第130話「闇魔導士 VS 大魔王」
古城に入る前にヴィへイトルが立ちはだかり、ユアはクルエグムにさらわれ、強力な助っ人として来ていたイポンダートも腰痛を訴え、早くも戦線離脱となる。
ディンフルらにとっては最悪の幕開けとなってしまった。
「イポンダートも来ていたのか。だが、すでに戦える状態ではなくなったな」
ヴィへイトルは老師の存在を確認するも、自身には影響がないことから勝ち誇った表情を浮かべた。
「ヴィへイトルよ! お前の狙いはやはり、フィーヴェの征服か? こんなことをして何になる?」イポンダートが腰痛を堪えながら訴えた。
「俺は邪魔者のいない世界を作りたいだけだ。その邪魔者に人間はもちろん、ディファートやイポンダート、お前たちも含まれている」
ヴィへイトルは、同族であるディファートでさえ敵視していた。
同族を守るディンフルとは違い、明らかに自分以外の存在を消そうと企んでいたのだ。
「人間だけでなく、何故ディファートまで恨む?!」
「邪魔だからだ。俺を凄んだところで、今のお前には何も出来ん」
再度イポンダートが詰め寄るが、ヴィへイトルはまったく怯まない。
「ユアもいただいた。もう、お前たちには用はない」
そう言うとヴィへイトルはいつもの青紫色の魔法弾を数個出し、一行へ放った。
ティミレッジやディンフルがバリアを張るがすぐに破られてしまった。
ノクリスタリーを手にしたレジメルスたちと同じ強さの力だった。
「強い……」
「前はユアがいたからパワーアップ出来たが、今回はやべぇ……」
バリアが破られると同時にダメージも負い、フィトラグスとオプダットも体力を削られた。
そして、オプダットの言うようにレジメルスたちとの戦いでは、ユアのチアーズ・ワンドで仲間たちを強化してもらった。
ところが、そのユアもいなくなってしまい、一行は成す術がなかった。
その時、一行の前に闇魔導士・ドーネクトとその助手・ダーケストが立った。
「情けない。ここは俺たちに任せろ!」
「我々も城に用があります。邪魔立てするなら容赦はしません」
闇魔導士らが立ちはだかるも、やはりヴィへイトルは冷静を保っていた。
「人間の魔導士か。元魔王が敵わなかった俺に、勝てると思っているのか?」
「バカにするなぁ!!」
相手の皮肉にいつものように腹を立てたドーネクトは黒い魔法弾を乱発した上に、ヴィへイトルの足元に闇の魔法陣を召喚した。
この魔法陣はティミレッジの体に埋めたものとは違い、攻撃に使うためのものだった。
魔法弾と魔法陣から出る黒い光に包まれるヴィへイトル。
さらにそこへ、ダーケストが魔法を唱えた。すると、黒い刃の形をした光が数本現れ、次々と光の中のヴィへイトルへ直撃していった。
相手へ当たるたびに大爆発を起こすので、強力な魔法と思われた。
「すげぇ……」
見ていたフィトラグス、オプダット、ティミレッジも開いた口が塞がらなかった。ジュエルで強化した自分たちの力よりもはるかに強そうに見えたからだ。
一行は闇魔導士とのバトルでは、ダーケストが召喚するダーカーと主に戦っていた。
もし、二人とまともに戦っていれば、負けはしなくともディンフルでも苦戦したかもしれない。
仲間たちが感心する中、ディンフルのみ眉をひそめていた。三人とは違い、不安そうな表情を浮かべていた。
「また心配性か?」察したフィトラグスがからかうような口調で声を掛けた。
「いくら、闇魔導士らが強くてもヴィへイトル相手に敵うなど……」
「そっちか。“実の兄が死ぬかもしれない”って心配してると思ったぜ」
「ヴィへイトルはどうでもいい。奴の逆鱗に触れると闇魔導士らが危ない」
