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ラスボスと空想好きのユア 2 Precious Bonds  作者: ReseraN
第2章 ジュエルを求めて
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第44話「武闘家の友達」

 祠の前でクロウズに敗れた上、走って逃げ出したオプダット。

 彼を追ってユアたちも下山し、ジュエル探しは中断になった。



 一行は彼の家で休憩を取った。

 オプダットの両親・ボレンフドとポタルチアがお茶と菓子を出して、ユアたちを歓迎してくれた。


「さあ、どんどん食え! チャロナグの菓子は美味すぎて、アゴが落ちるぞ~!」

「それを言うなら、ほっぺたですよね……?」


 陽気に菓子を運びながら言い間違えるボレンフドへ、ティミレッジがつっこんだ。

 パーティ内でオプダットのつっこみ役である彼は、ここでも訂正する羽目になった。


「それより、オプダットはどこ行ったの? 一緒に来たのよね?」


 お茶を持って来ながらポタルチアが尋ねた。

 部屋にいるのは両親とユア、フィトラグス、ティミレッジ、チェリテットだけだった。


「オープンなら、“ちょっと出て来る”って外に行きましたよ」


 チェリテットが答えた。

 彼女にだけ伝えたらしく、ユアたちも今初めて知った。


「クロウズさんにやられたこと、そんなにショックだったのかな?」

「その前からおかしかったろ」


 ティミレッジとフィトラグスが裏山での出来事を振り返った。


「オープンとクロウズさんって、何かあったんですか?」


 ユアは思い切って両親たちに聞いてみた。

 そして「あと、パールって誰ですか?」と聞いた途端、二人の顔が明らかに引きつった。



「ごめんくださ~い」


 玄関から声がした。

 ポタルチアがドアを開けると、アティントスが立っていた。


「突然すいません。オプダットのことが気になって来ました。さっき彼を見かけたのですが、思いつめた顔でどこかへ走って行ってたので……」

「わざわざありがとうございます。先生、仕事の方は大丈夫なんですか?」

「今日は患者が少ないので。何かあればこちらに連絡が来るようにしています」


 そう言って彼はフィーヴェ共通の通信機を見せてくれた。



 急遽アティントスが加わると、ボレンフドがユアたちへ尋ねた。


「オプダットからどこまで聞いているんだ?」

「小さい頃に病気をして、しばらく入院してたってことです。あと、アティントス先生に病気を治してもらってから、明るくいることと友達を大切にすることを教えてもらったってとこです」


