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『DEAD LOGIC ― 最後の正解者 ―』  作者: hael
season 1 『12人の被験者』
7/7

第7話 キュウケイタイム



扉の向こうにも、白い通路が続いていた。


 背後で扉が閉まる。


 その音を聞いてから、俺はようやく息を吐いた。


 PLAYER 06は、もういない。


 ついさっきまで、同じ場所に立っていた人間だ。軽口を叩き、場の空気を明るくしようとしていた。そんな彼が、最後には誰よりも静かに消えた。


 考えても、答えは出ない。


 彼がなぜBを選んだのか。何を根拠に、あの選択をしたのか。


 今となっては、確かめようがなかった。


 俺は視線を前に戻した。


 立ち止まっていても、何も変わらない。


 生き残ったのは、俺を含めて六人。


 次のゲームでも、この人数が保たれる保証はない。


 それでも、歩かなければならなかった。


 しばらく進むと、通路の壁面にモニターが現れた。


《GAME CLEAR》


《生存者:6名》


 PLAYER 04。

 PLAYER 07。

 PLAYER 09。

 PLAYER 10。

 PLAYER 11。

 PLAYER 12。


 自分の番号を確認する。


 間違いなく、俺は生きている。


 その事実を確かめてから、ほかの五人に目を向けた。


 PLAYER 12は、表示された人数を見つめたまま動かなかった。


 PLAYER 09は唇を引き結び、PLAYER 10は眼鏡の位置を直している。PLAYER 11はモニターから視線を外し、通路の先を警戒していた。


 PLAYER 04だけは、いつもと変わらない表情をしていた。


 だが、誰も平静ではない。


 当然だ。


 自分たちが生き残ったことと、仲間が死んだこと。


 その二つは、切り離せない。


 天井のスピーカーから、機械音声が流れた。


《参加者の皆様、お疲れさまでした》


 聞き慣れた声だった。


《次のゲーム開始まで、休憩時間を設けます。休憩時間は六時間です》


《食事、入浴、睡眠は指定された施設をご利用ください》


《休憩時間終了後、案内に従って次の会場へ移動してください》


 音声が途切れた。


 俺たちは、しばらくその場に立っていた。


 六時間。


 ゲームの合間に休憩が用意されるのは、今回が初めてだった。


「……休憩、か」


 PLAYER 12が小さくつぶやいた。


「今まで、こんなのなかったよな」


 PLAYER 09が答える。


「なかったな。少なくとも、俺の記憶にはない」


「食事だけでなく、入浴や睡眠まで用意されているのですね」


 PLAYER 10がモニターを見上げた。


「運営は、私たちがこの施設に長く滞在することを想定しているのでしょうか」


「長くって……どれくらいだよ」


 PLAYER 12の声には、疲労がにじんでいた。


 誰も答えなかった。


 俺はモニターの隅に表示された案内図に目を向けた。


 食堂。浴室。個室。医療室。


 必要な設備は、一通りそろっているらしい。


 そして、中央には太い線で描かれた通路があった。


 その先には、何も表示されていない。


 案内図の範囲外なのか。それとも、意図的に省かれているのか。


 今の段階では判断できなかった。


「とりあえず、飯にしよう」


 PLAYER 09が言った。


「考えるのは、それからでも遅くない。今は全員、まともに頭が働く状態じゃないだろ」


「……そうですね」


 PLAYER 10が同意する。


「休めるうちに休んでおくべきだと思います」


 PLAYER 11が歩き出した。


 PLAYER 04も無言で続く。


 俺も、残った三人の後を追った。


 六時間。


 体を休めるだけなら、十分な時間かもしれない。


 だが、この施設について知るための時間としては、短い。


 何より、次のゲームで生き残るためには、休息そのものを無駄にするわけにはいかなかった。


     *


 食堂は、想像していたよりも普通だった。


 白い壁。木目調のテーブル。四脚ずつ並べられた椅子。


 壁際には飲み物のサーバーがあり、カウンターには料理が並んでいた。


 ご飯、スープ、肉料理、野菜、果物。


 豪華とは言えないが、量は十分にある。


 窓はなかった。


