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僕の妻が猫になった  作者: 穏世青藍


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1/3

何故か猫

 道長:おはよう、皆。

    お水を沢山吸ってね。

    今日も綺麗だね。


 そう言うと、如雨露じょうろで、お水をたっぷりとお花たちにかけていった。

 色とりどりのお花たちは、とても、気持ちよさそうに、ゆらゆら揺れている。

 今は夏の時期。

 お空は雲一つ無いくらい青々としている。

 み~ん みん みん・・・。

 森から蝉たちの声が響いている。

 ちりん ちりん ちりん・・・。

 お家から、風鈴の可愛らしい音が響いている。

 そして、 た た た た た た た た・・・。

 お家から、朝ご飯を支度する音が響いている・・・?

 

 あれ?


 道長は、お家の中に耳を傾けた。

 音がしない。

 どうしたのかなぁ・・・? と、台所をのぞき込んだ。

  

 道長:お~い。

    もう、朝ご飯が出来たのかぁ?


 し~ん し~ん し~ん・・・。


 返事がない・・・。

 誰も、いないようだ。

 やれやれ・・・ と、散らかった台所を片付け始めた。


 しゅっ しゅっ しゅっ・・・。

 こと こと こと・・・。

 

 雑穀米の美味しそうに炊けている香りがする。

 お味噌汁の心落ち着く匂いもする。

 隠元いんげんのごま和えの小鉢がある。

 そして・・・。

 

 道長:おぉ~。


 そう言って、一つ、だし巻き卵をつまんでパクッと食べた。


 道長:う~ん・・・。

    やっぱり、式部のお料理は、世界一だな

    ぁ・・・。

 

 俺って、いいお嫁さんをもらったなぁ・・・ と、感慨にふけっていた。

 それにしても、式部は何処に行ったのだろう・・・?

 お手洗いかなぁ・・・?

 台所を離れるときには、 必ず、ガスは止めてから離れるように と、何度も注意しているのだけれどもなぁ・・・。

 困ったちゃんだ・・・。

 ガスを止めてから、うろうろし始めた。

 

 道長:おぉ~い・・・。

    おぉ~い・・・。

    どこにいるんだぁ・・・?

    おぉ~い・・・。


 何の返事もない・・・。

 お隣さんに、回覧板でも、出しに行ったのかなぁ・・・?

 

 玄関に、サンダルが無いか、確認しに行った。


 すると・・・。


 ごそっ ごそ ごそっ・・・。


 何かの音がする。

 式部のお部屋からだ。

 なぁ~んだ、お部屋にいたのかぁ・・・。

 

 道長:どうしたぁ? 

    大丈夫かぁ?

    火は消してから離れなさい って、言ってる

    だろう?


 と言って、式部のお部屋のふすまを開けた。

 

 し~ん し~ん し~ん・・・。

 

 だぁれも、いない・・・。


 あれっ・・・?


 確かに、式部のお部屋から、音がしたはずなのに・・・。

 きょろきょろ とあたりを見回した。

 妻とは言え、あんまり、お部屋の中を見るのは、悪いかなぁ・・・? と、思って、心が暗やんだ。

 あ”~・・・。

 まったく・・・。

 脱ぎっぱなしにして・・・。

 

 どうやら、式部は、服を脱ぎっぱなしにする癖があるんだなぁ・・・ と思い、やれやれ・・・ と、片付け始めた。

 ん・・・?

 なぁ~んと・・・ 下着まで出てきた。

 新婚当時は、それなりに、夜な夜な愛を確かめ合ってきた。

 でも、36年も経つと、もはや、そういうことは、言い出しにくくなってきて、モジモジしてしまう。

 ある意味、熟年夫婦のお年頃だ。

 ぽ ぽ ぽ・・・ と、頬がほてるのを感じた。

 は は は 恥ずかしい・・・。

 何となく、式部のお香の香りと、ぬ ぬ ぬ 温もりを感じられた・・・。

 お お お 俺は、男だぞぉ・・・。

 なぁ~んてことだぁ・・・ と、ドギマギしている心を隠したかった。

 こんなことで、にまにましてしまう、自分にあきれてしまった。 

 俺たちは夫婦なんだから、いいんだぁ!!! と、自分に言い聞かせた。

 そして、洗濯籠に、脱ぎ捨ててあった、服などを入れた。

 

 道長:それにしても・・・。

    

 そう言うと、頭をかしげた。

 お隣さんに回覧板を置きに行ったにしては、遅いなぁ・・・ と思った。

 また、おしゃべりでもして、花を咲かせているのかなぁ・・・・と、苦笑した。

 どれ、迎えに行ってみるか・・・?

