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御姉様なんて、私にはハードル高すぎます!  作者: 東雲草
本編

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13/17

13. 素敵な恋

「ほら、よく見せてくれ」


「もう大丈夫ですよ。そんなに言われるほど、腫れてないですから」


実家から、帰りの馬車の中。

アルヴィンは私の隣に並び、口元の傷に、濡らしたハンカチを当てた。


冷たさがしみて、少し痛んだが、目をつぶって耐えた。


「君はそうやって、一人で耐えていたんだね」


「アルヴィン、私に話があるといってくれましたよね、それは、今日が五年目になるからという事ですか?」


本当は屋敷について、落ち着いてからとも思ったが、黙っていられなくて、聞いてしまった。


「そうだ。改めて今後の話をしようとしたんだ」


「以前、取り決めについて聞いたとき、気持ちは変わらないと言っていましたよね?」


「ああ。グレイスと結婚した時、私はこの結婚をずっと続けていくつもりだった。君が自由恋愛と決めて、好きに付き合うようになっても、その気持ちは変わらなかった。もちろん、その間、私とて、聖人のように生きていたわけではない。だが、心にはいつも、君がいて、いつか心を開いてくれるのではないかという、淡い期待を持っていた」


いつまでも待っていないで、ちゃんと向き合うべきだったが、拒否されるのが、怖かったんだと、アルヴィンは言った。


グレイスはアルヴィンに嫌われていると思い込んでいた。アルヴィンは、嫌われたくないから、近づかなかった。


なんだか、みんな勝手に思い込んだり、結論出したり、待ってみたり、そんなまどろっこしい事しているから、結局すれ違ってしまっている。大人の恋愛というのは、難しいものだ。


もっと、シンプルでいいと思った。

ちゃんと言わないからこそ、こんがらがってしまうんだ。


「アルヴィン」


「うん?」


「私、アルヴィンのこと、好きです」


「ぐっ……グレイス……」


突然の告白に、パンチをくらったみたいに、アルヴィンは、びっくりした顔をしていた。


「多分、ずっと前、初めて会った時から、好きだったんだと思います。ちゃんと自覚したのは、最近ですが。今日もきっと、離縁を言い渡されると思っていました。アルヴィンは、あのティファニーさんと一緒になるのかなとも」


「え!?ちょっと、待って!それは…ない!」


「だって…、元恋人で、いまも親しくしていて、ティファニーさんも、次は自分だと宣言してましたし!」


「なっ!アイツ!そんな事を言ったのか!……確かに元恋人だが、それは、グレイスとの結婚前で……、サイモンの関係があって、親しくしているが、その、アイツは今、別の方に目覚めていて……それは、まぁいい」


どうやら、違うようでホッとした。焦り出して、軽くパニックになっているアルヴィンを見るというのも、なかなか楽しく思えてきた。


「叶わないなら、気持ちは隠したほうがいいと思いましたが、もうやめます!私、アルヴィンが大好きです!アル……うぐっ」


自分の事をどう思っているのか、聞こうとしたが、続きは、唇を奪われて、言うことが出来なかった。


「待って、待って、それ以上、先に言わないでくれ。男のプライドというものもあってね。少しはリードさせて欲しい」


(だってしょうがないじゃん!心は16歳だから、ガツガツしていますよ!)


「……グレイス、愛してる」


真剣な目をしたアルヴィンに、見つめられたまま言われたら、体がゾクゾクと波打ったように震えた。


「……ずるい、そんな、大人な言い方」


だってもう大人だろうとアルヴィンに笑われた。(れん)の話はいつかしたいが、今はややこしいのでやめおこうと思った。


「じゃあ、次は大人のキスをしようか」


「え?そんなものがあるの?」


「君は……どういう……」


アルヴィンが、なぜか責めるような目で見てきて、なんのことかと思った。


「分かった。煽ったのはグレイスだからな」


大人を甘く見ていた私は、この後、身をもって知ることとなったのであった。




□□□



その後、数々の罪が暴き出されたお父様は、禁固刑となり、地下牢におくられた。


マルクは、お父様に命令されていたということで、不問となり、家督を継いで、今はアルヴィンの下で働いている。


テレシアは、無事、イーサンと婚約して、近々、結婚の予定だ。


そして、モンティーヌ伯爵邸は、今日も騒がしかった。


「今度、私の家に遊びにいらして。絶対退屈はさせないわ。女同士の楽しいお話をしましょう」


お父様の件が片付いて以来、ティファニーがよく訪ねてきて、お茶の時間を一緒にするようになってしまった。すっかり友人のようだ。ちゃんと話してみると、気さくなお姉様という感じだった。


「ええ、それはいいけど」


「当日まで、絶対にアルには内緒よ」


「絶対にだめだ!!」


どこで聞いていたのか、扉がバンと開き、アルヴィンが入ってきた。


「あら!アルいたの。今日は仕事でしょう」


「嫌な予感がしてね。戻ってきて良かった」


この二人は、未だに、仲が良いのか悪いのか分からない。


「グレイス、絶対にティファニーの家に行ってはいけないからな」


「まぁ、男の嫉妬ほど、醜いものはないわね」


「うるさい!ティファニー、お前の趣味にグレイスを付き合わせるな!」


「趣味?趣味で片付けないで、今や私の人生そのもの。そして、もう、見ているだけで、食べたくてたまらないのよー!」


「なんですか?お菓子作りとかですか?」


「グレイス!君はいいんだ。ティファニーのことは考えるな!」


「何よ!自分だって同じ事を考えてるくせに!」


「ティファニー!もう!出入り禁止!」


(やっぱり、仲良いのか謎の関係だ…)



□□□



ティファニーが帰った後、やっと屋敷に静けさが戻った。


「アルヴィンが、今日早くお帰りになったので、ちょうど良かったです」


「なに?どうした?」


「ずっと、一人の方が気楽だったので、自分の部屋にいましたけど、さっきティファニーにも言われて、やっぱり、夫婦は一緒の部屋でないとおかしいと……」


「くっ………、アイツに言われるとは………」


「その、だめですか?」


「え?何がだ?」


「アルヴィンと一緒に寝たいです。だめですか?」


アルヴィンは、気まずそうな、なんとも言えない顔をした。


「ダメなわけないだろう。ずっと言いたくて、機会を逃して、いつ、言おうか、悩んでいたのに……、また君に先を越されてしまった」


悩んでいて、言えなかったということらしく、全く大人というのは、面倒だ。


「もういい!男のプライドなんて知るか!グレイス、ほら、私たちの部屋にいこう」


「え?お昼寝ですか!?そんなにお疲れだったとは……」


「……いや、疲れるのはこれからだ」


「え?」


「今日はもう離さないから」


アルヴィンに手を引かれて歩いた。


それは、甘い甘い夫婦の時間の始まりで、


私の恋が、愛に変わる、その始まりでもあった。



□□完□



ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。

グレイスとアルヴィンの、仲良し夫婦を書けて楽しかったです。

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