 照明は一定の明るさを保っており、外の時間を感じさせるものは何もない。


「……学校みたいだな」


 PLAYER 12が言った。


「学校にこんな食堂があったら、悪くないんだけどな」


 PLAYER 09はそう返したが、笑わなかった。


 俺たちはそれぞれ食事を受け取り、六人で一つのテーブルを囲んだ。


 最初の数分間、会話はなかった。


 食器が触れ合う音だけが、食堂に響いている。


 俺は食事をしながら、周囲を観察した。


 料理の配置。飲み物の種類。食堂の出入口。


 どれも、今すぐ役に立つ情報とは限らない。


 それでも、確認できることを確認しておくのは無駄ではなかった。


 目の前の食事を疑い続けても、空腹になるだけだ。


 だからといって、運営が用意したものを無条件に信用するつもりもなかった。


 結局、今できるのは、必要以上に疑わず、必要以上に信じないことだった。


「なあ」


 PLAYER 09が箸を置いた。


「これからのこと、少し話しておかないか」


「これからって?」


 PLAYER 12が顔を上げる。


「次のゲームのこと。それと、俺たちが何をさせられているのかってことだ」


「何をさせられているか、か……」


 PLAYER 12は視線を落とした。


「正直、考えたくもないけどな」


「考えたくなくても、次は来る」


 PLAYER 04が短く言った。


「だったら、考えられるうちに考えておいたほうがいい」


 PLAYER 09がうなずく。


「俺もそう思う。今までは目の前のゲームを突破することだけ考えていればよかった。でも、ここまで来たら、それだけじゃ足りない気がするんだ」


「運営の目的、ということでしょうか」


 PLAYER 10が尋ねた。


「そうだ。どうして俺たちが選ばれたのか。どうして、こんなゲームをさせられているのか」


「実験の可能性はあると思います」


 PLAYER 10は落ち着いた口調で続けた。


「参加者に特定の状況を与え、その中での判断や行動を観察している。そう考えれば、これまでのゲームにも一定の説明がつきます」


「俺たちは実験動物ってことかよ」


 PLAYER 12が顔をしかめた。


「そうだとすれば、ずいぶん悪趣味だな」


「現時点では、実験だと断定できる根拠はありません」


 PLAYER 10は、きっぱりと言った。


「ただ、可能性の一つとして考えておく価値はあると思います」


「生き残る能力を見ているんじゃないのか」


 PLAYER 04が言った。


「状況を判断できるか。危険を避けられるか。他人を信用できるか。そういうものを見ている可能性はある」


「だったら、もう十分だろ」


 PLAYER 12の声が強くなった。


「何人も死んだんだ。これ以上、何を見たいっていうんだよ」


 誰もすぐには答えなかった。


 PLAYER 06のことが、頭をよぎった。


 彼も、自分なりに考えて選択したはずだ。


 少なくとも、何も考えずにBを選んだとは思わない。


 それでも、結果は変わらなかった。


 考えることは重要だ。


 だが、考えれば必ず正解にたどり着けるわけではない。


 今回、俺が生き残ったのも、絶対的に正しい判断をしたからではなかった。


 俺は、自分が生き残れる可能性を考え、選択した。


 それだけだ。


「それを決めるのは、俺たちじゃない」


 PLAYER 04が答えた。


「運営が何を考えていようと、次のゲームは始まる」


「……まあ、そうだな」


 PLAYER 09が息を吐いた。


「今は、分かっていることと分かっていないことを分けて考えるしかないか」


 俺はスープを飲んだ。


 彼らの話には、それぞれ筋が通っている。


 だが、運営の目的を突き止めることが、そのまま生存につながるとは限らない。


 目的が分からなくても、ゲームを突破する方法はあるかもしれない。


 逆に、目的を理解したところで、何もできない可能性もある。


 俺が優先すべきなのは、真相を解き明かすことではなかった。


 まずは生き残ること。


 そのために必要な情報を集め、使えるものを使う。


 それだけは、間違えないようにしたかった。


「PLAYER 07はどう思う?」


 突然、PLAYER 09に話を振られた。


「俺?」


「さっきから、ほとんどしゃべってないだろ」


「聞いてたよ」


「それは分かってる。お前自身の考えを聞きたいんだ」


 俺は一度、箸を置いた。