魔法弾、魔法陣から出る光、刃の形をした光すべてが粉砕された。
黒い光は晴れ、中から無傷のヴィへイトルが姿を現した。
「な、何っ?!」
「闇魔法も効いていないだと……?」
自分たちの攻撃も効かず、ドーネクトとダーケストは驚愕した。
後ろで見ていたディンフルは「やはりな……」とつぶやいた。彼の予想が当たったのである。
次にヴィへイトルは大剣を振り、必殺技を使った。
「ヴェーゼン・シュプレシオン」
幅がある上に、長い大剣から繰り出された巨大な青紫色の衝撃波が闇魔導士二人へ直撃した。
あまりの強力さに周囲の地面は抉れ、ドーネクトとダーケストは激しく吹き飛ばされてしまった。
二人は不時着し、うつ伏せで倒れた。
「ぐぅ……」
「言っただろう? “敵わぬ”と。人間ごときが出しゃばるからだ」
ヴィへイトルは二人へトドメを刺すように、魔法弾を数発放った。
ドーネクトたちは立ち上がれず、バリアを張る余裕すら無かった。
そこへ、ティミレッジが前に出てバリアを張った。
もちろん一発で破られたが、次々と新しいバリアを張り続けた。
その間にディンフル、フィトラグス、オプダットが再びヴィへイトルへ攻撃を仕掛けに向かった。
「な、何をしているのです……?」息も絶え絶えのダーケストが、思わずティミレッジへ尋ねた。
「何って、バリアを張ってるんだよ」
ティミレッジは前を向いたまま答えた。
闇魔導士らは、彼の行動が理解出来なかった。
「何で俺らを助けるんだ? 忘れたのか? お前を闇堕ちさせて、俺の右腕に無理矢理しようとしたんだぞ」
「それは今も許せない。でも、今は協力し合わないといけないでしょ? 二人も僕らを助けてくれたじゃないか」
「決して助けたつもりでは……」
ティミレッジはバリアを張るだけでなく、回復魔法を使った。
ドーネクトたちの傷が癒え、立ち上がれるようになった。
「……お人好しなんですね」ダーケストはやや呆れながら言った。
「お人好しでないと、勇者は務まらないからね!」
ティミレッジは振り向き、笑って返した。
一方で、ドーネクトは顎に手を当てて考え込んでいた。
「どうされました? 明日、雪が降るレベルで珍しく考え込んでおりますが?」
「普段から考えて行動してるわ! いいことを思いついたのだ!」
こんな時まで毒舌を吐くダーケストへ憤るドーネクト。
彼が思いついた「いいこと」に、ティミレッジとダーケストは頭をひねるのであった。
その頃、一人ずつの必殺技を同時に使い合体させるも、ヴィへイトルは涼しい顔をしながら大剣を振り、相殺していた。
「ルークス・シャッテン・ブレイキング!!」
さらに、超龍を倒した時に編み出したディンフルとフィトラグスの超必殺技ですら、相手の剣さばきで簡単に消されるのであった。
ディンフル、フィトラグス、オプダットは息切れしていた。
ここまで皆の力を合わせてもヴィへイトルには少しのダメージも与えられず、自分たちの体力を消耗しただけだった。
「諦めろ。お前たちはここを通れない。ユアを使ってリアリティアへ行き、俺がこの世界を支配するのだ!」
合体技も超必殺技も効かず、うなだれ始める一行。
だが、何としてもヴィへイトルは倒さなければならない。
途方に暮れていたその時、相手へ向かって青い影が突撃した。
一行が顔を上げて見ると、何とダークティミーがヴィへイトルの顔面に飛び蹴りをくらわせていたのだ。
相手は焦りながら、その蹴りを受け止めていた。
「ティミー?!」
「よっ♪」
三人が驚いて声を上げると、ダークティミーはこちらへ振り向き、軽い感じで手を上げた。
以前のような悪い雰囲気は健在だったが、今回は友好さも感じられるのであった。




