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昨日あんな目にあったのに勇者は今日もやって来た。
『今日はカレー粉の調合に挑戦しようと思うんだ』
自分の欲しいものは自分で。うん、正しい判断だね。
勇者はスパイスの一つ一つを嗅いだり、口にしたりしてその特徴をノートに書いていく。途中途中で麻痺した舌を戻すのはもちろん白湯。
スパイスの味見に3日かけ、分量を加減しながら調合すること一週間。ノートは4冊目に突入した。
毎日毎日、日中うちに居て、魔王討伐後に残った魔物の掃討はどうした?
『うーん、とりあえずこれを試して』
と差し出された混合物をひよこ豆のスープに投入した。
『ん~っ』
一口食べてなんとも言い難い微妙な表情になった。食べてみてと言うので、辛くないように鍋に残ったそれに、元々のスープを足して味見する。
「こ、これは……香りといい味といい……………カレーでない何か、だね」
『………やっぱり』
ガックリと膝を着いた。
『カレーではないけど好きな味だから、しばらくこの配合のスパイスで食事を楽しもうっと』
勇者は残ったそのカレーではない何かを平らげた後、同じ配合のスパイスを持って帰った。
そろそろ魔物退治に行け!で、二度と来るな!




