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ラスボスと空想好きのユア 2 Precious Bonds  作者: レセラン
第2章 ジュエルを求めて

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第55話「混戦 前半」

 教会の天井からアジュシーラとネガロンス、破壊された壁から闇魔導士のドーネクトとその助手・ダーケストという二組の敵が現れた。


「ま、まさかの同時……?」


「どっちから相手すりゃいいんだよ?!」


「そうでなくても、ティミーが闇堕ちしてんのに……」


 ユア、オプダット、フィトラグスは頭がこんがらがっていた。

 これまでクルエグム、レジメルスと戦ってきたが、両者とも強かった。

 今回は最年少のアジュシーラだが、魔力の強さは彼らが共通して使う魔法弾で把握できていた。


 その上、今日はネガロンスもいる。

 彼女はネクロマンサーで、アンデッドを操る力を持っている。そのため、浄化技を使えるティミレッジでなければ相手にならなかった。

 だが今は、唯一浄化技を使えるティミレッジが闇堕ちして、誰の言うことも聞かない状態だった。


 もう片方の敵は、闇魔導士のドーネクト一味。

 まだ直接戦ったことはないが、二十年前、幼いティミレッジの体に闇の魔法陣を埋め込んだ。

 ティミレッジが成人した今、その力を解放し、普段穏やかな彼を凶暴にさせてしまった。


 それだけでも、ユアたちはドーネクトの力を恐れていた。

 その結果生まれたダークティミーが彼の言うことを聞かないのが、唯一の救いであった。


 このことから二組が一斉に襲ってくると、ユアたちが勝てる保証はなかった。

 戦力として頼れるアビクリスもいるが、ダークティミーの言葉にショックを受け、勝気な態度が消えていた。

 これが、戦いにも影響するかもしれない。


 途方に暮れていると、ドーネクト側から口を開いた。


「何だ、このガキとおばさんは?」


「ガ、ガキィ!?」


「おばさんですって……?」


 ドーネクトがいきなり無礼な言い方をすると、アジュシーラとネガロンスは明らかに不機嫌を示した。


「おじさんこそ何だよ?! ハゲを隠すようにローブのフード被っちゃってさ!」


「おじさん?! 俺はハゲてないぞ! フードを被ってるのは、単なるおしゃれだ!」


「フードを被るのがおしゃれですって? 本当におしゃれを楽しみたかったら、頭や顔を隠さずにありのままの姿で勝負をするべきだと思うけど?」


「やり方は人それぞれだろう!!」


 負けじと言い返したアジュシーラたちへ、ドーネクトが噛みついた。

 これを見てユアたちは驚きながらも、少し安心した。


「言い合ってるね?」


「どう見てもな。共闘して襲って来ることはなさそうだ」


 ユアが確認すると、フィトラグスが推測した。

 彼の言うとおり、二組とも協力する様子は微塵もない。


 やがて論争から実戦へ発展し、アジュシーラが青紫色の魔法弾を闇魔導士たちへ撃ち出した。

 ドーネクトもバリアを張って魔法弾を打ち消すと、腕を組んで見ているだけの助手・ダーケストへ怒りをぶつけた。


「ダーケスト!! 何をボサッとしているのだ?! こういう時は、助手のお前が前線に立ってバリアを張るべきじゃないのか?! 何で観戦しているのだ?!」


「私も参加するのですか……? 元はと言えば、相手方を怒らせたドーネクト様が悪いのですよね? 開口一番で“ガキ”、“おばさん”など暴言を吐くから」


 ダーケストはため息をつきながら対応した。

 ドーネクトは助手の生意気な言い方に歯を食いしばるが、ユア一行とアジュシーラたちは心からダーケストに賛同するのであった。


「お兄さん、いいこと言うじゃん! そうだよ! オイラたちを怒らせたおっさんが悪い! オイラはガキじゃないっつーの!」


「“おっさん”やめろ!!」


「あなたより助手さんの方が、一枚……いえ、二枚か三枚ほど上手(うわて)ね」


「やかましい!!」


 再びアジュシーラとネガロンスがドーネクトと言い合うと、ダーケストが静かに口を開いた。


「お言葉ですが、天然パーマの坊や。“オイラはガキじゃない”と申しておりますが、本当にガキじゃないと証明したければ、まずは何を言われても怒らない姿勢を示した方がよろしいのでは? 言われたことに、いちいち反応して怒るからガキ扱いされるのですよ。あと、一人称の“オイラ”もやめた方が良いと思われます。ガキの中のガキにしか見えません」


