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精霊使いと妖魔使い

 階段 踊り場


「あ〜! 緊張した!」


 今しがた未來の教室から出て来た神凪リサは階段の踊り場でまだあどけない顔をした小柄でうち学園の制服を着ている女の子と会話している。


「首尾はどうですか? お嬢様?」

「茜。何とか上手く話せたと思う。しっかりと放課後に生徒会室に来てくれる約束もしたし……」

「それは良かったですね。お嬢様」

「うん」


 リサは少し頬を赤らめながら嬉しそうにしている。

 そんな会話を交わしている二人に階上から声が飛んだ。


「ちょっといいか!」


 二人が見上げると、そこには御代志和哉が立っていた。


「世界企業SINグループCEOの令嬢が未來に何の用があるんだ?」

「御代志和哉君ね、貴方の事は聞き及んでいます。貴方のファンは私たち上級生にもたくさんいるわよ。でも貴方は女の子に興味が無い。それなのに私のことを知って下さっているなんて光栄ですね」


「それは間違いだな。俺は女が苦手なだけで興味が無いわけじゃない。まぁ、お前自身には何の興味も無いけどな。ただ、SINグループCEOの令嬢となると話は別だ。電子部品から医療機器、軍事兵器から宇宙開発まで色々な分野に手を伸ばしているお前らが未來に手を出すとしたら黙って見すごす訳にはいかないからな!」

「わ、私は別に…………」


 リサが話し出したのを茜と呼ばれた隣の小さな女の子が制する。


「下がってくださいお嬢様! あやつは精霊持ちです」


 茜はリサの前に立ち左手を前に突き出し叫んだ。


月白(げっぱく)!」


 その声に呼応して左腕にはめられていた白い腕輪(ブレスレット)が輝き出し体長3メートルはあろうかという真っ白な虎が忽然と姿を現した。


「ガキんちょ! お前は妖魔使いか!」

「ガキんちょ言うな! お前と同じ歳だぞ!」

「ええええっ! そうなの!」


 和哉は真っ白な虎が出てきたときよりも驚いた。


「真顔で驚いてるやがるなんて! 許さない‼︎ 行け! 月白‼︎」


 月白と呼ばれる真っ白な虎はひと声吼えて屈強な四肢で踊り場から階上へ飛び上がり和哉に牙をたてようと襲いかかる。


 しかし、和哉は意に介した様子も無く制服の胸元からチェーンネックレスを引き出しその先に付いている浅葱色の石を手の平に乗せて一言発する。


浅葱(あさぎ)、出番だ!」


 和哉の声に合わせて青緑色の腰まで届く長髪に、青緑色の透き通るような瞳、細身の身体を覆う青緑色の飾りっ気の無い清楚なワンピース姿の少女が健の前に現れた。


「わぁ〜! 和哉さま、お久しぶりです。なかなか呼んでもらえないんで浅葱寂しかったんですよ」


 浅葱は今の状況を理解しているのかいないのか、和哉の手に抱きつき嬉しそうにしている。


「いや! そんなことより、あれ! あれ!」


 和哉は慌ててこちらに向かっている月白を指す。


「そんなことよりって! ひどいですわ!」


 浅葱は頬を膨らませて怒っている。其処へ月白が牙を剥いて襲いかかった。


「うるさいですわ! 人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴らて死んじまえですわ!」


「エナジーウォール!」


 浅葱は青緑色の透明な円盤状の盾を出して月白の突進を弾き返した。


「ね〜、和哉さま」

「ちょ、ちょっと、それ危ないから……」


 浅葱は今しがた月白を弾き返したエナジーウォールを手にしながら健ににじり寄っていった。


 その様子を踊り場で見ていたリサがボソッと言った。


「御代志君が女の子を苦手になった理由もわかるわね」


 苦笑しているリサに月白の背中に乗った茜の手が差し出される。


「お嬢様! 今の間に此処から離れます!」


 その手を掴んで茜の後ろに乗ったリサは階上にいる御代志和哉に向かって言った。


「御代志君! 私は本当にあなたが思ってるような目的で新君に近づいた訳では無いから……それだけは理解してね」


 そう言うと茜とリサを乗せた月白は踊り場の窓から外に出て空を走り去った。

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