 玄関の方へ歩いて行って、下駄に履き替えた。

 夏は、やっぱり、下駄に限る。


 からから と下駄を鳴らして、玄関の外に出た。

 からっとした、爽やかな風が、 ひゅ~ っと、側を、通っていった。

 比較的、涼しいかもしれない・・・。

 梅雨がまだ終わっていないから、今日にでも雨になるかなぁ・・・?

 さっき、お花たちにたっぷりとお水をあげてしまったことを、後悔した。

 ごめんなぁ・・・ と、もごもご話しながら、お隣さんのお家まで、5分ほど歩いて行った。

 道長のお家は、緑豊かな田舎町の外れにあった。

 道長と式部は、職場恋愛で、そのまま結婚までゴールインした。

 いまでは、もう、すっかり、おしどり夫婦になっている。

 子供は女の子の 彰子しょうこ堅子かたこの二人いる。

 二人とも、もう、結婚をして、家を出て、毎日子育てに奮闘している。

 式部の血を引いたのか、文才に秀でている。

 なんと、和歌を宮内庁へ詠進えいしんし、見事、詠進歌えいしんかとして、宮中の歌会始うたかいはじめでも、朗詠ろうえいされたことがある。

 親として、とっても鼻高々だ。


 ちなみに、詠進えいしんとは、指定されたお題を、一般の方々が、宮内庁へ和歌を提出することです。

 そして、詠進歌えいしんかとは、その提出された和歌を指します。

 歌会始うたかいはじめとは、鎌倉時代中期から始まりました。

 明治時代以降は、一般国民の和歌も詠われるようになりました。

 天皇陛下の御前で披露されるという、素敵な文化です。

 朗詠ろうえいとは、平安時代からの伝統のメロディーに載せながら、歌われます。

 複数人で朗々と和歌を詠み上げられます。


 ・・・、と、文化的な家族になりました。


 道長と式部は同じ役場で、色々な科を担当して、知恵を出し合ってきた仲間だった。

 式部は、その傍らで、執筆活動をしていた。

 出来上がると、道長に読んでもらい、感想や手直しをしてから、あちらこちらの出版社の公募に応募していた。

 とても、面白いできだった事もあったけれども、そんなに、未だ、鳴かず飛ばずにいる。

 読んでくださった方が、楽しんでくれれば、それでいいのよ と、寂しそうに笑う妻を、励まし続けてきた。

 いつかは、日の目を見させてあげたい・・・ と、道長も様々な本を読みあさって勉強をしてきた。

 最近では、 Web小説 に投稿して、PV と ユニークユーザー と言うものを気にしては、一喜一憂している。

 感想など頂いた日には、とても嬉しそうに鼻歌を歌ってお料理をする。

 未だ レビュー と言うものを頂いたことがないと言って、寂しそうだが、他の投稿している方々の作品を読むと、 まだまだ、足下にも及ばない と、とたんにやる気を出す。

 すると、 カップラーメン と 冷凍食品 が食卓に並んでしまうこともあったので、よく、喧嘩になった。

 勿論、 カップラーメン と冷凍食品 は嫌いじゃ無い。

 とっても、美味しい。

 たまに、無性に食べたくなる。

 好きなものは、 豚骨ラーメン と キノコパスタ と エビピラフ だ。

 けれども、やっぱり、妻の味が恋しくなる。

 それに、子供達の成長にも良い、薄味で無添加・無香料 を気にしてしまった。

 も も も も も 勿論、私だって、食事を作ったりもした。

 それに、子供達も、 妻のお料理の本や雑誌を買ってきては、楽しそうに作って、助けてくれた。

 良い家族になったなぁ・・・。

 俺って、果報者だぁ・・・。


 そう思いながらずんずんと歩いて、お隣の棟世むねよさんのお宅に到着した。

