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僕の妻が猫になった  作者: 穏世青藍


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3/3

妖精と猫 

 今から遡ること、7年前・・・。

 真夏の満月の晩でした。

 近くには幅の広い川があり、そこを通った風が、ひんやりとして、辺りを包み込んでいました。

 満月からは辺りを照らす、優しい黄色い光。

 ある広大なお屋敷のお庭には、綺麗なガーデニング。

 そして、鉢植えに入った、月下美人の花々。

 お屋敷のお庭の中には10匹の猫たち。

 あっちこっち、駆け回る猫もいれば、夜ご飯を食べている猫もいる。

 そして、今年生まれたの4匹の子猫たちに毛繕いしてあげている猫たちもいる。

 皆、とってもくつろいでいる。

 そのお屋敷の主が、近所中の方々を集めて、 月下美人 の咲いていくところを一緒に見ておられました。

 月下美人 とは、年に一度、夏から秋にかけて夕方から真夜中までに咲く、白い大きなお花です。

 香りが強く、甘いです。


 道隆(お屋敷の主):段々と、咲き始めてきたので、   

          カメラをお持ちの方々は、こち

          らで撮影して下さい。

          お菓子やお飲み物は、こちらに

          用意してございますので、よろ   

          しければご自由にお召し上がり

          下さい。


 近所の方々:ありがとうございます。

       毎年、道隆さんの 月下美人 をカメ

       ラに収めることを楽しみにしておりま

       す。

       お菓子やお飲み物など、いつもすみま

       せん。

       有難く頂戴致します。


 カメラやスマトフォンをお持ちの近所の方々が、ゆっくりと、お庭の 月下美人の 元へ、近づき始めた。

 撮影されない方々は、用意されているお菓子や飲み物などの元へ行った。

 その中から、道隆の方へと進み出てくる、4人の男性陣。

 道隆の側まで来ると、ある一人の男性が口を開いた。 


 実資さねすけ:ところで、道隆さん。

         この生まれたばかりの子猫たち

         は、どうされるのですか?

         もし、どなたかにお譲りするので

         あれば、私にいただけませんでし

         ょうか・・・?

 

 道隆と、その4人の男性陣は、何となく、子猫たちの方を向いた。

 親猫たちは、何かにい付いたのか、こちらをじっと見つめていた。


 道隆:あぁ・・・。

    そうですね・・・。

    どなたか猫好きな方に、お譲りしたいと思っ

    ておりました。

    実資さねすけさんが、可愛がって下され

    るというのであれば、お譲り致します。

    どの子猫がよろしいでしょうか・・・?


 道隆は、本当は手放したくは無い。

 言葉の切れが悪かった。

 でも、4匹も子猫が増えてしまうのは、困るので、 仕方ない・・・ と思って、観念した。


 すると、次々と、他の男性も話し出した。

 

 俊賢としかた:私もよろしければ、お譲りして欲

         しいのですが・・・?

          


 重光しげみつ:私もよろしければ、お譲りして欲

         しいです・・・。


 

 道隆は、 そうかそうか と、頷いた。

 うちの子たちが、もらわれていく・・・。

 何となく、しんみりしてしまった。

 でも、仕方が無い。

 猫ばっかり、そんなに飼ったら、目が行き届かない。


 道隆:皆様、そんなに猫好きな方々とは、知りませ

    んでした。

    是非、お好きな子猫からお連れ下さい。


 俊賢としかた重光しげみつ:ありがとうご

                  ざいます。


 もう一人が、おずおずと、道隆に尋ねた。


 顕光あきみつ:私もお譲りして欲しいのですが、

         家内がなんと申すのか分からない

         ので、帰ってから、じっくりと話

         して、良ければ、頂いてもよろし

         いでしょうか・・・?


 嗚呼・・・。

 最後の一匹まで・・・。

 そう思うと、お譲りするのを迷いだした。

 でも、いいのだ。

 きっと、これでいいのだ。

 望まれてもらわれていくのならば、きっと、大切に育ててもらえるだろう。

 

 道隆:分かりました。

    急いではおりませんので、ゆっくりと奥様と

    話し合われて下さい。


 顕光あきみつと話している間に、実資さねすけ俊賢としかた重光しげみつが、子猫たちの側により、じっと見つめていた。

 

 親猫たち:シャー 。

      シャー 。

      シャー 。

      シャー・・・。

 

 もの凄い剣幕で、親猫たちが、威嚇し始めた。

 それをよそに、 ごめんよぉ・・・。大切にするからな。ごめんよぉ・・・。 と言って、思い思いの子猫を、一匹ずつ抱え上げた。

 親猫たちは、子猫を抱え上げた人たちの周りをぐるぐると回り始め、猫パンチをしたり、かじったりひっかき始めた。

 そこへ、道隆と顕光あきみつがやってきた。

 

 道隆:最後のこの子でよろしいでしょうか・・・?