 ダーケストがアジュシーラを指摘すると、今度はネガロンスへ向いた。


「それから、真っ黒なお姉さん。今、この私を“二枚か三枚ほど上手(うわて)”と褒めて下さいましたね。ですが、先ほどからの反応を見て、あなたはドーネクト様よりは上ですが、この私よりは下に感じました。そちらの坊やとどういう関係かはわかりかねますが、もしも保護者として付き添っているのであれば、坊やと一緒になって言わない方が良かったのでは? 本当の保護者なら、子供をたしなめたりするものですが、それが見受けられませんでした。つまり、坊(・)や(・)と(・)同(・)じ(・)レ(・)ベ(・)ル(・)の存在と見受けられました」


 ダーケストの棘しか感じられない言い方に、他の者たちは戦慄した。

 彼を褒めたはずのアジュシーラとネガロンスだが、逆に非難されてしまった。

 二人からは、明らかに怒りのオーラなるものが漂い始めた。


「これ、もしかしてヤバいんじゃね……?」


「もしかしなくてもヤバい」


 怯えるオプダットに、フィトラグスは淡々と答えた。

 とっくにあきらめたような口調だった。


「もう許さない~!!」


「我々を怒らせた代償は大きいわよ」


 アジュシーラは怒りをむき出しにし、ネガロンスは落ち着いた口調で言った。怒っていないように見えるが、彼女はすでに手の上にいくつもの魔法弾を出していた。


 敵である両者が共闘しないのはユアたちにとって助かるが、どちらかが暴れれば教会が壊される危険があった。


「面白い。相手になってやろう! ダーケスト!!」


「言われなくてもやります。今、怒らせたのはこの私なので。でも、最初に怒らせたドーネクト様にも、きっちり責任を取っていただきます」


 やはり助手の生意気な物言いに、舌打ちするドーネクト。

 ダーケストが魔法で黒色のモヤを出すと、それを浴びた床から十体もの人型の物体が現れた。


「な、何?!」


 ユアたち一行は、後ずさりをした。

 その人型は、頭からつま先までダークグレーの全身タイツを着たような見た目をしており、顔部分にはドーネクトがティミレッジの体に埋め込んだ闇の魔法陣の模様が描かれていた。


「私の部下・ダーカーたちです。どうぞ、可愛がってあげて下さい」


 ダーケストが指を鳴らすと、召喚された者たちは「ダーカー、ダーカー」と口々に言いながら、アジュシーラとネガロンスへ襲いかかって行った。

 二人共、宙に浮いていたがダーカーたちは天井に届くほどのジャンプ力で跳び上がってみせた。


「な、何だよ、こいつら~?!」


「片づけるわよ」


 ネガロンスは出していた魔法弾を、すべてダーカーたちへぶつけた。

 ダーカー自体は強くないのか、あっという間に全員、消えてしまった。


「よっわ! 大したことないじゃん!」


 アジュシーラが笑うと、ダーケストは再び黒いモヤを出してダーカーを召喚した。

 今度は、先ほどの倍の二十体になっていた。


「ダーカー召喚は魔力をあまり消費しないので、いくらでも戦わせられます。一度消されるごとに倍の数を召喚してあげましょう」


 ダーケストはまったくの無表情のままだった。


「ふざけるなぁ!」


 怒ったアジュシーラが数発の魔法弾をダーカーではなく、ダーケスト本人に撃ち出した。


 しかし、いつの間にかダーカーたちがバリアのようにダーケストの周囲を覆っていたため、すべて彼らが被弾してしまった。

 これで二回目に召喚された二十体も倒され、ダーケストはすぐに四十体のダーカーを呼び出した。

 さすがに教会内が狭くなってきた。


「言いましたよね? 消されるごとに倍の数を召喚すると」


 悔しさに顔を歪めるアジュシーラ。

 ダーカーを倒すのはたやすいが、それを呼び出すダーケストが表情一つ変えないことが不満だった。


 いつの間にか助手・ダーケストが戦場の主導権を握っていた。

 ドーネクトは、目の前の光景に絶句するしかなかった。


 ユアたちもすっかり蚊帳の外で、手も出せずに当惑するのであった。

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