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ラスボスと空想好きのユア 2 Precious Bonds  作者: レセラン
第2章 ジュエルを求めて

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第51話「闇魔導士」

 一行は急遽、大量の邪龍退治に参加した。

 ユアは今週から戦い始めたばかりなので、邪龍戦は初めてである。

 フィトラグス、オプダット、ソールネムがメインで戦い、ティミレッジがバリアでユアを守りつつも彼女をサポートした。


 一方、泣く泣く参加したサティミダは「来ないでくれ~!」と泣き叫びながらバリアで身を守っていた。

 カウンター式(敵に攻撃されると、自動で攻撃を返してくれる)なので、突撃した邪龍は一瞬で消えてしまう。戦わずして退治しているという状態だった。


 ディンフルがいれば「何故参加した……?」と呆れ、アビクリスがいれば「このヘタレ野郎!!」と怒鳴り散らしていただろう。

 一応、退治には貢献できているので、ティミレッジたちは文句をつけられなかった。


◇


 夕暮れ。ようやく邪龍は一匹残らずいなくなった。

 ユアたちは、もうヘトヘトだった。


「あぁ……終わったぁ~」


 ユアは邪龍を一人で仕留めることは、まだできなかった。

 それでも今日だけでだいぶ戦い、戦い始めてから一日の討伐数としては最多だった。

 レベル上げにも期待が高まる。


「さあ、早く宿に行こうぜ」


「腹へった~」


 フィトラグスとオプダットもダメージはほとんどなかったが、疲れきっていた。


「みんな、急な任務に付き合ってくれてありがとう。さっき村長から通信があって、ジュエルの件、邪龍退治のお礼で持って行ってもいいそうよ。“像を壊したくないから、一部をくり抜いて取り出す形になるので、少し時間をくれ”って」