「オープン、病気で入院してたの?!」

「聞いてないの、チェリーちゃん?!」


 ユアが答えると、チェリテットが声を上げて驚いた。

 ティミレッジも驚愕した。同じ町で暮らす彼女なら、もう知っていると思ったからだ。


 チェリテットに話さなかったのは毎日が忙しすぎて単に忘れていた、もしくは話したくなかったのかもしれない。

 オプダットが水界(すいかい)で打ち明けた時はアティントス手製の薬を見て過去を思い出し、話さざるを得なかったのだろう。


「じゃあ、クロウズ君とパール君のことは聞いてないのね?」


 ポタルチアにフィトラグスが「はい」と返事をすると、ボレンフドたちはオプダットの過去を詳しく話してくれた。



「パールはオプダットが入院してた病院の患者で、あいつと同室の同級生だったんだ。その時、オプダットは人見知りが激しくてな……」


 ボレンフドがそこまで言うと、ユアたちが遮るように驚きの声を上げた。


「人見知り? あのオープンが?!」

「ビックリするでしょう? 今でこそお父さんみたいに明るくなってるけど、子供の時はそうでもなかったのよ」


 あっけに取られる一同をからかうように、ポタルチアがいたずらに笑いながら言った。


「それで、パールの方が今のオプダットみたいに明るかったんだ。初めはオプダットもだいぶ緊張してたが、だんだんパールを兄貴のように慕うようになったんだ」

「クロウズ君はパール君の友達で、あの子に会うために毎日お見舞いに来ていたのよ。それで、ずっと会って行くうちにオプダットとも仲良くしてくれるようになったのよ」

「クロウズさん、友達思いなところもあったんですね」


 チェリテットは改めてクロウズの良さを感じた。今だけ「俺の彼女にする」と言われたことは目をつむっている。


「たぶん、パールしか友達がいなかったと思うぞ……」


 ボレンフドが苦笑いをし、隣でポタルチアも呆れるように言った。


「あの子、昔から嫉妬深い性格なのよ。別の子が持っているおもちゃをすぐ“欲しい”ってダダをこねたり、他の子が何かで褒められると、その子を叩いて泣かせたりしてたのよ。それで友達も出来にくかったんじゃないかしら」

「パールだけはあいつが嫉妬深かろうか仲良くしてくれたんだ。本当に良い子だったぜ!」


 パールは今のオプダットみたいに、分け隔てなく接してくれる少年だったようだ。

 さらに二人は、彼は勉強が出来たことも話してくれた。体は弱かったが、性格は明るくて友達想いだったので、オプダットが間違えて覚えた勉強を見てあげる時もあった。


「おかげで“もう父ちゃんからは教わりたくない!”って怒られちまったよ!」

「笑いごとじゃない!! あんたが間違えて教えたせいで、私やチェリーちゃんやティミー君がどれだけ苦労してると思ってるの?!」


 笑い飛ばすボレンフドに対して、ポタルチアはこれでもかと言うほどに怒りをぶつけた。

 確かに、オプダットの言い間違いには名前が出た三人が主に直してくれているが、この春からは魔王も加わっていた。


「そのパールさんがきっかけでクロウズさんとも友達になれたんですよね? 何で嫌われるようになったんですか?」


 ユアが尋ねたことでクロウズの話題へ戻った。


「最初のきっかけは、木登りかな?」


 ポタルチアが思いしたように言うと、「木登り?!」と、ユアたちがそろって驚きの声を上げた。


「オープン、入院してたんですよね? 木に登る元気があったんですか? そもそも、許されてたんですか……?」

「許されてねぇ。全部、おじさんのせいだ」


 ティミレッジが疑問をぶつけていくと、ボレンフドが渋い表情をしながら言った。

 何故なら、オプダットが木登りをするきっかけを作ったのは彼だったのだ。ボレンフドは息子の見舞いに来ている時でも鍛錬を欠かさず、我慢できずに中庭にある木にも登ったことがあった。

 それを見たオプダットは「俺もあれぐらい登れたら……」と、思い切って登り始めた。


「あの日こそ生きた心地がしなかったわ……。病院から通信が入って“オプダット君が木から落ちました”って聞かされて。あの子が木に登ったってだけでもビックリだったのに、その原因を作ったのがこの人だったなんてね!」


 初めは悲しく言い始めたポタルチアだが語尾に行くにつれて言い方に怒りが入り、言い終えた頃にはボレンフドを睨みつけていた。


「だって、真似するなんて思わなかったんだよ!」

「子供は大人がすることを真似するものなの!」


「そもそも、病院で鍛錬するなよ……」と思うユアたちであった。


「でも、それとクロウズとどういう関係が?」今度はフィトラグスが尋ねた。

「オプダットが木から落ちた時、パール君が心配して付きっきりでいてくれたのよ。それで、前からクロウズ君としていた約束を忘れてしまってね……」


 クロウズは待ち合わせの場所でパールを待ち続けていたらしい。

 彼がなかなか来なかったため、後に会った際に「急変したかと思ったじゃないか!」と心配したクロウズが怒鳴りつけた。

 だが、来れなかった原因がオプダットにあるとわかってから、彼への態度が少しずつ変わって行ったようだ。


「私はそう感じたわ。木登り事件以来、クロウズ君が明らかにオプダットを避けるようになったのよ。親としては悲しいけど、あの子の性格を考えたら無理もないなって思う……」


 ポタルチアはそう推測した。

 これを機にオプダットとクロウズの間に少しずつ溝が出来てきたのであった。

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