339 戦いの意味(メルド視点)1
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アップする前にチェックしているつもりですが結構ありますね(-_-;)
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――作戦通り、死の結界が崩された。
「アーシュさんとクリスウィン公爵たちが見事にやってくれましたな」
「ああ。……聞いてはいたが、あまりのスケールのデカさに驚いた」
今、俺ガイル・メルド、そしてゼールランド・カリマー公爵が率いる反乱軍の目の前には、白く輝く巨大な浄化結界があった。
先程、とてつもない轟音とともに、立っていられないほど大地が揺れた。
轟音は、一つ、二つと数を増やしていく。
そして六つ目が大地を震わせた次の瞬間、瞬く間に白い柱を起点にいくつもの魔術陣が真っ直ぐに立ち上がり、――やがて上空に巨大な魔術陣が結ばれ、王城全体をすっぽりと覆う浄化結界が結ばれたのだ。
本来ならば魔力は視えないものだ。だからこそ触れたら命を落とす死の結界は、ただでさえ恐ろしいのに、見えないことでさらに恐怖心をあおる代物だった。
その死の結界は今、輝く浄化魔法の結界の中でその姿を現していた。
王城をすっぽりと囲み込むように大きな半円状に構築された闇色の結界は黒い靄のようなもので覆われていることが分かる。
誰もが初めて見る闇色の結界に慄いていると、俺たちの踏みしめている大地から光が迸った。
光り輝く魔術陣はどんどんと広がって力強さを増し、大地から迸り、そして上空に結ばれている魔術陣からも清冽な光が降りそそいでいる。
やがて闇色の死の結界は光の浸食に耐え切れず、ガラスのような音を立てて弾け飛んだ。
反乱軍の魔術師が『……なんて強力な魔術陣なんだ』と呆然と呟く。
強い魔力持ちであるほど、その強力な浄化の魔術陣の力をビシビシと肌で感じているだろう。
幾重にも重なる魔術陣が目の前にあった。
本来、魔術陣は数も強さも、そしてその展開する大きさも、本人が持つ魔力量に比例するものだ。
俺を含め、魔力を持つ者は魔術陣を構築することはできる。しかし、一度に発動できる魔術陣はたいてい一つのみ。二つを行使するとなると、魔力・体力・精神力を倍以上必要とするのだ。ゆえに二属性を有する魔術師とて複数の魔術陣を同時に構築することは容易ではないのだ。
しかも今回は、浄化するための魔術陣。四大魔法を行使する時よりはるかに複雑な魔術陣を構築する必要があり、かつ強力な魔力が必要となる。
それゆえに大きな魔術陣を構築するには、数十人の人数を要するのが俺たちの常識だった。
だが、たとえ数十人の魔術師がいたとて、闇の魔術師が構築した死の結界を破ることはできない。
逆に彼らの魔力を糧に死の結界を強力にしてしまうだろう。
死の結界は四大魔法を吸収して己の魔術を強力にしてしまうものなのだから。
攻撃は死の結界の糧となり強力にするだけ。しかも知らずに近づきすぎれば、命を喰われてしまう危険性が高い。だから今まで手も足も出なかったというのが現実だったのだ。
だが、アーシュさんたちはその死の結界を俺たちの目の前で破った。
白い柱が大地に突き刺さった瞬間、柱の下から上までいくつもの異なった魔術陣が立ち上がった。
そして瞬く間に巨大な魔術陣が上空を覆い、そして大地にも魔術陣が展開されたのだ。
これがアーシュさんたちが作った浄化魔法の結界……。
魔術陣の数も規模も、そして浄化魔法を己の手で作り出してしまえる魔力も。そのすべてが規格外すぎる。それもたった五人で。いや、三人は浄化魔法の核となる柱を運び、結界魔法自体は二人で構築すると聞いていたから、この結界魔法は実質アーシュさんとクリステーア公爵だけで構築したということだろう。
これだけの強力で巨大な魔術陣をたった二人で。
――逆立ちしても俺たちでは決して作り出すことなどできない。
俺とカリマー公爵は上空を見上げ、このとんでもない結界を作り上げた五人の姿をただ呆然と視ていた。
◇◇◇
前々から俺たちはアンベール城の死の結界を壊すために浄化魔法を構築する計画を立て、それに向けて準備をしていた。
アンベール城を陥落させるには、絶対に死の結界を消し去らなければ勝機はないからだ。
浄化魔法は手を清める程度のものから、穢れを払う強力なものまである。
もちろん前者のものでは死の結界など壊せるはずがない。しかも穢れを祓えるほどの浄化魔法を使える高位魔術師は我がアンベール国にはそうそういない。もともと魔力持ちが少なく、結晶石を輸入に頼るしかない我が国では浄化魔法を構築すること自体が難しいというのが現実だ。
しかも死の結界は邪神の種により強大な力を持った闇の魔術師が作ったもの。
闇を切り裂くことのできる力を持つアーシュさんとクリスウィン公爵は、
『私たちの魔力で結界の一部を切り崩すことは可能だが、死の結界は四つの魔導具で構成されているため綻びがあっても補い合ってすぐに復活する。反乱軍全員を無事に通すには死の結界すべてを消す必要がある』と話していた。
確かにその通りだ。一部を切り崩したところで何の解決にもならない。
だから一気に結界を消すため、浄化魔法の核の準備を続けていた。
浄化魔法は浄化の特性を持つ結晶石を用いる。高位の魔術師がその結晶石に魔術陣を刻み、魔力を注ぎ続けて浄化魔法の核とするのだ。
けれど一抹の不安は付きまとった。闇の魔術師の作った結界は強力だ。それは北の森で過ごしてきた俺たちが一番分かっている。いくら浄化魔法を使ったとしても、それがどれだけの結果をもたらすのか未知数すぎた。
しかしそれでもやらなければ。
勝率を上げるために、外側から結界を破るだけでなく内側にある結界魔導具をも壊すべく準備をしてきた、ある日のこと。
アーシュさんが驚くべきことを提案してきた。
『浄化結界の核に女神様の神殿の柱を使う』と言ったのだ。
即座に俺とカリマー公爵、魔術師のクロムは『それはできない話だろう』と反対した。
何故ならかつて北の森にいた闇の魔術師は、女神様の神殿跡に残っていた力を奪おうとして女神様の御手により粛清されたのだから。
ウルド国やジェンド国にある神殿においても、神殿を襲撃した相手に『誓約』における罰が下された事件があったのだ。それゆえに神殿や神殿にあるものはすべて畏れ敬うべきものであると俺たちの心に深く刻まれていたから。
神殿のものを『戦争に使う』ことはそれに最も反する行為だ、と。
けれど女神様は『神殿の柱を浄化魔法の核として使っても良い』とアーシュさんの娘であるアーシェラちゃんを通し、許可してくださったという。
アーシェラちゃんはアースクリスの女神様方の加護を授かっている。
彼女はアンベール王城の死の結界のために数多の命が犠牲になっていることを知って、地団駄を踏んで『ゆるしぇない!』と怒ったらしい。
そう。小さな子供でも分かるくらい、アンベール王の所業は酷い。
死の結界が人の命を贄にすることを知っていながら構築し、それを維持するために人の命を犠牲にし続ける。果てには外国から魔力持ちの人間を攫ってきてその命を無情にも散らせるのだ。その悪行は筆舌に尽くしがたい。
その時、アーシェラちゃんはアーシュさんに死の結界を壊すための提案をしたのだそうだ。
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