「ジュエルがもらえるなら全然いいよ!」


 知らせたソールネムへ、ユアが嬉しそうに返事をした。


 像をくり抜くには業者の力が必要なので、明日の昼頃まで待たなければいけなかった。

 だが、今日みたいに急に邪龍や魔物が襲って来るかもしれないので、村を守るためにもユアたちは待つことに決めた。



「ティミレッジ~!」


 アビクリスが、息子の名を呼びながらやって来た。


「ママ! 他の地域に行ってたんじゃないの?」


「ビラーレルに邪龍が出たっていうから、戻って来たんだよ。ママも何匹かやっつけたよ。あんたたちは? ケガはない?」


「大丈夫です」


 ソールネムが返事をすると、「超龍と戦ったから、邪龍なんか朝飯前か!」と、アビクリスは笑いながら言った。


「それより、パパは?」


 ティミレッジが尋ねた。

 サティミダも参戦していたが、途中から姿が見えなくなっていた。


「あのヘタレも戦ったのかい? いなくなったってことは、逃げ出したんじゃないか? ほっときな」


「相変わらずパパに冷たいな……。僕、探してくる。みんな、先に行ってて」


 ティミレッジは、アビクリスに反抗するようにサティミダを探しに走り始めた。

 背後から「あんな奴、ほっときなってー!」と、母の声が響く。


◇


「ふぅ、やっと終わった……。さて、戻るか」


 村のとある場所。

 アビクリスの思惑どおり、サティミダは途中から抜け出し、邪龍から隠れていた。


「最後まで戦うなんて無理だよ。武闘家とかと違って、魔導士は魔力が尽きたら、おしまいなんだから……。魔力回復のアイテムもあるけど、けっこう高いんだぞ」


 彼は金銭節約のために、回復のアイテムを出し惜しんでいた。

 アビクリスにバレると抹殺される案件だった。



「久しぶりだな」


 サティミダが皆の元へ行こうとすると、低い男性の声が響いた。

 それは、息子やその一行の声ではなかった。


 ガタガタと震えながら振り返ると、真っ黒なフードをかぶったローブの男性と、その隣にはグレーのローブを着た黒髪の男性が立っていた。


「うわあ~!!」


 あまりにも暗すぎる見た目だったので、サティミダは叫びながら尻もちをついてしまった。


「相変わらずだな、お前……」


 思わず、黒ローブの男も呆れ返った。


「き、君は……ドーネクト……?!」


 相手の名前を叫ぶサティミダの声が震えていた。


「そうだ。同級生のドーネクトだ。会うのは二十年ぶりぐらいか、サティミダ?」


「な、何で生きているんだ……? 君は、アビクリスが倒したはずじゃ……?」


「アビクリス……久しぶりに聞く名前だが、本当に忌まわしい……!」


 黒ローブことドーネクトは、わずかに怒りを交えて言った。

 彼は二十年前、若かりしアビクリスに退けられた闇魔導士。彼女が英雄と讃えられるきっかけともなった人物だった。


「アビクリスにやられた後は、遠くの地に避難していた。そこで、こいつと出会った」


 ドーネクトは、隣にいるグレー色のローブの男を指した。

 その者はフードをかぶっておらず、黒い髪を肩まで伸ばしていた。


「サティミダさんですね。お初にお目にかかります。私はダーケスト。ドーネクト様の助手をさせていただいております」


 相手は丁寧な口調で自己紹介をした。


「ドーネクトの……助手?!」


「こいつは本当によくやってくれる。おかげで、アビクリスに一泡吹かせる自信も持てたのだ」


 ドーネクトは怪しく笑ってみせた。


「ア、アビクリスに、一泡だと……?」


 サティミダは相手の言葉に衝撃を受けつつも、自分の元妻が脅かされることに恐怖を抱いた。


「今のを聞いてどう思った? 俺に怒りを感じたか? それとも俺に敵わないから、代わりにお前が一泡吹かされたいと思ったか?」


「そ、それは……。あっ! でも、アビクリスがやられるのも、イヤだっ!」


 一瞬、自身への攻撃を怖れたが、すぐに正気に戻った。

 やはり元パートナーとは言え、大切な人が傷つくのは一番耐えがたかった。


「安心しろ。今回、アビクリスに用はない」


「へ?」


「お前の息子、もう成人していたよな?」


 ティミレッジについて聞かれ、サティミダは息をのんだ。


「ティ、ティミレッジに何の用だ……?」



「パパ!!」


 サティミダが聞いたところで、聞き覚えのある声がした。

 ティミレッジ本人が、両者の元にやって来たのだ。


「おぉ? いいタイミングだな」


 ドーネクトはティミレッジを見て、さらに笑った。


「あ、あなたは……二十年前に村を襲った闇魔導士?!」


 勉強家のティミレッジは、村の歴史について網羅しており、村を脅かしたドーネクトについても報道紙の写真ですでに知っていた。


「俺を知っているとは、話が早い!」


「ティミレッジ、逃げろ!!」


 サティミダが叫ぶと、ドーネクトの助手・ダーケストが先手を打って魔法を使った。

 すると、ティミレッジの足元から黒い触手が四本現れ、彼の両腕と両足に巻きついた。


「な、何これ?!」


「息子に何をするんだ?!」


 サティミダが怯えながら叫んだ。


「そろそろ見頃だと思ってな」


 ドーネクトは笑いながら、触手に縛られているティミレッジへ近づいて行った。

 サティミダも行こうとするが、ダーケストが新たに出した触手が足に巻きつき、動けなくなってしまった。


「君は覚えていないかもしれないな。とても小さかったから」


 ドーネクトはティミレッジの真ん前まで来ると、相手のローブの前を無理やり開け、インナーを引きちぎった。


「何するんだ?!」


 ティミレッジが困惑して叫ぶ。


「も、もしや……? ダメだ!!」


 何かを思い出したサティミダは、触手から逃れようと必死にもがいた。

 それには見向きもせずにドーネクトは、あらわになったティミレッジの体を見つめ続けた。


「……うむ。俺には見えるぞ! 二十年前に埋めた闇の魔法陣が!」


「闇の魔法陣……?」


 ティミレッジは戦慄しながら復唱した。

 彼の胸には何もない。だがドーネクトいわく、そこには何かがあるらしい。


「そして、成人した君の魔力も順調に育っている。それと魔法陣の力を合わせて、俺の右腕になってもらうぞ!」


「右腕? 君には助手がいるじゃないか!」


「私は左腕です。だから、右腕が必要なのです」


 後ろからサティミダが疑問を投げかけると、ダーケストが冷たい口調で解説した。


 ドーネクトはティミレッジの理解を待たず、彼の胸元に手を当てた。

 すると、黒い線で描かれた歪な形の魔法陣が姿を現した。


「な、何これ……?」


 初めて見る物体に、ティミレッジの顔が青ざめた。


「やはり、覚えていないか。俺がアビクリス……君の母親に倒される前に埋め込んだ闇の魔法陣だ。普段は肉眼で確認できないが、君の成長と共に魔法陣の力も育っていく。そして成人した時、俺の右腕になってもらうために埋めたのだ」


 ドーネクトの説明に、ティミレッジは絶句した。

 これまで、自身の体に謎の魔法陣が埋め込まれている等つゆ知らず、両親からもそんな話を聞いたことがなかった。


「アビクリスは知らんだろう。知っているのはサティミダのみだ。何故なら、君に魔法陣を埋め込む際、近くで見ていたからな」


 ティミレッジは息をのんで、父を見た。


 しかし、すぐ冷静になった。

 何故なら、サティミダが心身共に弱かったのは昔からなので、彼では息子を助けられないことを理解していたからだ。


「自分の子供すら守れないなんて、親失格だなぁ?」


 ドーネクトは言いながら、ティミレッジの胸元に浮かび上がった魔法陣に手を掛けた。

 すると、魔法陣から青黒い光が現れ、彼の体を包み始めた。


「うわあああーーー!」


 ティミレッジの悲鳴が響き渡った。

 ドーネクトは楽しそうに笑い、サティミダは恐怖に震え、ダーケストは腕を組んで無表情で見つめていた。



「ティミー!!」


 そこへ、心配したユアたちが駆けつけて来た。


「ん? お前たちは、魔王ディンフルや超龍と戦った一行……?」


「あなたは、村を脅かした闇魔導士?!」


 ドーネクトとソールネムが互いに確認し合った。

 ユアたちは、青黒い光に包まれたティミレッジの異変に気がついた。


「ティミーに何をした?!」


 フィトラグスに問い詰められると、ドーネクトは再び笑いながら説明し始めた。


「二十年前、小さかった彼に闇の魔法陣を埋め込んだのだ。成人してから、俺の右腕になってもらうためにな!」


 青黒い光がなくなると、ティミレッジの姿が変わっていた。

 白かったローブは真っ黒の上下になり、その上から紺色のマントを羽織っていた。


 そして、開かれた目からは一切の輝きがなくなっているのであった。

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― 新着の感想 ―
触手プレイからの服ビリビリで まさかティミーが本当は女の子でした的なえっちな展開が!? などと思ってしまった汚れた心を懺悔します
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