 どこまで話すべきか。


 答えを曖昧にしすぎれば、かえって不自然になる。


「運営の目的を考えるのは大事だと思う」


 俺は言った。


「でも、今の段階で答えを決めつけても仕方ないんじゃないか。次のゲームで何か分かるかもしれないし」


「確かに、今は情報が少なすぎるな」


 PLAYER 09がうなずいた。


「仮説を立てるのはいいが、決めつけるのは危険ですね」


 PLAYER 10も同意した。


 それから、彼女は俺を見た。


「PLAYER 07は、いつも慎重に判断されているのですね」


「そうかな」


「少なくとも、今のお話を聞く限りでは、そう感じました」


「考えすぎると疲れるからね」


 俺は食器に視線を戻した。


 PLAYER 10は、それ以上追及しなかった。


 だが、彼女の言葉は少し気になった。


 慎重に判断している。


 それ自体は、悪いことではない。


 ただ、その印象が強くなりすぎるのも避けたかった。


 俺は食事を続けた。


     *


 食事を終えると、俺たちは施設内を確認することにした。


 個室は一人一部屋。


 ベッド、机、洗面台、収納棚が備えつけられている。


 扉の横には、それぞれのプレイヤー番号が表示されていた。


 PLAYER 07。


 そこが俺の部屋だった。


「鍵はないのか?」


 隣の扉を調べていたPLAYER 12が尋ねた。


「見当たらないな」


「内側からは閉められるようです」


 PLAYER 10が自分の部屋から顔を出した。


「ただし、外側から施錠できるかどうかは分かりません」


「今、確認する必要はあるか?」


 PLAYER 11が尋ねた。


「今すぐには必要ないと思います。ただ、把握しておくに越したことはありません」


 PLAYER 10はそう答え、扉を閉めた。


 PLAYER 11は何も言わなかった。


 この施設では、誰もが少しずつ周囲を疑っている。


 それでも、休憩時間くらいは安心したい。


 その矛盾は、俺自身にもあった。


 俺は部屋に入った。


 ベッドに腰を下ろす。


 柔らかすぎず、硬すぎないマットレス。清潔なシーツ。枕元には水の入ったペットボトルが一本置かれている。


 机の上には何もなかった。


 時計すらない。


 時間は、壁面の表示で確認する仕組みらしい。


 俺は立ち上がり、部屋の中を一周した。


 収納棚。洗面台。ベッドの下。


 目立ったものはない。


 当然だ。


 休憩室に、わざわざ重要な情報を置く必要はない。


 ……いや。


 そうとは限らない。


 何もないように見せることも、情報を隠す方法の一つではある。


 だが、そう考え始めれば、何もないことさえ疑わしくなる。


 俺は机の前に戻った。


 食堂で見た案内図が、まだ頭に残っている。


 中央の通路。


 その先には、何も表示されていなかった。


 今のところ、それ以上の情報はない。


 表示されていない理由も分からない。


 それでも、参加者に見せる案内図を運営が選んでいることだけは確かだった。


 何を見せ、何を見せないか。


 その選択に意味があるかどうかは、今後の情報次第だ。


 俺は椅子に座り、机の端を指で二度叩いた。


 考えるのは、ここまでにしておこう。


 今はまだ、その時じゃない。


     *


 休憩時間が始まってから、二時間ほど経った頃。


 俺は食堂に戻った。


 PLAYER 09はテーブルに紙を広げ、施設内の案内図を書き写していた。


 PLAYER 12は椅子に座り、ぼんやりと天井を眺めている。


 PLAYER 04は壁際に立ち、腕を組んでいた。


 PLAYER 11は、施設内に置かれていた本を読んでいる。表紙には何も書かれていなかった。


 PLAYER 10は出入口付近で案内板を確認していた。


「それ、何してるんだ?」


 PLAYER 12が、PLAYER 09の紙を指さした。


「施設の構造を覚えておこうと思ってな」


「覚えたところで、外に出られるわけでもないだろ」


「だからって、何もしないよりはいいだろ」


 PLAYER 09は紙から顔を上げた。


「何かあったときに、知っていることが多いほうが動きやすい」


「それは、そうだけどさ……」


 PLAYER 12は口を閉じた。


 俺は六人の様子を順番に見た。


 PLAYER 09は、情報を整理することで次に備えている。