 顕光あきみつ:はい。

         ありがとうございます。

         では、追って連絡致します。


 そういうと、顕光あきみつは、最後の子猫を抱き上げた。

 親猫たちは、狂ったように シャー シャー と威嚇し続けた。

 その親猫たちを、道隆は、可愛そうに思って、涙が出そうになった。

 実資さねすけ俊賢としかた重光しげみつは、子猫を抱きかかえたまま、その場を去って行った。

 そして、ベランダの椅子に座って、一緒に 月下美人 を眺めていた。

 子猫たちは、 ミュ~ ミュ~ ミュ~ ミュ~・・・ と消え入りそうな声で泣いていた。

 顕光あきみつは、親猫たちに、最後の子猫を返してあげた。

 そして、 明日、迎えに来るからな と言って、その場を去って行った。

 親猫たちは、その最後の子猫を口でくわえると、その場を とととととととと・・・ と去って行った。

 道隆は、申し訳なさで、側に寄ることが出来なくなっていた。




 真夜中になった。

 近くから、川のせせらぎが聞こえてくる。

 月下美人 が、咲き乱れている。

 月明かりの元で、静かに静かに、ゆっくりと開花していた。

 沢山の鉢植えが並ぶ、道隆のお屋敷のお庭では、人々が、感嘆の声を上げていた。


 近所の方々:毎年ですけれども、本当にお綺麗で、

      圧巻の風景ですね。


 道隆:喜んでいただけて、嬉しいです。


 ・・・そんなやりとりが、表のお庭であった。




 裏のお庭。

 沢山の花々が眠りについている。

 辺りは、川のせせらぎが、表のお庭より近くに感じる。

 そして・・・。

 親猫たちが、月に向かって、 にゃ~ にゃ~ ・・・ と悲しそうに泣いておりました。

 その目には涙が溢れていました。

 突然、離されてしまった、3匹の子猫たち・・・。

 それを思うと、心が、引きちぎれそうです。

 にゃ~ にゃ~ ・・・。

 最後の1匹を、大事に大事に、体の下に、隠していました。

 もう、この子猫だけは、取られたくないと、必死でした。

 すると、何やら、小さな声が、近づいてきました。

 親猫は子猫を口にくわえると、木の陰に隠れました。

 そこへ、空をゆっくりと何かが飛んできました。

 親猫は、じっと、見つめました。

 人間の言葉を話している・・・。

 さすがに裏のお庭は暗いので、人間だと、所々、月明かりで、辺りの様子が分かる位。 

 でも、そこは、猫目。

 しっかりと、その姿を捉えました。

 妖精でした。

 妖精が、2匹いました。

 お花の葉っぱに舞い降りて、腰を休めている。

 そして、何やら、こそこそと話し出した。

 

 妖精1・懐仁やすひと:後もう少しだよ・・・。

 

 妖精2・定子:はい・・・。

       ありがとうございます・・・。


 妖精1・懐仁やすひと:今、僕が、月下美人の雫

             (しずく)を取ってくるか

              らね。

             ここで、待っていてね。

    

 妖精2・定子:お待ちしております・・・。


 

 人間じゃ無かった・・・。

 親猫たちは、安心しました。

 何か、疲れ切って見える・・・。

 大丈夫かなぁ・・・。

 話しかけてみようか・・・。

 

 親雌猫・少納言:あの・・・だにゃん。

         どうされたのですかだにゃん。


 妖精2・定子:あっ・・・。


 親雄猫・棟世むねよ:何か、お困りのことでもご

            ざいますかだにゃん。


 妖精2・定子:誰もいないかと思っていた

       わ・・・。


 親雌猫・少納言:それは、すみませんだにゃん。


 子猫・小馬こま:ミュ~ ミュ~ ・・・。


 妖精2:あら、子猫。

    可愛らしいわね。


 親雌猫・少納言:ありがとうございますだにゃん。

         ところで、何故、このお家に、妖

         精様がいらっしゃったのですかだ

         にゃん。

         お疲れのご様子ですし・・・だに

         ゃん・・・。


 妖精2・定子:気を使って下さって、ありがとうござ

       います。

       お宅のお庭に不法侵入して、申し訳ご

       ざいません・・・。

       私は、病に伏せっております。

       月下美人の雫 を飲むと、治るという

       言い伝えを聞いて、ここまで参りまし

       た。

       先ほど、私とともにいた妖精は、私の

       夫になります。

       今、 月下美人の雫 を採取しに行って

       おります。

       どうか、 月下美人の雫 を私にお分

       けいただけませんでしょうか・・・?

