34.ヒロイン
「わお、これは完全に閉じ込められたな」
倉庫の扉を開けようとするが、外から鍵がかかっているため無理だと悟る。
……あのガチャっていう鍵をかける音が聞こえた瞬間、うわやべって思ったわ。
はぁ、おでん食べたいな~。
<数時間前>
「貴女がユユ様?」
朝、学校について早々知らない女子生徒からいきなり声をかけらえた。
え、誰だ、この子。まぁ、金髪って時点で天使って情報は手に入れられたけど。今まで会ったことある記憶もないし……いや、でもどっかで見たことあるような気もする。
「えっと、誰?」
「わたくしの名前はビアンカ・モーリーですわ」
ビアンカ・モーリー…………あ!! 悪役令嬢じゃん!
ついに会えたど!! 嬉しみ深みんごでフラミンゴって感じで一緒にフラメンコ躍る? とか言っちゃいそうだ。
金髪に金色のその目! もう輝きすぎだよ、ビアンカ!
「お話がありますの」
「え、何々!? 私も話したいなって思ってた! 元気?」
「……えっと、もっと緊張した空気でお話したのですが」
私の反応にビアンカは戸惑い、露骨に嫌な顔をする。
そんな嫌な顔するなし、ビアンカ。私は貴女と会える日を待っていたのだ。私の攻略対象者達を全て貴方に譲る為にね!
「要件は?」
「貴女、悪魔をたぶらかしてるんでしょ?」
「はい?」
「あのギルト様達と親しいじゃない!」
ビアンカはいきなり声を上げて、キレる。
「ちょ、ちょ、ちと待って。どこが? むしろわし標的にされてるべ?」
「その標的にされたい女子がどれだけいると思っているの!? 調子乗るのもいい加減にしなさいよ!」
「この学校はマゾが多いのかな」
私の言葉に彼女は顔を林檎のように真っ赤にする。相当怒らしてしまったようだ。
私たちの言い合いに、周りもざわざわとし始める。勿論、悪魔はほとんどいない。真面目な天使だけが朝から学校に来ている。
「場所を変えてもよろしいかしら?」
ビアンカは私を睨む。……これでもし拒否ったらどうなるんだろう。ちょっとその展開も見てみたい。
「いいかしら?」
「あ、ういっす」
彼女の圧に負けて思わず返事をしてしまった。
ああ、私って本当圧力に弱い。すぐに頷いてしまう。だから、悪魔にもあんなくっつかれるんだ。
私とビアンカは人気のない裏庭に移動した。
「少し可愛いからって調子に乗らないで下さらない?」
「違う違う」
彼女の言葉に私は手を顔の前で横に振る。ビアンカは不思議そうに私を見つめる。
「何が違うの?」
「少し可愛いんじゃなくて、私顔は超かわいいから」
なんたって私はヒロインだ。この世界で一番といっていいほど美少女だ。
美女なのはイモコだと思うけど、美少女枠だと私だ。……中身は置いておいて。
「は、はい!?」
わお、なんて声量。さっきまでとは大違い。
ビアンカは「こいつ何言ってんだ」と言いたげな表情を浮かべた。




