74 緩い条件
穴だらけのマークに向かってキョーコがヒールをかけていた。なぜ?
「おい痴漢、これでわかったか?お前の仲間はお前のせいで全滅だぞ?」
「……ああ。すまなかった。俺とパーティーメンバーが迷惑をかけた。衛兵から聞いたよ。あんたらに逆らっちゃダメだった。あとこれはけじめだ」
マークが持っていた剣で自分の右手を切断した。
「スタァァァァァップ!!誰が掃除すると思ってるんですか!!自分で拭きなさい!!」
受付のコムギさんがバケツを持って立っていた。ぷりぷり怒ってる。訓練所の掃除が終わったのかな。帰ってきたら掃除が目の前で追加されたら怒るよ。片腕で雑巾掛けさせられてた。ギルドマスターが初級ポーションを売って止血のみしていた。
「マークの事を許してやれとは言わないが、この腕に免じて大目に見てやってくれ?次なにかやったらその場で殺しても構わんから」
「わかってますよ?そこまで鬼じゃないですから。で、この依頼受けますね?」
ギルドマスターからの言葉に受け答えて、キョーコが依頼票を受付のコムギに渡した。
「はい。受付しました。ではこちらへ」
さっきの訓練所の手前が倉庫だった。倉庫のなかにはかなりの量のケースが並んでいた。
「こちらのケースに長芋を加工したポーションの材料が入っています。マジックバッグまたはアイテムボックスに入るだけお願いします!」
「任されました。では入れていきますね?」
キョーコのマジックバッグの中にガンガン入れていく。このマジックバッグはカモフラージュだから、入れてるように見えて、キョーコのインベントリに入れているんだけども。ここの広さなら私とメアリーのマジックバッグで足りるかも?
「キョーコ、マチルダ、手伝うよ?」
メアリーも来てくれた。
「私も手伝いますね?」
なぜか衛兵のメイビスさんもケースを入れてくれている。徐々に倉庫のケースが少なくなっていく。
「あのー、マチルダさん。さっきメアリーさんにはお話したんですけど…私も連れていってくれませんか?私はまだ膝に矢を受けてないから冒険者やれるんですよ」
メアリー、メイビスの拷問姉妹が誕生するのか。うーん。楽しそうではある。膝に矢を受けてないなら、それはもう冒険者だよ。
「私はいいよ?キョーコは?」
「大丈夫ですよ?あとはジュリアとヒルデさんかな?」
ヒルデさんはたぶん大丈夫だろう。問題はジュリアだ。果たして美乳特選隊が増えることに対してうんというだろうか。サムソンが彼氏になったから、その辺気にしないかな。それともライバル出現と思うのかな。
「ところでメイビスさんはいくつ?」
「兵士は何年くらいしてるの?」
私とメアリーの質問をメイビスさんにぶつけた。私たちもまだ兵士だからね。もしかしたら同期なのかな?
「25です。あの戦の少し前から兵士でした。そういえばマチルダさんとメアリーさんって、あの生き残った英雄でしたよね?私はへなちょこと勇者様の近くにいたんですよ。へなちょこをおんぶするのが嫌だったんで同期の影の薄かったサムソンに変わって貰ったんですよ。そして勇者様を看取りました」
そうか。メイビスさんもあの戦に参戦してたんだ。さらにサムソンの同期か。勇者様の最期を見届けたんだ。そして先輩だった。
「サムソンとはそういう関係だったとか?」
キョーコが内角スレスレの球を放る。際どいボールだ。乱闘になっても仕方ないくらいの内角スレスレ。
「え?同期で戦友ですけど、それ以上ではないですよ。いい奴だけど。いい奴なんですけどね?」
メイビスさんはさっぱりした顔で言い切った。私もそう思う。いい奴だけどね?いい奴なんだけど。
「それなら大丈夫かな?」
そろそろ倉庫のケースがなくなりそう。
「あばばば!?入っちゃうんですね!?入っちゃうんですね!?世界の果てなんて目じゃないです!そのバッグの半分も入りませんよ?恐らく3メートル四方の重量無視だったと思います」
そっか。この貰ったの3メートル四方か。メアリーが持ってるのと同じか。正式にメイビスさんがパーティーに加入したら渡してもいいね。
「じゃあ宿に戻るよ。メイビスさん、ついてきて?パーティーメンバーを紹介するからね?」
「了解です」
ギルド受付のコムギさんに手を振って、ギルドを出た。商店街を歩いているとヒルデさんとジュリアがいた。魔道具見てる。
「あ、良かった、まーちゃん、キョーコ、無事ね?」
「マチルダ、キョーコ大丈夫だった?」
「うん。大丈夫だよ?」
「私も大丈夫です。返り討ちにしましたよ?」
ヒルデさんがギルドの売店を出て少ししたらギルドが騒がしくなったらしい。そして決闘が開催されていて、黒髪の女冒険者とその付き添いの女冒険者が決闘に巻き込まれたと話題になっていたそうだ。しかも相手は6人。
「うふふ?それでこそ我が娘たちです!売られた喧嘩は勝てそうなら買いなさい。負けそうなら逃げなさい!そして後ろから襲いなさい!容赦はいらない!」
ヒルデさんはなかなか凄いことを言っていた。これができる人は生き残れるの。このラインを間違えるときが死なのかな。私はそう思う。
ヒルデさんは目当ての物が買えたそうだ。ジュリアは魔法用の杖を買ったようだ。素敵なステッキね?でもお金はどうしたのかな?
「えへ?へそくり?」
私、メアリー、キョーコの無言のパンチがジュリアに炸裂した。なぜかヒルデさんも混じったな。
「そうだ!このパーティーに新たなメンバーが加わろうとしています!紹介します。衛兵のメイビスさんです!」
私の紹介でメイビスさんが一歩前に出た。メアリーは前にでなくていいよ?ここにいようか。
「メイビスです。パーティーに、仲間に入れてください!」
「よろしくね?メイちゃん。私はヒルデリアン。ヒルデって呼んでね?」
「ジュリアです。よろしくね?うふふ?」
パーティー加入承諾が集まって30秒で決まった。こうなりそうな予感はしていた。




