしてこの範囲収納スキルがもたらした、もう一つの効果。


「任意のものが収納できるなら———」


 アレクシス様の一言で、どの程度のものがどれだけ収納できるのか、俺たちは実験を始めた。まずテラスハウスに転移して、外に広がる森の中で。特定の木の実を収納しようとすると、視認出来る範囲のものが収納できた。例えば、目に見える範囲のリンゴの実。しかし鑑定スキルを使った場合、葉っぱの陰に隠れたリンゴも認識出来るので、併用するとより多くのリンゴが収納できた。同様に、薬草やキノコなど。しかし動物は収納できなかった。これはこれまでのアイテムボックスと同じ。動物と植物の区切りは何なんだろうか。細胞壁?


 それから、水中のものも。藻や石は収納出来たが、魚などは収納できなかった。一番役に立ったのは、水。水を収納すると、純粋な水だけが収納された。


 ———ならば海水の中の塩分は?


 結論から言うと、出来てしまった。龍眼ロンイェンの港のはずれでこっそりと試したところ、俺たちは一瞬で大量の塩をゲットすることとなった。約320トンの塩。使い切れる気がしない。


 こんなの、チート過ぎないか。例えばこれを鉱山で使えば、簡単に希少金属や宝石だけを収納出来てしまうだろう。もちろん見えている範囲で、という制約は付くけども。なら、見えてる範囲で土を収納して、あらためて外で排出してからお目当ての鉱物を取り出したっていい。なんなら、水素だけ集めて水素爆弾を作ったり、ドワーフが求めてやまない純粋なエタノールを作ることだって。


「ダメです。お蔵入りです」


「だよねぇ…」


 俺たち以外に、そうそう全属性レベル5を達成出来る人なんていないかもしれないけど、この範囲収納だけは秘密にしなければならないだろう。


「何が範囲収納だけは、ですの。全部ダメですわよ、このトンチキどもが!」


 ディートリント様のハリセンが俺たちの後頭部に炸裂する。好奇心は猫を殺すと言われるが、それは俺たちのためにあるような格言だ。なおディートリント様は、このレポートをご覧になってからますます闇属性のレベルアップに励まれるようになった。結局自分だって習得したいんじゃないか。解せぬ。


 ちなみに、同じことがインベントリでも出来たと知って、後でこっそりと膝から崩れ落ちたのは内緒だ。

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