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ラスボスと空想好きのユア 2 Precious Bonds  作者: ReseraN
第2章 ジュエルを求めて
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第56話「混戦 後半」

 ダーケストが呼び出した人型の魔物・ダーカーをすべて倒すと、今度は倍の数を召喚されてしまい、教会内には四十体ものダーカーがはびこっていた。


「こうなったらダーカーには手を出さずに、直接彼らを攻撃しましょう。これではキリがないわ」


 ネガロンスの助言を受け、アジュシーラはダーケストらを睨みつけた。



 一方、ドーネクトは助手の力と策略に感心していた。


「お前……、なかなかやるな」

「あなたが出来なさ過ぎるのです」

「何ぃ?! 俺だってちゃんとやってるだろう! 今からそれを証明してやる!」


 子供のように怒り出したドーネクトもアジュシーラたちへ向かい合った。

 しかし、相手側から必殺技が放たれていた。



「チーキネス・シュピーレン!!」



 アジュシーラの手からオレンジ色の光が繰り出された。

 すると、光が無数のピコピコハンマーに変わり、ダーケストとドーネクトの頭をポカポカ……いや、ピコピコと叩き始めた。


「いててて! 何だ、このふざけた魔法は?!」

「このダーカーを全滅させると増えるんでしょ? だから、奴らを倒さずに攻撃してんだよ。ちなみにオイラの必殺技は、毎回パターンが変わるんだ~」


 ドーネクトが(実際の戦いに比べると大して痛くないので大袈裟に)痛がると、アジュシーラが自身の技について説明した。


 横でネガロンスが呆れた目で彼を見ていた。

 クルエグムは剣、レジメルスは蹴りを主とした戦法なのに、アジュシーラはピコピコハンマーなので「こんな武器だから子供扱いされるのでは……?」と思っていた。


 そして、このハンマーはユアたちにもダメージを与えていた。

 今のアジュシーラたちの標的は主にダーケストだが、ハンマーは無数に出たので巻き添えになったのだ。


「何で私たちも~?!」


 しかし、やはりダーケストには効いておらず、ピコピコ叩かれても涼しい顔を続けていた。


「やはりガキですね」


 彼が指を鳴らした途端、出ていたハンマーはすべて一斉に消えてしまった。


「このような子供騙しで倒せるとでも?」


 半泣きで悔しがるアジュシーラ。

 横からネガロンスが諫めた。


「もうやめときなさい。あまり反撃すると、もっと子供扱いされるだけよ」



 するとその時、突風が吹き荒れ、主にアジュシーラたちとダーケストたちを襲った。

 吹いた方向へ目をやると、ダークティミーが怒りの表情を浮かべていた。


「いってぇな……。俺を怒らせて、タダで済むと思うなよ!!」


 ピコピコハンマーは彼も叩いていたのだ。

 しばらく両者同士での争いだったので、ダークティミーがいたことをすっかり忘れていた。


「そういや、ユアたちもいたんだ……」

「右腕のこと、忘れてたわ……」


 アジュシーラとドーネクトがそろって思い出した。

 ここで、ユアたちも我に返るのであった。


「えーと……俺らはどっちと戦えばいいんだ?」

「とにかく、この厄介な子分どもを何とかしよう」


 オプダットが困惑する中、フィトラグスが大量のダーカーを倒そうと提案した。

 ユアたちに出来ることはそれしかなかった。

 ヴィへイトル一味と闇魔導士たちは勝手に争っているので、相手に出来るのは激増したダーカーしかいない。

 ダークティミーも助けたいが、それどころではなかった。


「全滅させるとまた増える! なるべく少量を残すようにするんだ!」

「了解!」


 フィトラグスが指示を出すと、ユアとオプダットがそろって返事をした。

 三人はそれぞれの戦法でダーカーと戦い始めた。


 彼らはフィトラグスらにとっても未知の敵だったが、心配の必要はなかった。

 ダーカー自体は強くなく、これと言った戦法もないのでジュエルを手にする前の必殺技でも簡単に倒せた。

 そして、ユアもチアーズ・ワンドを剣のように振っただけでダーカーを倒せた。


「た、倒せた?! すごい! 私でも出来たよ!」


 ゲームをプレイするのでなく実戦で倒せたので、ユアは仲間に貢献出来たと思い、大きな自信をつけるのであった。



 その頃、ダークティミーは戦い合う皆を見て、一人で盛り上がっていた。

 ピコピコハンマーでの怒りはもう忘れたようだ。


「いいね、いいね~! しまいには血祭りかなぁ?」


 その横でサティミダがカウンターバリアで身を守っていた。

 敵が触れただけで自動で反撃してくれるバリアだが、あまりに数が多いとバリア自体が弱って来る。


「ひぃー! やめて、壊さないで、こっちに来ないで~!」


 相変わらず情けない声を出していると、サティミダの周りに群がっていたダーカーたちが爆発と共に消え飛んだ。

 ダーカーのいたところを見ると、教会の机に胡座をかくダークティミーが見えた。そっぽを向いていたが、こちらへ手の平を向けていた。魔法を使ったようだ。


「ティミレッジ……?」

「うるさいから消しただけだ」


 ダークティミーは冷静に言った。

 先ほどの説教が響いたかはわからないが、サティミダは助けられたと思った。

 そして、闇堕ちしてもティミレッジの中に優しさが残っていることを確信したのであった。


 ところが、今の攻撃でダーカーは全滅してしまった。


「倒しましたね。では……」


 アジュシーラとドーネクトが戦い合う中、全滅を感じ取ったダーケストが再び魔法を使った。

 すると、教会内に今度は一〇〇体ものダーカーが現れた。


「多すぎない?! 倍以上はいるじゃない!」


 真っ先にユアが声を上げた。

 現れたダーカーは床だけでなく、長椅子やパイプオルガンの上、像のあった場所など立てるところに立ち、教会内はすっかり埋め尽くされてしまった。


「あなた方の邪魔が入った分、さらに増やさせていただきました」


 ダーケストは無感情に言った。

 この激増によってアジュシーラもドーネクトも戦いにくくなり、先にダーカーの始末を余儀なくされた。さらに……。


「シーラ君、まだ戦いたいなら好きな時間に帰って来て。フィトラグス一行以外と戦ってムダな時間と体力を削るのは、ヴィへイトル様から禁止されてるから」


 ネガロンスはそう言い残し、その場から消えてしまった。


「ちょ?! 最後まで付き添うんじゃなかったの……?」


 気を取られている間にドーネクトが黒い魔法弾を撃って来た。すぐに気付いたアジュシーラが青紫色の魔法弾で応戦する。

 それをダーケストは表情を変えずに見ていた。


 ユアたちはダーカーと戦い続ける。

 サティミダは怯えながら新しいカウンターバリアを張って、自然にダーカーが倒されるのを待つ。

 ダークティミーはいつの間にか宙に浮き、いわゆるカオスと化した戦いをやはり楽しそうに見つめていた。


 教会内は混乱と混沌で満ち溢れるのであった。



「シャッテン・グリーフ!!」


 聞き覚えのある声と掛け声と共に、黒と紫色の衝撃波がアジュシーラ、ドーネクト、そしてダーカーたちを襲った。

 アジュシーラたちは戦いを中断し、ダーカーたちの半数は消滅してしまった。


「この声と必殺技……もしかして?!」


 アジュシーラらが開けた屋根の大穴から、ディンフルが教会内に降り立つのであった。

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