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それは鉛のように重い

いよいよ記録会。今日まで1ヶ月全力で走ってきた。記録会は大会とは異なり今の自分の実力を測るものである。学校で先生が測定するものだと思っていたのだが、きれいに整備された400メートルトラックで走る。今回は1500メートル走だ。共に走る走者を確認する。今回共に走る走者は一組で16人だ。指で走者リストをなぞりながら確認すると俺の名前の4つほど上に坂口の名前があった。

「よろしくなぁ。」

満面の笑みで坂口は俺に話しかけてきた。声がいつもより明るく少しふざけたように聞こえたので、俺を少し煽ってきているようにも感じる。

「お、おう。よろしくな。」

少し怖じ気づいたように俺は返事をした。


大会前の練習は少し軽めに行う。ストレッチをした後ジョギングをし、20分ほどジョギングをし流しと呼ばれる100メートル走を三本くらい走った。俺は少しもの足りないため2本追加した。


レースが始まろうとしている。

「ON YOUR MARKS」のアナウンスが流れる。

辺りは静まり返っている。皆がジャンプしたり、身体をペチペチ叩いて気合いを入れている。皆がライン上に構え始める。心臓の鼓動が止まらない。足も少し震えている。少し弱気になりそうだったが、坂口に気持ちでは負けまいと気合いを入れた。

「坂口に勝ってやる!」

そう行き込んだ瞬間

「パン!」合図が鳴った。

太ももに思いっきり力を入れた。

太ももはが俺の気持ちに答えてくれトップスピードで走る。

長距離走は短距離走と異なり他の走者のスタートダッシュがやや遅い。

次第に加速し少し風の音も聞こえる。

スタートダッシュに出遅れたのか坂口は俺の後ろにいた。辺りを見渡すと俺が先頭。周りには誰もいなかった。400mトラック一周走しり終えるところで

急に足がピタッと重くなった。

「お、重い。」

太ももが硬直してきた。


昨日の描写に移る。

昨日は大会前ということもあり、いつものペース走ではなく、1000m走3本だった。この練習はいつものペース走と異なり、主にスピードを出すのが目的だ。いつもは5-6km近く走っているのになんだか物足りなかった。本番前なのに出しきれないもどかしさを感じ、俺は2本追加して追い込んだ。これだけ追い込んだんだから、もしかしたら坂口に勝てるかもしれない。そう思った。

坂口は早々に練習を終わっていた。俺が練習を終え帰る頃、着替えを済ませた坂口とすれ違った。坂口はクスクスと笑っていた。

「大会前なのに追い込みすぎだろ。お前はいつも全力だからもしかしたらと思ってたら、予想通り追い込んでたなお前。追い込みすぎると、明日足が重くなって思ったより走れなくなるだろ。今日は足を十分に冷やした方がいいぞ。」と笑いながら話していた。


レースの描写に戻る。

坂口の予想は的中し、俺の足は鉛のようにずっしりと重く今にも立ち尽くしてしまいそうなほどだった。


ここは持ち前の根性で乗りきるしかないと太ももにさらに力を入れる。太ももはなかなか応えてくれない。どんどんと失速しあっという間に組の真ん中あたりまで順位を落としてしまった。坂口は3-4位を位置している。どうにかしてこの重い足を軽くしたい。次の瞬間

「パンッ」手を叩き気合いを入れる。

周りの選手は驚く。

もう100m進んだところでも

「パンッ」手を叩き同時にジャンプする。

軽くなれ軽くなれ必死に太ももに訴えかける。

太ももは答えてくれない。

一昔前、テレビの写りが悪くなるとテレビを叩いて直す習慣があったらしい。冷静に考えると治らないとわかるのだが、何故か何回も叩いてしまう。

俺も同じように手を叩きジャンプを続ける。前の走者は何故かつられてジャンプをする。

「ウゴケウゴケウゴケウゴケェェエ!!」



「ザァァァァァァァァ。ザァァァァァァァァア。」

ここ最近にないひどい大雨だ。梅雨が後ろにずれ込んだせいか今まで降らなかった雨が一気に降っている。


タイムは5分40秒、坂口は4分50秒ほぼ一分差である。

坂口は常に一定のペースで走り続け、残り一周になると温存していた力を爆発させ、今まで一位だった選手を置き去りに走る度に加速していっていた。

対して俺は走るごとに失速していき、坂口と半周差以上ついていた。そして、重い足を動かすために行っていた手を叩く行為について、佐藤監督から注意を受けた。

いつもの明るい雰囲気ではなく

「あれは本番の大会ではやっちゃいかんぞ。迷惑行為で退場になる可能性が気を付けろ。」と厳重注意を受けた。

さらに李周先輩から

「ふざけるならここでやめろ。迷惑だ。」とまで言われてしまった。


悔しくてたまらなかった。あんなに練習したのに。ただふざけてたと思われてたなんて。悲しくて仕方がなかった。努力が空回りしてこんな災難が起きてしまうなんて夢にも思わなかった。せっかく1ヶ月全力で頑張ったのに結果は散々だった。


長野のタイムは5分55秒。一応俺の方が勝っていた。しかし、目標はとっくの前に長野ではなく坂口に変わっていた。長野は、俺にまた嫌味を言ってくるのかと思ったが、何か吹っ切れたのか記録会が終わり誰とも話さず早々に帰っていった。それ以来陸上部で長野の姿は見なかった。


記録会から二週間が過ぎた。いよいよ本入部が始まった。今日の天気は6月には珍しい猛暑であった。気温は33℃。最近の異常気象からなのか、この時期なのに暑くて仕方がない。


佐藤監督からお知らせがあった。

「日野と申します。仮入部ではサッカー部でした。訳あって本入部から陸上にお世話になります。年齢関係なくまずはこの部活で一番目指します。先輩たちの技術いっぱい盗もうと思います。よろしくお願いします。」


坂口とは間反対なビッグマウスの熱い同級生が入部してきた。



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