 年の割には、速いペースで歩ける。

 毎日、あちこちへと歩く習慣が出来ているから、足腰が鍛えられているらしい。

 息切れもしていない事を、誇らしく思っている。

 棟世さんの娘の小馬こまちゃんが、お庭で地域猫と遊んでいるのが見えた。

 とてもなついているようだ。

 お腹をお空に向けて、小馬ちゃんに、なでなでしてもらっていて、気持ちよさそうだ。

 耳が、さくらカット(地域猫にする為に耳にV字にカットした、去勢済みのサインです)されている。

 ごめんねぇ・・・ と、耳を見る度に、心がチクチクする。

 でも、命を奪うよりも、断然、こっちの方が、貓たちにとってはいいのだ。

 だから、していることは、間違っていない。

 きちんと、一生を終えるまで、地域猫として、野良猫たちを、お世話している。

 ご飯も、食べ残しの処理も、排泄物の処理も、地域で支えている。

 猫たちにとっては、天国だろう。

 だから、いいのだ。

 これで。

 でも・・・。

 私は、注射も大嫌いなくらい、痛そうなことには敏感に過剰反応を起こしてしまう。

 痛さを想像してしまうのだ。

 男のくせに、女々しいかもしれないが、苦手なものは、苦手なのだぁ~!!!

 じっと地域猫を見つめていた私を、小馬ちゃんがじっと見つめ返して、モジモジし出した。

 

 小馬:あのぅ・・・。

    道長のおじさま、どうなされたのですか?

    回覧板?

 

 道長:あっ!!!

    悪い!!!

    悪い!!!

    式部のおばちゃんが回覧板を持って、小馬ち 

    ゃんのお母さんに会いに来なかったかなぁ?

 

 小馬:う~ん・・・。

    まだ、いらっしゃってはいないはずなのです 

    が・・・。

    お母さんに聞いて参ります。

    少々、お待ちくださいね。


 道長:有難う。


 すると、小馬ちゃんは、と と と・・・ と、足早に、お家の中に入っていった。

 まだ、小学校に上がったばかりだ。

 これから、どんな夢を描くのだろう。

 それを、棟世さんと一緒に見守っていこう。

 楽しみだ。

 

 小馬ちゃんがお母さんを連れて、戻ってきた。


 少納言:式部さんは、今日は、まだ、いらしておられ

    ないです。

 

 そう言って、不思議そうな顔をされた。

 

 そっか・・・。

 じゃぁ、何処に行ったのだろう・・・?

 困ったなぁ・・・。


 私の、困った顔に気づいたのか、二人とも、顔を見合わせた。

 

 少納言:何か、お困りのことでも、ありますでしょうか・・・?

 

 小馬:お手伝いします。


 道長:有難うございます。

    とりあえず、もう一度お家で探してみます。

    じゃぁ、また。

 

 お互いに会釈をして、お互いお家へ帰っていった。

 

 それにしても、式部のやつ、何処で油を売っているんだか・・・?

 からから てくてく ずんずん と歩いて、ようやくお家が見えた。

 お花の香りが風に乗って、私を包んだ。

 

 道長:ただいまぁ。


 式部:おかえりなさいだにゃぁ~。


 式部の声がした。

 なぁ~んだ、何処にいたんだぁ? と、思いながら、声のする居間の方へ向かった。

 

 道長:お前、探しまくったんだぞぉ~。


 式部:ごめんだにゃぁ~。


 ・・・?

 居間には、式部がいなかった。

 あれっ・・・?

 確か、居間から声がしたはずだったんだけれどもなぁ・・・。

 何処だぁ・・・?