 

 親雌猫・少納言:もちろん!!!

         どうぞ、お持ち下さいだにゃん。


 親雄猫・棟世むねよ:葉っぱの上では、バラン

            スを取るのにお疲れでしょ

            う・・・だにゃん。

            どうぞ、草むらへお降り下

            さいだにゃん。


 妖精2・定子:そうですわね。

       そうさせていただきますわ。

 

 すると、妖精1・懐仁やすひとが、 ふわふわ と、重たい荷物を持って、こちらへ帰ってきた。

 側に猫たちがいるのを、 かっ とした目を見開いて、威嚇した。

 ぷんぷん 怒っていた。

 お花の葉っぱの上にいるはずの妖精2・定子がいない・・・。

 慌てて周囲を キョロキョロ し始めた。

 そして、草むらにいる妖精2・定子に気づき、 ゆらゆら と飛んできた。

 すると、妖精2・定子の前へ、その重たい荷物を広げた。

 出てきたのは、もちろん、 月下美人の雫。

 そして、小さな葉っぱの上に、なみなみと注いだ。


 妖精1・懐仁やすひと:さぁ、定子。

             これを飲むんだ。

             きっと、良くなるよ。

  

 妖精2・定子:ありがとうございます・・・。

       きっと、良くなりますわ。


 そう言うと、妖精2・定子は、両手で 月下美人の雫 が入った葉っぱを持ち、 ゆっくり と飲み干した。

 

 妖精1・懐仁やすひと:どうだい?

             苦かったかい?

             効き目が来るまでは、も

             う少しかかるかもしれな

             いから、ここで、ゆっく   

             りさせていただこうか。

 

 妖精2・定子:はい・・・。

       何か、清らかな味わいが致しました。

       効き目は・・・、もう少し、お待ちく

       ださい・・・。


 そう言うと、妖精達は、辺りを キョロキョロ 見回した。

 そうして、妖精1・懐仁やすひとは、猫たちから遠くの方へ行こうと言い出した。

 でも、妖精2・定子は、猫たちとお話ししたいと、言い出した。

 妖精1・懐仁やすひとは、妖精2・定子に、とっても甘い。

 そして、妖精2・定子は、妖精1・懐仁やすひとをとっても慕っている。

 おしどり夫婦だ。

 妖精1・懐仁やすひとは、やれやれ・・・ と思い、猫たちに警戒しながら、気持ち半ば距離を取って、そこに荷物を置きだした。

 妖精1・懐仁やすひとは、猫たちに きっ と目を見開いた。

 猫たちは、 ひぇ~ っと、怯えた。

 妖精2・定子は、着物の懐から巾着を取り出した。

 すると、その中から、小さな小さな小槌が現れた。

 そして、その場に向かって、その小さな小さな小槌を振り始めた。

 

 妖精2・定子:むしろたたみと茵

       (しとね)と円座わろうざと高座

       (たかくら)をここへ。

       酒と飲み物とさかなとお菓子を

       ここへ。


 そう言って、後ろへ下がった。

 すると・・・。

 辺り一面に、宴会セットが出来上がった。

 そして、何も驚かずに、妖精達は、大靴おおくつと金剛草履を脱いで、むしろへと上がった。

 そして、妖精1・懐仁やすひとは、繧繝縁うんげんべりの畳の上にしかれた赤字小葵錦あかじこあおいにしき色のしとねの上に、座った。

 そして、妖精2・定子は、高麗縁こうらいべりの畳の上にしかれてた唐錦からにしきしとねの上に座った。

  猫たちは、 何があったんだにゃぁ~ 何があったんだにゃぁ~ と言って、驚いて、その周りを走り回っていた。



 ちなみに、むしろは、藁やイグサなどで編まんだゴザのことです。

 しとねは、座布団です。

 円座わろうざは、イグサなどの植物を円形に編んだ座布団です。

 高座たかくらは、足つきの台や椅子です。

 大靴おおくつは、天皇が外出時にはかれる木製の靴です。

 金剛草履は、身分の高い女性が履かれていました。

 繧繝縁うんげんべりは、へりの部分に、朱・青・緑・紫などの原色を用いて、菱形や花菱などを織ったものです。

 赤字小葵錦あかじこあおいにしきは、濃い朱色の生地に、小葵という模様を織ったものです。

 高麗縁こうらいべりは、白地に黒糸で雲形や菊花などの模様を織ったものです。

 唐錦からにしきは、高級な厚織の生地です。

 