 PLAYER 10は、確認できる事実を一つずつ確かめている。


 PLAYER 04は、必要以上に自分の考えを明かさない。


 PLAYER 11は、周囲の会話に加わらず、観察に徹している。


 PLAYER 12は、考え続けることに疲れているようだった。


 そして俺は、誰か一人と同じ考え方をしているようには見えないよう、振る舞っていた。


「なあ、PLAYER 07」


 PLAYER 09が顔を上げた。


「さっきから、何を見てる?」


「別に。暇だから、みんなの様子を見てただけだよ」


「人間観察か?」


「そんな大層なものじゃない」


「そうか」


 PLAYER 09は、それ以上追及しなかった。


 そのとき、PLAYER 10がこちらへ歩いてきた。


「一つ、聞いてもいいですか」


 全員の視線が彼女に集まる。


「皆さんは、次のゲームが終わったらどうなると考えていますか?」


「……解放、じゃないのか?」


 PLAYER 12が答えた。


「最後まで勝ち残れば、帰れるんだろ」


「運営から、そのような説明を受けた記憶はありますか?」


 PLAYER 12は口を閉じた。


 PLAYER 09が代わりに答える。


「いや。少なくとも、俺は聞いてない」


「私もです」


 PLAYER 10はうなずいた。


「では、なぜ解放されると考えたのでしょうか」


「普通、そうだろ……」


 PLAYER 12の声が弱くなった。


「ゲームに勝ったんだから」


「ええ。そう考えるのは自然だと思います」


 PLAYER 10は否定しなかった。


「ただ、自然な考えであることと、事実であることは別です」


 食堂が静かになった。


 PLAYER 12が、ゆっくりと顔を上げる。


「……じゃあ、終わらない可能性もあるってことか?」


「可能性だけなら、否定できません」


「そんな……」


 PLAYER 12は言葉を失った。


 PLAYER 09も、すぐには何も言わなかった。


 解放されるという保証はない。


 それは、今さら指摘されなくても分かっていたはずだ。


 それでも、人は明確な答えがないとき、自分に都合のいい答えを信じたくなる。


 そのほうが、前に進みやすいからだ。


「でも、終わらないって決まったわけでもないだろ」


 俺は口を挟んだ。


 PLAYER 12がこちらを見る。


「次で終わるかもしれないし、終わらないかもしれない。今のところ、どっちも分からないんだ。だったら、今は次のゲームに備えたほうがいいと思う」


「……まあ、そうだな」


 PLAYER 09が小さくうなずいた。


「不確かなことを考え続けても、答えが出るとは限らない」


「そうですね」


 PLAYER 10も同意した。


「確認できる情報を増やしながら、判断を保留するのがよさそうです」


 会話はそこで終わった。


 だが、PLAYER 12の表情から、不安が消えたわけではなかった。


 当然だろう。


 先の見えない状況で、平静を保ち続けるのは難しい。


 俺自身も、怖くないわけではない。


 次のゲームで死ぬ可能性は、常にある。


 それでも、恐怖だけで判断すれば、選択を誤る。


 必要なのは、恐怖をなくすことではない。


 恐怖がある状態でも、判断できるようにしておくことだった。


     *


 残り時間が一時間を切った頃、俺は廊下に出た。


 食堂の話し声が遠ざかると、施設内は驚くほど静かだった。


 等間隔に並ぶ照明。


 磨かれた床。


 壁に埋め込まれた監視カメラ。


 その一つの前で、俺は足を止めた。


 カメラの向きが、ほんのわずかに変わっている。


 気のせいかもしれない。


 俺は立ち止まったまま、しばらく動かなかった。


 やがて、カメラがゆっくりと元の位置へ戻った。


 俺は何事もなかったように歩き出した。


 角を曲がる。


 そこに、PLAYER 04がいた。


「何をしていた?」


 彼は壁にもたれ、こちらを見ていた。


「散歩」


「休憩時間に?」


「休憩時間だからだよ」


 PLAYER 04は俺を見つめた。


 何かを確かめるような目だった。


「お前は、あまり疲れていないように見える」


「疲れてるよ」


「そうは見えない」


「顔に出ないだけじゃないか?」


 彼は答えなかった。


 俺は彼の横を通り過ぎようとした。


「PLAYER 07」


