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最終決戦ー1

遅くなってすいません!

終焉の焔です。

今回、すべて戦闘シーンとなっておりまして結構楽しめると思います。

ではでは本編どうぞ。

「ほう、貴様が…」


少女はそう言って将をじっくりと眺める。

深い闇色に煌めいているその瞳は何を推し量っているのだろうか、将には分からなかった。


「こっちから行かせてもらう!」


将はそう叫ぶと一足飛びで間合いを詰めた。

将にはそんな筋力は無いとお思いだろうがそこは力強化魔法がどうにかしてくれる。


少女の懐に飛び込むと将は持っていた草薙の剣を横一文字に薙ぐと二の太刀で鋒を瞬間的に切り返し連続した突きを繰り出す。数々の学園戦闘系アニメで培ってきた剣技がこんなところで役に立つとは将は思いもしていなかった。だが、そのお陰で今こうして闘えている。


「ほう、なかなかの剣技………だが!」


少女は突きを腹部で受け止めるとその剣を左手で掴んだ。

そしていとも容易く草薙の剣を握力だけで折るとそれに動じて動きが鈍った将に、空いていたもう片方の手で拳を叩き込んだ。


叩き込まれた右拳はリフレクターを貫通しなくとも身体を大きく揺さぶり、それを追うようにして身体中を鈍い痛みが走る。将はそれに耐えながら、バックステップで間合いを取り直した。


「ほう、今の一撃に耐え忍ぶか……確かに手応えはあったのだが……」


少女はそう言って再び将に何かを推し量るような眼差しを向ける。


場を沈黙が支配する。

火がくすぶる音以外聞こえないのはもはや戦場とは思えなかった。


だが、それも解放されたドラコーンが地面に落ちる音で破れられると少女が一瞬にして将の眼前に間合いを詰めた。将のそれとは比べものにならなく、その速さはまさに神速だ。


「なっ!?」

「これに反応出来ない程度ではな!」

「………っ!《交錯する破滅(クロス・ルイン)》」


少女が振り下ろした踵をすんでのところで二つの重力球がそれを阻む。それに少女は少し目を見開いて驚くとまた元の済ました微笑みに戻した。ーーただ、その瞳には先程より鋭い輝きがあるが。


少女はそのまま空中で一回転して背後に大きく間合いを取った。


「最上位魔法で私の力強化魔法付きの蹴りを防いだか……面白い!闘いはこうでなくてはな!」


少女はそう言って高らかに笑った。


「狂気せよ!《狂凶の炎焔(クリムゾン・フレイム)》」


少女が両手に宵闇のきらめきを持つ焔の蕾を呼び起こすとそのうちの一つが将に向かって華を開く。

将の一歩手前でそれは爆散すると凄まじい火焔と爆風が辺りを支配した。


寸前でバリアを張って事を凌いだ将は爆煙に掻き消される視界に警戒を緩めないでいた。


「何処を向いているのだ!」


唐突に背後から聞こえた声に将は勢いよく振り返る。

だが、もう時すでに遅い。そしてそれはただ敵に隙を与えるだけのものだ。


いつの間にか眼前に迫っていた少女はそのまま将の鳩尾に拳を決め込むとそこからさらに暗黒の焔による焔弾を叩き込んだ。


ーー最上位魔法使用者同士の闘い。それは使える技の種類よりも闘いの経験がものをいう。そして将には圧倒的にそれが足りない。


狂気の焔は将のリフレクターを容易く貫通し将の鳩尾部を抉り取る。そして後方の城壁まで吹っ飛ばすとそこに巨大なクレーターを作った。


将は肺の空気すべてと共に血反吐を吐き出す。

リフレクターである程度は防いでたといえど衝撃によるダメージは将の身体を突き抜けていた。


だが、将は満身創痍の身体に鞭を打つと立ち上がった。

相手とは圧倒的な力量差ーーいや実際に力を扱える実力の差といったほうがいいか。


今のままでは勝てる見込みは皆無に等しいといっていいだろう。それは将もわかっていた。

だが、勝たなければならないのだ。今も将がこんなに傷ついて闘っているのは自分の所為だと思い込んで泣いているドラコーンの為に。


勝てる可能性はまだある。

今のままでは勝てないのであれば変えればいい、ただそれだけのことだ。


そしてその単純な解に辿り着くの一番の近道は自分が単純であること。単純である為には相手の腹を探るような事はしてはいけない。ーーつまり自分にも相手にも嘘をついてはいけないという事だ。そして将はこれまでの人生、自分に、そして他人にも嘘はついた事がない。