 話はもどります・・・。



 妖精2・定子:さぁ、こちらへ、おいでになさって。

       一緒に宴を楽しみましょう。


 猫たちに向かって声を掛けた。

 猫たちが、恐る恐る近づいてきた。 

 妖精1・懐仁やすひとは、困った顔。

 猫たちが飛びかかってきたら、いつでも退治してやる と、意気込んでいた。

 猫たちは、ばつが悪そう。

 

 親雌猫・少納言:お言葉に甘えて、ご一緒させてい

        ただきますにゃぁ~。


 親雄猫・棟世むねよ:ありがとうございます。


 子猫・小馬:みゃぁ~。


 そろりそろり・・・。


 むしろに上がり、円座わろうざに座った。

 それにしても凄い宴会セット。

 美味しそうなお酒や飲み物やさかなやお菓子。

 何か、妖精さん達は、凄い方々らしい。

 それにしても、あの小さい小さい小槌は何なんだろう・・・?

 お訊きしても良いのか、迷った。

 でも、好奇心にはかなわなかった。

 

 親雌猫・少納言:あのぉ~・・・だにゃぁ・・・。

         その、小さい小さい小槌は、何な

         のでしょうか・・・?


 妖精達が、顔を見合わせた。

 妖精1・懐仁やすひとは、 しまった・・・ と言う表情をした。

 親雌猫・少納言は、やっぱりお訊きしてはならなかったのだと、後悔した。

 でも、妖精2・定子は、 ふふふ・・・ と笑った。

 

 妖精2・定子:あぁ、この小槌ね?

       これは、 打ち出の小槌 と言って、振

       りながら願い事を言うと、何でも叶え

       てくれるのよ。

       凄いでしょう?

       月下美人の雫も出せたのだけれども、

       実際に咲いているところを見てみたい

       と思って、探して、こちらのお屋敷を

       訪ねたのよ。


 親猫たち:おぉ~。


 目をきらきらを輝かせて、触ろうと手を伸ばした。

 

 妖精1・懐仁やすひと:これっ!!!


 親猫たち:ひぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ・・・。

      ごめんなさいだにゃぁ!!!

      ごめんなさいだにゃぁ!!!


 そう言って、後ろに、下がった。

 とっても気まずくなった。


 妖精2・定子:誰でも最初はそうなるわ。

       いいのよ。

       気にしないでね。

       さぁ、一緒に、宴を楽しみましょう。


 親猫たち:でも・・・だにゃぁ・・・。

 

 だって、妖精1・懐仁やすひとが、こっちを鬼の形相で、睨んでるのだもの・・・。

 

 親雌猫・少納言・:私どものこの子猫が、明日、他

         のお家へもらわれていくのだにゃ

         ぁ。

         最後に、親らしく、うんと甘えさ

         せてあげたいのにゃぁ。

         ですから、ここで、おいとまさせ

         ていただきますにゃ。

         楽しかったにゃ。

         ありがとうございましただにゃ。

 

 そう言って、 とぼとぼ と、帰ろうと後ろを振り返った。


 妖精2・定子:何ですって!!!

       子猫がもらわれていってしまうのです

       って?

       大変!!!

       貴方。

       何とかして差し上げて!!!


 妖精2・定子の無茶ぶりで、妖精1・懐仁やすひとは、 えぇぇぇぇぇぇ~!!! と言った。

 でも、愛する妻のために、何とかしなくては・・・ と、考えた・・・。

 そして、こう言った。


 妖精1・懐仁やすひと:今宵は宴である。

             何か、気の利いた催し物

             をしておくれ。

             見事、妻が気に入れば、

             何でも願いを叶えよう。


 親猫たちは、 わぁぁぁぁぁぁぁ~!!! と喜びの声を上げた。

 もし、気に入って貰えたのならば、この子猫にとって素敵な思い出を作ってあげられる。

 やる気満々になった。

 そこで、作戦会議。

 

 親雄猫・棟世むねよ:私が白居易(白楽天)の

            漢詩をそらんじてみせるに

            ゃ。

            きっと、お気に召すにゃ。

            どうかにゃ?


 親雌猫・少納言:良い考えだにゃ。

         それでいきましょうにゃ。

         頑張ってくださいにゃ。


 親雄猫・棟世むねよが、妖精達の前で、白居易(白楽天)の漢詩を見事、そらんじた。

   

 妖精達は、驚きを隠せずに、じっと聞き入った。

 そして、どちらとも、とても喜んだ。

 すると、妖精1・懐仁やすひとが、 こちらへ来い と、手招きした。


 妖精1・懐仁やすひと:よくやった!!!