 キョロキョロしていると、窓の側に、可愛らしい三毛猫が一匹いた。

 窓から、地域猫がお家の中に入ってきたらしい。

 

 道長:ごめんなぁ・・・。

    お家の中には、あんまり入ってきてほしくな

    いんだよぉ・・・。 

    ごめんなぁ・・・。

 

 と言って、三毛猫を ふわっと 優しく持ち上げた。

 にゃぁ~ にゃぁ~ にゃぁ~ にゃぁ~ と、叫んでいる。

 手足をバタバタとさせて、手をかみかみする。


 道長:ごめんなぁ・・・。

    ごめんなぁ・・・。


 そう言って、三毛猫を抱えたまま、玄関へと向かった。

 ずっと、三毛猫は にゃぁ~ にゃぁ~ にゃぁ~ にゃぁ~ と、言っている。

 心が、水色になっていく。

 

 嗚呼、俺、悲しい・・・。

 ごめんなぁ・・・。

 ごめんなぁ・・・。


 すると、 助けてにゃぁ~ 助けてにゃぁ~ 助けてにゃぁ~ と、聞こえてくるようになった。

 

 嗚呼、俺、とうとう、心が痛くて、猫の声が分かるようになったのかもしれない・・・。

 

 道長:式部~!!!

    式部~!!!

    式部~!!!


 半べそをかきながら、三毛猫を抱えたまま、式部を探し出した。

 すると・・・。


 式部:何だにゃぁ~!!!

    何だにゃぁ~!!!

    何なんだにゃぁ~!!!

 

 あれっ・・・?

 声がとても近くでするぞ?

 あれっ?


 キョロキョロしながら声の方を探した。

 ・・・?

 声は、俺の手の中から聞こえてきた・・・?

 

 そんな訳ない・・・ と、パニックになった。

 俺は、とうとう、幻聴が聞こえてくるようになったのか・・・。

 どうしよう・・・。

 怖いよぅ・・・。

 式部、何処だよぉ・・・。


 式部:ここだにゃぁ~!!!

    ここだにゃぁ~!!!

    ここにいるのにゃぁ~!!!


 道長:うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ

    ぁぁぁぁぁ・・・!!!


 思わず、抱えていた三毛猫から、手を離してしまった。

 三毛猫は、 ひらり と、軽々と、畳の上に飛び降りた。

 そして・・・。


 シャーッ とした。


 お お お お お 怒っている・・・。

 だって、お前、喋っただろう?

 そりゃ、びっくりするだろう?

 あっ!!!

 それどころでは無い!!!

 式部は何処だ?


 道長:式部~!!!

 

 式部:にゃぁ~!!!


 嗚呼・・・。

 俺、とうとう、妻恋しさに、幻聴を起こす、依存男になってしまった・・・。

 なぁ~んてことだぁ・・・。

 

 式部:にゃぁ~!!!

    道長、助けてにゃぁ~!!!

    私、猫になっちゃったにゃぁ~!!!


 はっ・・・ と、やっと、点と点が結びついた。

 恐る、恐る、畳の上で にゃぁ~ にゃぁ~ 言っては、俺の足にしがみつく三毛猫を、じ~っと見つめた。

 そして、三毛猫を抱き上げて、顔をじっと見つめた。

 すると、三毛猫は目を逸らした。

 妻は見つめ続けると、恥ずかしくなって、いつも、目を逸らす。

 あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・。

 なぁ~んてことだぁ・・・。

 式部・・・、式部・・・、お前、式部なのか・・・?

 怖くて、声に出せなかった。

 しばらく、そのまま動かなかった。

 その間にも、三毛猫は にゃぁ~ にゃぁ~ 何か、言葉らしいことを言っていた。

 深く はぁっ・・・ と、息を吐き出してから、三毛猫におずおずと話しかけてみた。


 道長:お前・・・、お前は、式部なのか・・・?

    ち ち ち ち 違うよな・・・?

    違うと言ってくれ・・・。


 すると、三毛猫の目から、 じわじわ ぽたぽた はらはら 涙が溢れてきた。

 

 式部:助けてにゃぁ~!!!

    助けてにゃぁ~!!!

    どうか、お願い!!!

    道長、助けてにゃぁ~!!!


 道長:うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ

    ぁぁぁぁぁ・・・!!!


 どぉ~する!!!

 どぉ~する!!!

 どぉ~する!!!

 どぉ~する、俺!!!


            ep.1 何故か猫 終了



 最後まで、お読みいただき、有難うございました。

 よろしければ、次回作もお読みいただけると嬉しいです。

 次回作は、まだ、未定です。

 投稿致しましたら、活動報告をさせていただきます。


 


  

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