平穏だった時
ふと閃いた話なので矛盾があってもスルーしてください…
『長かった』『やっと見つけた』『ああっ、早く会いたい』『他の誰よりも早く。彼のところへ!』
どこかでなにかが羽ばたく音がした。
「千明。早く用意しないと入学式に遅れるぞ。」
「うぅ…今何時ぃ?」
カーテンの隙間から漏れる光を寝ぼけた目で見ると眩しく、目元を手で覆い隠しながら部屋の外にいる兄に聞いた。
「早く着替えて下りてこいよ。初日から遅刻とか笑えないぞー。」
そういうと兄、将人の、一階に下りる足音が聞こえた。
このまま二度寝してしまいそうな体を起こすためカーテンを思い切り引き、伸びをしてベッドから下りた。
ここで少し私のことを紹介しよう。
私の名前は福井千明。16歳。今日から高校生になった。
両親がおらず8歳年上のまさ兄と二人、両親から受け継いだそこそこ大きな一軒家で暮らしている。
両親が6年前に事故で亡くなった時、兄弟2人親戚に引き取られそうになったがまさ兄が働いて自分を育てると言い強引に通した。いざ就職してみると、どうやら経営に強かったというか…そうゆうものがあったらしい。
今では3年前に独立して作ったITの仕事が右肩上がりで、こうして生活させてもらえる。
頭が上がりませんよホント。
親戚はもっと上がらないらしい。金銭的な意味で。
とりあえず部屋に置いている鏡台の前で、高校デビューを兼ねて茶髪に染めたくせの強い髪に櫛を入れ、世翔高等学校の真新しい制服に着替える。
鏡の前でうれしさのあまり一回転。緑とオレンジを基調としたスカートが広がる。
準備を終え一階に下りると兄は朝食を食べながら新聞を見ていた。
「おはよー。」
「おはよう。ほら、早く食べてしまえ。10時からだろ?」
「学校なんてここから歩いて15分ぐらいだから間に合うって。ほら、あと一時間もある。」
居間に掛けてある時計を見ながらまだ大丈夫という私にまさ兄はあきれ気味に、
「…そうだな。その時計が合ってるならな。」
と言った。
私は、お味噌汁を啜りながらその言葉に頭の上に「?」を浮かべると、
「実は、その時計は昨日から電池切れで止まっている。よく見てみろ。」
ニヤッと笑い時計を指したまさ兄の言葉にまさか、という思いからもう一度見ると、
「……11時…?45分…!?」
真っ青になりながら叫んだ。
まさか気づかずに2度寝していたのだろうかと思い、慌てて携帯を出して時間を確認した。
「…9時…3分…。…まさ兄ぃ。」
恨めしそうに言うと、私の慌てぶりが面白かったのか、まさ兄が笑っていた。
昔からいたずら好きでよく仕掛けてくる兄だったが、こんな日にまで!ドキリとしたわ!
――――――
「じゃあ、行ってきます。保護者は10時半からだけど…よかったの?お仕事。」
これでも社長として働いているのだ。午後から出勤とかいいのだろうか。
「大丈夫。そのために部下がいるし、半日ぐらいどうってことない。ほら気を付けて行ってきな。」
「…はぁい。」
そうして、まさ兄は高校へ歩き出す私を笑顔で送り出した。
――――――
彼は、扉にもたれかかり無表情でつぶやいた。
「…ふん。この気配はあいつらか。気づいてないのか、あいつに接触するつもりなのか…。さすがペットどもの勘は違うな。…だけどあいつは俺のものだよ。」
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