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赤ちゃんはどこから来るの?(4)

 バチンッ!


「い、痛い!?」


 ビックリして、ほっぺをさするコウノトリさんに、アインちゃんは、5歳児とは思えない程の鋭い睨みを利かせます。


「コウノトリさん!? アイン。今、と~ても大事なお話をしてるのよ? ちゃんと聞いて!」


「ご、ごめん……に、人間は怖い生き物だなぁ」


 機嫌を戻したアインちゃんは、続きを話します。


「そしてDNAは、別の星でタンパク質のような成分と結合して生命を生み出して繁栄して、また別の星がぶつかって、星が隕石になって、新しい星にたどり着くことを繰り返すんだわ」


 アインちゃんは目をつむると物思いにふけります。

 

「星から星へ行く、旅の繰り返しの中で、地球にやって来て、この星で新たな生命を誕生させたのかもしれないわ」


 目を開けると、再びコウノトリさんのまぶたが落ちそうだったので、すかさずアインちゃんは手を頭の上まで上げます。


 それに気づいたコウノトリさんは、身体を震わせて目を見開きました。


 コウノトリさんが起きると、アインちゃんは一呼吸置いてから、重ねた両手を小さなお胸に当てて、口を開きます。


「いつか、地球が死を迎える時が来たら、バラバラになった、地球の破片が、私達、人類のDNAを乗せて、長い旅の末に、新しい星にたどり着いて、その星の有機物と結合して、新たな生命を生み出すのよ!」


 アインちゃんはパラソルのように両手を広げて、クルクルと嬉しそうに回ります。


「これって、凄いことよ! 私達の子孫が別の宇宙で育つのだから! 私達、人間は地球にいながら、宇宙と繋がっているのよ! 地球人は孤独じゃなかったわ! 目をつむれば、いつでも宇宙を感じられるの?!」


 アインちゃんはグングン、スピードを上げて回ります。


「私達、生命体は、宇宙からやって来て、いつか宇宙に帰って行くんだわ! アハハ。アハハハハハ!」


 回り疲れたアインちゃんは、フカフカの絨毯じゅうたんに倒れ込みます。


 唖然とするコウノトリさんは、自分が話せるタイミングを見つけると、寝そべる幼女に問います。


「ア、アインちゃん……君は本当に、何者なんだい?」


 寝そべるアインちゃんは首を上げて、コウノトリさんを見つめると、元気よく起き上がり、爛漫らんまんとした目で見つめ、答えます。


「コウノトリさん。人間は、その質問を自分に問いかけているわ。それは、人間を人間たらしめる、一つの要因よ。『我、思う。故に我、存在する』つまり、私、アインは人間なの!」


 コウノトリさんは、アインちゃんの答えに息を飲み、困惑します。


「そうか、アインちゃんは、人間なんだね……僕はもう、人間が解らなくなってきたよ」


「ううん。コウノトリさん、気にしなくいいわ。そうして自分以外の存在を考えられるのは知性の証よ。コウノトリさんもアインと同じ、人間さんね!」


「ぼ、僕も……人間なのかい?」


 アインちゃんの言葉に、コウノトリさんは感激して涙を流します。


 ですが、その感動は、すぐに恐怖に変わります。


「でもね! 不思議なの! ここまでの仮説は、古代の宗教や哲学にも見られるのよ? 魂は星から星をまたいで、転生を繰り返しているのが、隕石によるDNAの漂流に似てーーーー」


 コウノトリさんは慌てて遮ります。


「も、も、もういいよ!? ざっくり生命に付いて解ったから! もう話終わって満足しただろ? 僕は帰るよ! それに僕、人間じゃなくていいよ! 人間、怖い!」


「そうなの? 残念ね。うん。アイン、おしゃべりし過ぎて疲れちゃった。コウノトリさん、またね~」


「また、は……無いかな」 

 

 羽を羽ばたかせたコウノトリさんは、お部屋の窓から、そそくさと逃げるように飛んで行きました。


 アインちゃんは窓まで駆け寄り、満月に向かって進み、みるみる小さくなって行く影を、見送りながら呟きます。


「でも、世界には不思議が、まだまだ、い~っぱいあるわ? やっぱりアイン。解らない」



                                     おわり

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