■最終話 指先で紡ぐぼくらの・・・
それは、高2のとある日。
ミノリと席が隣同士になって、すぐの事だった。
チラリ左隣を盗み見ると、相変わらず赤い顔をして窓の外を見ているミノリ。
ククク。と小さく笑い、ハヤトはつまらない授業をやり過ごす為にノートに
何気なく落書きをしていた。
最初は、ドラえもんを描き、ジャイアンを描き、スネ夫を描いてみた。
(あれ。 意外に俺、うまいじゃん・・・。)
ドラえもんシリーズに飽きると、なんとなく自分の名前を書いてみた。
”後藤 速 ”
”後藤 速 ”
”後藤 速 ”・・・
ハンドルネームも書いてみる。
”mosso ”
音楽用語で ”速く ”という意味のそれ。
自分の名前と同じ言葉を見付け、メールアドレスなどにも使っていた。
ふと、ミノリのハンドルネーム ”グローブ ”を思う。
(グローブって、なんだ・・・?)
毎夜の会話の中で野球好きとかいう話は聞いたことが無かった。
ノートに書き出してみる。
”グローブ ”
”ぐろーぶ ”
”glove ”
”GLOVE ”
(・・・・・・ん??)
”G L O V E”
(・・・・・・・んんん???)
”G L O V E ”
”Goto Love ” ・・・?
(・・・・・!!!!!!!!!っ)
大きな音を立て机に突っ伏して、真っ赤になるハヤト。
さすがにその音に、ミノリが顔を向けハヤトを見ている。
『ゴトウ君・・・? 顔赤いけど、熱あるんじゃない・・・?』
そう声を掛けてくるミノリにノートが見えないよう、慌てて上半身で覆い隠す。
(・・・・・・まじ、スかぁ・・・・・。)
照れくさくて仕様がなくて、その後は一日、ミノリの顔を見れなかった。
とある秋の日。
教室の窓から、初秋のやわらかい陽が眩しく溢れる午後のこと。
指先で紡ぐぼくらの・・・
【おわり】
本編終了です。お目汚し失礼致しました。 引き続き、読み切りで【番外編1,2,3】【スピンオフ1,2】があります。 宜しければ、どうぞお付き合い宜しくお願い致します。