ーーそう、将は単純であった。


「《破壊の破戒(ネバー・ブロークン))》」

「いまさら防御魔法をかけたところで我がアンチを張れば済むだけのこと《絶望なる障壁(アブソリュート・ナイン)》」


将は最初から解っていた。相手は自分に防御魔法を掛ければアンチ魔法を将にーーつまりは自分(・・)に対して発動してくるということを。

ならば自分にかけなければいいーーその代わりに自分の大切な人にーードラコーンに防御魔法を施せばいいのだ。そうすればーー


「《重力衝撃球(グラビティー・ボール)》!」


将は禍々しい重力球を手の内に作り出すとそれを持ったまま少女めがけて一足飛びで飛び掛った。


「な!ついに正気を失ったか!」


少女は身を軽く捻るだけでそれを避けると身体を反転させ将に向かってその拳を振り上げた。


「この時を待って居たんだ!」


将はずっと待っていた。相手が少しでも隙を見せる時を。


ーー攻撃する瞬間という唯一無二の最大の隙を。


将は重力球を地面(・・)に叩き込んだ。


「なに!?」


少女の瞳に先程以上の驚きとそして何より初めて焦りの色が浮ぶ。


重力球はその場で重力崩壊を起こすとそのまま少女諸共、将を包み込んだ。








黒い闇が晴れると将は魔王城の瓦礫を押しのけて這い出る。

身体のあちこちが傷むのに加え、自分の魔法を防ぐのに体力を使い果たしてもう立つ事もやっとの状態だ。

だが、これしか方法はなかったのだ。大切な人を守るには。


「ふはは……ふははははははは!面白い策であったぞ。だが、相手を確実に倒せるかを確認してから行うのだな!」

「な!」


瓦礫の山の上に悠然とたつ少女をみて将の心に絶望が渦をなす。

少女はどうやっても倒せないようなそんな気が起きてきたのだ。


「まだまだMPはあるだろう。次で終わらしてやろう!今度はリフレクターブレイク付きの拳だ。すぐに逝けるぞ。ふはははははは!」


少女は自らが戦闘狂である事を垣間見せると、瓦礫の上に粉塵をたてる。

一瞬にして眼前に迫っていた少女に頭ではよくわかっているのだが、身体が反応できない。

少女は動けないままでいる将に拳を真っ向から叩き込んだ。


防ぐ事も何もできないまま、吹っ飛ばされると、数十メートル後方の瓦礫の山に頭から突っ込んだ。

言葉では表しきれない、生きている方が苦痛と思える程の痛みが全身を駆け巡る。


結局守れなかった。やはり自分にはーー


勇者や魔王狩りなんて無理だったんだ。


将は走馬灯のように勇者試験直後の自分や、ミルシェアと笑い合っている自分を見た。


もう死を覚悟したまさにその時ーー1人の少女の声が聞こえた。







瓦礫の上で悠々と将が力尽きたことを眺めやっていた1人の少女ーー魔王、ヘルドラシル・シュターデは、鼻で笑いながら、長い紫色の髪を翻して振り返った。


歴代の勇者としてはーーリーズライトには及ばないがーーそこそこの実力の持ち主だった彼にでも、彼女はリーズライト級の力の持ち主でないと興味がないのだ。少々、面白い小僧であったがまだまだ技量が足りん。


そう、今回の騒動は彼女にとって居城を滅茶苦茶にされたしょうもないバットイベントに過ぎなかったのだ。蹲っていたミノタウルスを治癒すると、ミノタウロスに、前線基地より第二、第三師団をここに連れ戻すことを指示した。

ドラコーンは何処かへと吹き飛ばされたか姿が見えないが後で探させればいいだけの話だ。

そして、今はこの城をどうするかだ。


「ふう…これは手がかかりそうだ……な……」


少女はその時、自分を圧倒する気を感じた。

ーー自分は常に周りを気圧し、気圧されることなどなかったのに。


そんな少女にはその得体の知れない恐怖に耐えることはできなかった。


「彼奴はまだ生きていた!、殺し損ねた!」


少女は勢いよく振り返えると指向性の衝撃波を乱射した。

それらは一直線上に瓦礫を消し去りながら進むと将が埋まっている瓦礫の山に殺到する。


ーーが。それら全部、神々しくも感じられる翠色のバリアに阻まれた。

衝撃波が辺りの砂埃を巻き上げて爆散する。


「な!」


少女は自分が技を完璧に防がれたことにただ愕然としていた。

だが、それは直ぐに怒りに変わる。自分に屈辱を味あわせたものへの憎しみに。


ーーそう、再び立ち上がり、目の前に立ち塞がった1人の男に向けて。






将、運動音痴ですもんね。そりゃ魔王様、体術だから負けます。

だけど、そんなことは関係ねえ、次回は将が魔王を圧倒しちゃいます。

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