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ラスボスと空想好きのユア 2 Precious Bonds  作者: レセラン
第2章 ジュエルを求めて

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第43話「祠の前で」

 チアーズ・ワンドの光を頼りに、ユアたちはチャロナグタウンの裏山の頂にある祠(ほこら)を目指していた。

 裏山は武闘家の修行場と言われるだけあり、ところどころが急斜面で、慣れていないユア、フィトラグス、ティミレッジはすでに息が切れていた。

 特にティミレッジは、ダウン寸前だった。


「ティミー君、大丈夫? おぶって行こうか?」


「ら、らいじょーぶ……。チェリーちゃんじゃ、僕の体重を支えられないよ……」


 その時、ユアが持っていたチアーズ・ワンドが別の光り方をすると、ティミレッジの前にピンク色の四角いプレートのような物体を出した。


 ティミレッジがそのプレートに腰かけると、それは宙に浮き、皆と同じ速度で彼を運んで行った。

 ユアのレベルが上がったからか、また新しい力を使えるようになったのだ。

 これには出した本人も驚いていた。


「こんな乗り物まで出るんだ?!」


「ありがとう、ユアちゃん。おかげで助かったよ!」


 喜ぶティミレッジへ、フィトラグスが「楽に登れていいな」と言わんばかりにうらやみの目を向けた。

 気づいたユアが試しにチアーズ・ワンドを振ると、ティミレッジを乗せたものと同じものが四つ出てきた。

 全員、ユアが出したピンク色のプレートに乗って、裏山を登って行った。


「こりゃ、楽ちんだ~!」


「修行中に乗ってたら怒られるけど、今はいいよね♪」


「いいけど、ディン様が見たら怒りそう……」


 移動が楽になり、疲れが少しずつ取れていくフィトラグスとチェリテット。

 一方で、ユアはディンフルがいる時を考えた。彼は根が真面目なので、楽でもこのプレートには乗らないと思ったのだ。

 そもそも、ディンフルには飛行能力があったので、自分で飛んで行くだろう。


◇


 頂上付近に着くと、四角いプレートは自然に消えた。

 祠がこの近くなので、「あとは歩いて行け」ということだろう。


 チェリテットとオプダットを先頭にユアたちが歩いて行くと、クロウズ、サークズ、ムジーロの三人とばったり会った。

 彼らの後ろには、いかにも神様を祀(まつ)っていると思われる祠が見えた。


「クロウズ?!」


「オプダット?! 何でここにいるんだよ?!」


 オプダットもクロウズたちも、お互いに驚愕した。


「俺らは祠を見張ってるんだ。お前らみたいな不審者が近づかないようにな!」


 チャロナグタウンでは裏山での修練を兼ねて、交代で祠を見張る習慣があった。

 彼ら三人は外から戻ったばかりだが、久しぶりに裏山を登りたいために自ら申し出たようだ。


「俺たちはジュエルを探しに来た。この祠にあるんだろう?」


 フィトラグスがそう言うと、クロウズたちは息をのみ、三人で顔を見合わせた。


「ジュエルって、祠に飾られてる石か? 何の用があるんだよ?」


「理由は言えませんが、それが必要なんです」


「だから、何でだよ?!」


 ティミレッジがおずおずとしながら言うと、クロウズが怒鳴りつけた。


「世界を救うためだよ!」


 オプダットが大声で叫んだ。

 最初にクロウズと会った時と違って真剣で、勇気を振り絞るような言い方だった。


「世界を救う」と聞き、クロウズは後ろのサークズとムジーロと一緒になって笑い始めた。


「超龍に勝ったからって、まだ英雄気取りかよ?! そんな子供じみた理由で渡せるわけねぇだろ!」


「頼む! 本当に世界の運命がかかってるんだ! 今度は、魔王の兄貴が世界を滅ぼすかもしれないんだ! だから、渡してほしい!」


 オプダットは真面目なトーンで、クロウズへ頼み続けた。


「じゃあ、俺と勝負しろ」


 笑いから一転してクロウズが冷静に提案すると、オプダットは息をのんだ。


「どうしても、お前が世界を救った英雄だって思えねぇんだ。お前は超龍との戦いに参加はしたが、大した活躍は王子様や魔王がしたんだろ? 人任せは英雄とは言えねぇ。だから、真の英雄はどっちか決めようと思う!」


 確かにトドメを刺したのはフィトラグスとディンフルだった。

 しかし、オプダットも超龍の弱点を覆う鱗を壊すなど、戦いに大きく貢献していた。

 だが、その事実をクロウズは知らない。


「俺が負けたら、祠に入ってジュエルを持って行けばいい。お前が負けたら、ジュエルはあきらめな。そして……」


 そこまで言うと、クロウズはチェリテットに目を向けた。


「そいつを、俺の彼女にする」


「えぇっ?!」


 いきなり指名され、チェリテット本人は思わず大声を上げた。

 これにはユアたちも、口をあんぐりとさせた。


「な、何でチェリーが?」


「町の人の話だとお前ら、いつも一緒にいるらしいな?」


「一緒にいるって言っても……」と、チェリテットは何か反論しようとしたが動転して頭が回らず、うまく言葉が出なかった。



 サークズとムジーロが端へ避けた。

 早速、勝負を始めるようだ。

 ユアたちも空気を読み、同じように引き下がった。


 取り残されたオプダットはクロウズと向かい合うが、戦う時のファイティングポーズは取らなかった。

 勝負を拒否しているようだ。


「俺、お前とは戦いたくねぇよ。だって、友達だろ?」


「だから、ダチになった覚えはねぇつってんだろ!」


 対してクロウズはファイティングポーズを取り、戦闘態勢でいた。

 さらに「早く来いよ!」と相手を煽った。


「言っとくが、手加減はしねぇ! どっちが死んでも、文句はなしだ!」


「死ぬって、そこまですんのかよ……?」


「当たり前だ! パールが死ぬきっかけを作ったお前は英雄になれないってことを証明してやるよ!!」


 オプダットは目を見開き、体を硬直させた。


「来る気ねぇなら、こっちから行くぜ!」


 クロウズから強烈なパンチが繰り出された。

 オプダットはその場から動かず、まともに腹部へ受けてしまった。


「オープン!!」


 倒れるオプダットへ、ユアたちが駆けつけた。


「どうしたんだよ? お前なら、あんなの避けれるだろ?」


 フィトラグスが声をかけるとオプダットは突然立ち上がり、来た道を走って引き返して行った。


「おい?!」


 彼に続いて、ユアたちも一緒に山を下り始めた。

 それを見たサークズとムジーロが、声を上げて笑った。


「一発食らっただけで逃げるなんて、情けねぇな!」


「大したことないな。よく、あれで超龍と戦えたぜ!」


 二人が笑う中、クロウズだけはオプダットがいた場所を睨み続けていた。

 何も言わない彼へ、サークズが尋ねた。


「ところで、パールって誰だよ?」


 クロウズは視線をそのままに「友達だよ」としか答えなかった。

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