回想編⑯ 恐怖、再び
そんなあたしのキュンキュンモードも束の間だった!
逃げてきた森の方から、耳を疑いたくなるような大きな音が近づいて来たので、そちらを凝視した。
バキバキバキバキッ!
ガガガガガッ ドーーーーーン!!!
それは、森の木々が、次々と倒されていく音だと気付いた時には、こちらに真っ直ぐ向かって来る一つの影が、薄らと森の奥からその輪郭を現していた。
ガタガタガタガタ!
楓はそのシルエットに声を震わしながら、呟いた。
赤いショートボブがその震えと共振し、小刻みに揺らしながら、
「あ、あいつが来たわ、、、」
目の前からは、迫り来る恐怖!
そして、背後は闇で谷底が見えぬ断崖絶壁が広がっている、、、
この絶体絶命の状況に、絶望したのか?
下を俯いたまま、動かなくなった楓。
そんな中、あたしはこの状況で自問自答を繰り返していた。
手の震えを必死に抑えながら、、、
(ど、ど、どうする楓、あんたは香徠の里の希望なんだよね?
ここでもし、命を落とす事になっちゃったらどうなる?
あたしに期待してくれてた香徠の里の人達は、残念がるかなぁ~?
いつも、自分の事の様に喜んでいたお父さんは、怒っちゃうのかなぁ~?
いつも、あたしを愛してくれてたお母さんは、泣き崩れちゃうのかなぁ~?)
なぜだろう?いつもなら、絶対に考えない様な事が思考を巡る、、、
これが、死ぬって事なの、、、
『諦めの境地』にでも達したかの様な絶望感に陥った時!
一人の少年の笑顔が、あたしの脳裏に過ぎった。
そう、その少年とはどんな時も一緒だった、よく知っている幼い頃の秀の顔だった。
「ハッ!!!」
あたしはその幻影に一瞬、我に返り、隣にいる現実の秀の横顔を見た!
そこには、この絶体絶命の状況下でも、歯を食いしばり、忍者刀を構えた茶髪の幼なじみの少年の姿があった。
「はぁはぁー、楓! お前は俺が守る!守り切る!」
(はっ! 秀は、まだ諦めていない!!!
なのに、あたしったら、、、、、)
(アハハハハ、あたしってバカだよね! いつもは、なんでも直ぐにできちゃう癖に、、、
そんでもって、強がちゃったてさ。
いざ、窮地に追い込まれちゃったら、この有様だなんて、、、
情けないよ、、、
だから、いつも心のどこかで、この弱さをしまい込んでいたの。
奥深くに、、、
秀、以外の人前では、、、
で、でも今、なんだか分かった気がする、、
人間って、自分が他人にどう見られたいのか?じゃなくて、、、自分がどうしたいのか?の方が大切なんじゃないかって!
あははは、、、今頃、こんな事に気付いたなんて、遅いよね。
そう思いながら、楓は強く拳を握りしめた!
(そんなのいやだよ!
こんな所で死ぬのは、絶対に嫌っ!
いやっ!
死ぬ事よりも、これでお別れになっちゃう事の方が辛いかも、、、
そう貴方(秀)と、、、、、、)
そう思った瞬間!
あたしの胸の辺りに、身体の奥底より、湧き上がってくる炎の闘志の様なものを感じたわ!
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
楓は、俯いていた頭を上げて、両手の拳を強く握りしめ、天を見上げながら叫んだ!
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