親友と生徒会長
朝礼前 私立翡翠高等学園 一年一組
「おはよう未來! 彼女でも出来たのか?」
そう言ってクラスに入った僕を出迎えてくれたのは親友の御代志和哉。和哉とは中学時代に知り合って以来ずっと仲良くしている。
彼は僕とは正反対でとりあえず目立つ、身長は180センチを超え細身で、髪は茶髪の短髪、顔は顎が鋭く尖っていて、目も鋭くまるで獲物を狙う鷹のようである。そして僕との最大の相違点は女の子にモテる。
中学時代からコクられた回数が50回を超えるから凄い。ただ残念なのはコクられた全てを断わったというのだ。どうして断わったのかって聞くと「女の子はちょっと苦手なんだ」の一言で片付けられてしまった。
そんな和哉が僕に彼女が出来たなんて話を振ってきたので驚きながら答えた。
「おはよう和哉! いきなり彼女って何の話?」
「ほら、未來らしくない指に紅い指輪を着けているって、どう考えても彼女からのプレゼントだと思うだろ」
そう言いながら僕の指の指輪を見ている。
「あぁ、これ……?」
僕は和哉に昨日あった事を話す訳にもいかずに(まぁ、話しても信じて貰えないだろうし)苦し紛れの言い訳を返した。
「えっと、ほら、僕の妹がいるだろう。その妹がふざけて僕の指にこの指輪をはめたら抜けなくなっちゃて……困ってるんだよ」
「ふぅーん、そうなんだ。じゃあ、俺が取ってやるよ」
「えっ! いや! それは別に!」
「いいから、早く指を出してみな」
そう言いながら和哉は僕の手を強引に取り指輪を引き抜こうとする。
「本当だ。なかなか抜けないな」
指輪を持って引っ張っているのだが抜けそうな気配も無い。僕はそれより紅緋が大丈夫か心配になってきた。
「和哉! もういいよ。僕も指が痛くなってきた」
「そ、そうか? もう少しで抜けそうなんだけどな」
和哉は残念そうな顔をして渋々手を放した。
「二人共何イチャイチャしてんの?」
声をかけてきたのはクラス委員長の東雲楓だ。黒髪のロングで眼鏡を掛けて、いかにもクラス委員長っていう感じだが明るくて話題も豊富でクラスの男子、女子問わずに人気がある。
「イチャイチャなんてしてないよ!」
僕は色々と問題になりそうな発言に抗議する。
「え〜っ、でも今、御代志君が新君に指輪をはめていたじゃない⁉︎」
「違うよ! 手違いで抜けなくなった指輪を取って貰ってたんだ」
「ふぅ〜ん。そうなの」
「そうだよ。何勘違いしてんの?」
「勘違い……か。面白くないなぁ」
楓は僕と和哉の顔を何度か見ながら残念そうな顔をしている。
そんな僕達の会話をクラスメートのどよめきが遮った。
「ん? 何?」
僕は不思議に思い和哉の方を見ると、和哉は教室の入り口を見て答えた。
「生徒会長のお出ましだ」
僕も教室の入り口に目を向けてみる。そこには金髪の長髪で碧い目、色白でしっかりとした造形の顔、スタイルも良く、とりわけ胸が大きく制服のブラウスのボタンが苦しそうな感じの美少女が立っていた。
「神凪リサ生徒会長か、うちのクラスに何の用だろ?」
僕の質問に和哉は興味なさそうに答える。
「ハーフの金髪美少女が自分の美しさを見せびらかしに来たんじゃないの」
「御代志君は相変わらず女性には冷たいわね」
楓は和哉の言葉に苦笑してた。そんな会話をしている間に神凪生徒会長が僕の席の横に立っていた。
「貴方が新君ですか?」
「は、はい。そうです」
「今日の放課後、少しお時間を頂けるかしら?」
「えっ? あ、は、はい」
僕は何の事か訳も分からず、不用意にもついハイと返事をしてしまった。
「では放課後に生徒会室でお待ちしています」
それだけ言うと、神凪生徒会長はクラスのざわめきを残して去っていった。
神凪生徒会長から呼び出しのあった僕はクラスメートからの羨望と軽蔑の眼差しとひそひそ声を一身に浴びている。
「んーと、どういう事なんだろうね?」
僕はいたたまれなさから楓と和哉に助けを求めた。
「新く〜ん、あなた何か仕出かしたんじゃないでしょうね?」
楓は不審げに僕の顔を覗き込む。
「い、いや! 何もやってないよ!」
「そ〜かな?」
いかにも野次馬根性丸出しって感じである。
「楓! うるせえよ! 未來、あんまり気にするなって! 何の話か知らないけど、金髪美少女のきまぐれだよ」
珍しく神妙な顔をしている和哉は続けて言った。
「未來は別に生徒会室に呼ばれるような悪い事をしたわけでも無いし、金髪美少女が生徒会室で未來に愛の告白ってことも無いだろう……」
そして和哉は何かを思い出したように
「……ごめん未來! 俺、急用を思い出した!」
そう言って教室を飛び出して行った。
「何? あれ?」
楓は僕に教室の出入口を指して聞いてくるのだけど僕だって分からないんで首を傾げて答えた。
「さぁ?」
楓は不思議そうな顔をしつつ自分の席に戻った。
「……未來」
指輪になっている紅緋がみんなに聞こえないように小声で話しかけてくる。僕もみんなに気づかれないように応える。
「何? 紅緋」
「この学園、気をつけた方がいいかもしれない」
「どうして?」
「いろいろな気を感じるんだ」
「いろいろな気って、妖魔がいるの?」
「うん。禍々しいものもあるんだけど、それ以外のものも混在しているみたい」
「どこにいるか分かるの?」
「ううん。そこまでは分からない」
「分かった。気をつけるよ」
「うん!」
紅緋は嬉しそうな声で答えた。