 呼び止められる。


「お前は、ここから出られると思うか?」


 足を止めた。


 振り返ると、PLAYER 04は真っすぐこちらを見ていた。


 彼は答えを求めている。


 だが、俺にも分からない。


 楽観的な答えを返して、安心させることはできる。


 しかし、根拠のない言葉を口にしたところで、現実が変わるわけではない。


「出たいとは思ってるよ」


「質問に答えていない」


「そうか?」


 俺は少しだけ考える間を置いた。


「出られるといいな」


 PLAYER 04は、しばらく俺を見ていた。


「……そうだな」


 それ以上、彼は何も聞かなかった。


 俺は再び歩き出した。


 角を曲がる直前、背後から声がした。


「お前は、時々、答えを避けているように見える」


 俺は振り返らなかった。


「考えすぎだよ」


 そう答え、廊下の先へ進んだ。


 背後の視線が、しばらく残っているような気がした。


 だが、確かめるために振り返ることはしなかった。


 自分の考えを、すべて他人に明かす必要はない。


 ここでは、知られないことも一つの防御になる。


     *


 休憩時間終了まで、あと十分。


 六人は、最初に集められた部屋へ戻っていた。


 壁面のモニターには、残り時間が表示されている。


《00:09:42》


 PLAYER 09は、書き写した案内図をポケットにしまった。


 PLAYER 10は眼鏡を直し、モニターを見つめている。


 PLAYER 11は読んでいた本を閉じた。


 PLAYER 12は深く息を吸い、ゆっくり吐いた。


 PLAYER 04は腕を組んだまま、目を閉じている。


 そして俺は、残り時間の数字を眺めていた。


 六時間の休憩。


 食事をして、施設を調べ、互いの考えを聞いた。


 分かったことは少ない。


 運営の目的は不明。


 次のゲームの内容も不明。


 解放される保証もない。


 それでも、休憩前とまったく同じというわけではなかった。


 全員が、一度は考えたはずだ。


 ここは、本当に終わりのある場所なのか。


 その疑問に答えは出ていない。


 そして、答えが出ないままでも、次のゲームは始まる。


 俺は自分の手を見下ろした。


 さっきまで、ここに七人いた。


 今は六人しかいない。


 次のゲームが終わったとき、同じことを考えることになるのだろうか。


 そうならないために、何をすべきか。


 答えはまだ出ていなかった。


《00:00:30》


 残り三十秒。


 PLAYER 12が小さくつぶやいた。


「……次で終わりだといいな」


 誰も否定しなかった。


 俺も何も言わなかった。


 願うことは自由だ。


 ただ、願いが叶うことを前提に行動するつもりはない。


《00:00:10》


 十秒。


 九秒。


 八秒。


 数字が減っていく。


 七秒。


 六秒。


 五秒。


 四秒。


 三秒。


 二秒。


 一秒。


 音が鳴った。


《休憩時間終了》


 正面の扉が開いた。


 その向こうには、白い通路が続いていた。


 PLAYER 09が立ち上がる。


「行こう」


 PLAYER 10がうなずいた。


 PLAYER 11は無言で通路へ進む。


 PLAYER 12は一度だけ息を吐き、歩き出した。


 PLAYER 04も続いた。


 俺は最後に部屋を出た。


 扉が閉まる。


 背後に、休憩の痕跡は何も残らなかった。


 六時間前と同じ白い壁。


 同じ照明。


 同じ無機質な空気。


 違うのは、俺たちが一人を失ったまま、次のゲームへ向かっていることだった。


 通路の先で、モニターが点灯した。


《B TEAM》


《NEXT GAME》


 その下に、ゲーム名が表示され始める。


 俺は歩みを止めなかった。


 ここで終わるわけにはいかない。


 PLAYER 06の死を無駄にしないため、というだけではない。


 俺自身が、生きてここから出たい。


 そのためなら、次も考える。


 疑うべきものを疑い、信じるべきものを見極め、自分の選択をする。


 正解が分からなくても、選ばなければならないときは来る。


 俺はモニターに目を向けた。


 次のゲームが、始まろうとしていた。

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