             褒美として、何でも願い

             を叶えてやろう。

             遠慮無く申せ。

 

 親雄猫・棟世むねよ:ありがとうございますだ

            にゃ。

            それでは、美味しい美味し

            いお魚を、下さいだにゃ。

            この子猫の旅立ちに、記念

            となるお魚をくださいに

            ゃ。


 親猫たちは、 うるうる した目で返事を待っていた。

 

 妖精1・懐仁やすひと:よしっ!!!

             分かった!!!

             定子。

             出してさしあげなさい。


 妖精2・定子は、打ち出の小槌を、振った。

 

 妖精2・定子:美味しい美味しいお魚をこちらへ。


 新鮮な鯛が現れた。

 綺麗なお皿に盛り付けされている。

 もう、美味しそう。

  

 妖精1・懐仁やすひと:さぁ、召し上がれ。

              

 親猫たち:ありがとうございますだにゃぁぁぁぁぁ

      ぁぁぁぁ~!!!


 がむしゃらに猫たちは食べ出した。

 にゃぁ~ にゃぁ~ 美味しいと言っている。

 子猫も、嬉しそう。

 その様子を見て、妖精達は、 良かった 良かった と喜んだ。

 沢山食べて満足したのか、喉を ゴロゴロ ならしたり、お腹を空に向けたり、毛繕いをしたりしている。

 そして、親雌猫・少納言が、妖精達に、お礼をしたいにゃ と言った。

 もちろん、 妖精たちは、是非に と受け入れた。

 おもむろに、親雌猫・少納言が、季節の移り変わりの素敵な風景を朗々と歌い上げた。

 

 親雌猫・少納言:春はあけぼのだにゃ。 

        ようよう白くなりゆく山ぎは 少し

        明かりて 紫立ちたる雲の細くたな

        びきたるだにゃ。

 

 妖精達は感心した。

 続けよ と、先を促した。


 親雌猫・少納言:夏は夜だにゃ。

         月の頃はさらなりだにゃ。

         やみもなお 蛍の多く飛びちがい

         けるにゃ。

         また ただひとつふたつなどして 

         ほのかに光りてゆくもをかしだに

         ゃ。

         雨など降るもをかしだにゃ。


 そして、秋・冬と、をかしと思うことを歌った。

 妖精達は、とても喜んだ。

 そして、 何か、褒美を取らせる と言った。

 何が良いか と聞かれたので、親雌猫・少納言は、 親子のおそろいの首輪がいいにゃぁ~ と、言おうとした。

 すると、子猫・小馬が突然、言葉を発した。

 それまで、 にゃぁ~ や みゅぅ~ しか言えなかったのに。

 

 子猫・小馬:その打ち出の小槌をもう一つ出して私

      に下さいだにゃぁぁぁぁぁぁぁ~!!!


 妖精達は はっ とした。

 そうだ。

 そうだ。

 そうなんだ。

 何も、打ち出の小槌は一つだけでなくても良いのだ。

 なんと、この子猫は、頭が良いのだろう・・・。

 でも、こんな神がかりな代物を、やすやすと、あまり知らない猫たちにわたしてもいいものなのだろうか・・・?

 どうしよう・・・。

 でも、明日には、この猫たちは離ればなれになってしまう・・・。

 何にもしてあげられなかった・・・。

 この哀れな猫たちが可愛そうになって、そうしてあげようと思った。

 

 妖精1・懐仁やすひと:う~ん・・・。

             願いを叶えよう。

             でも、約束をしておく

             れ。

             決して、悪いことには使

             ってはならない。

             もし、悪いことに使った

             のならば、すぐにでも取

             り返しに来るからな。

             いいか?

             分かったな?


 そう言うと、妖精2・定子の方を向き、 打ち出の小槌を出すように 指示を出した。

 妖精2・定子が鬱での小槌を振り、 あともう一つこの打ち出の小槌をこちらへ と言った。

 すると、 打ち出の小槌 が現れた。

 とても綺麗な金色。

 それを、猫たちに渡した。

 

 猫たち:ありがとうございますだにゃぁぁぁぁぁぁ

     ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

 

 そう言って、打ち出の小槌を受け取った。

 さて、どうしようか・・・?

 ねこねこ家族会議が始まった。

 


      ep.3 妖精と猫   終了


 ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

 次回ep投稿は未定です。

 遅くなって申し訳ございません・・・。

 少しずつ書いております。

 次回投稿致しましたら、活動報告にて連絡致します。

 お読みいただけると嬉しいです。

 お待ちしております。


        

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