第24話 依頼
「どれどれ」
Sランク武器はもう不要なので、一応金にしておこうと思う。
使わない武器を持ってても仕方ないしな。
という訳で、俺は鍛冶ギルドに来ていた。
使っていた短剣の製作費はおおよそ8千万程。
それを最大限まで強化した物、11本使用――つまり8億8千万が妥当な価格となる。
これを四分の一にしても2億2千万。
とてもではないが、普通の武器屋では買い取り資金がないだろう。
そう思い、金の在りそうな鍛冶ギルドの買取窓口に出した訳だが――
「これは……まさかSSランクの武器かね!?」
武器をみた鍛冶ギルドの買取査定員が、そう声を上げる。
何故そう思ったのか謎だ。
「いえ、これはSランクですけど?」
「私の目を舐めて貰っては困る。私はこれでも20年間、この鍛冶ギルドに務めている。だからSランクの短剣を何本か見させて貰った事があるが……この短剣の持つ力はそれらを遥かに凌駕する。これがSSランクでなければ、他のなんだというんだね」
それは単に無強化品だったってだけだろうに。
どうやら彼は強化品を見たことがない様だ。
まあSランク武器自体が珍しい物な訳だし、その強化品を見たことがなくとも仕方ないか。
「これはきょう……」
強化と言おうとして、ある事に気付いて俺は咄嗟に言葉を飲み込んだ。
装備の強化はインベントリ内で行う仕様となっている。
だが、この世界にインベントリを持つ人間はいない。
――つまり、この世界で装備を強化できるのは俺だけって事だ。
まあ他にプレイヤーが居なければって話ではあるが。
「強烈。そう、強烈に大成功したんです!武器製作が。いやー、我ながら会心の出来と言うか」
これが完全なゲームなら問題ないが、生きた人間がいる世界で俺だけの能力を知られてもいい事など無い。
そう判断した俺は、咄嗟に苦し紛れの嘘で誤魔化す。
まあ芸術家なんかは傑作の一品みたいなの作ってるし、職人繋がりでたぶん行けるだろ。
たぶん。
え?
インベントリは買取時に結構見られてるけどいいのか?
流石にインベントリ位じゃ、身柄を狙われたりしない筈だ。
きっと。
「強烈な会心の出来ですか……それにしてもこれは……むむむ……」
査定員のおさっさんが唸る。
そういうのはいいから、早く買い取りしてくれ。
「ちょっと待っててくださいね」
「……」
査定員が短剣を持って奥に引っ込んでしまった。
まあ自分で判断出来ないから、偉いさんに確認しに行ったのだろう。
「お待たせしました」
「おお、君か」
暫くして査定員がゴツイ髭モジャの大男――ギルドマスターのアックスを連れて戻って来た。
どうやら彼に鑑定を頼んだ様だ。
「君の作品を見せて貰ったよ。確かにSSランク武器ではないが、これほどの完成度を誇るSランク武器を見るのは初めての事だ」
「自信作なんで」
「これならば、うちでの買取は20億と言った所になるな。だが……」
20億は想定価格の10倍となる。
まあ他に出回っていない限定品みたいなもんだし、多少プレミアムが付いた感じだな。
「本当にこれを売ってしまってもいいのかね?」
アックスがそう尋ねて来る。
もちろん答えはイエスだ。
SSランク武器を用意した今、Sランク如き死蔵させる意味は全くない。
まあダイレクトにそれを口にする気はないが。
「まあ持っていても宝の持ち腐れ何で」
「ふむ、そうか。ならばこれを……ん!?ちょっとまて!?」
商談成立。
そう思った時、アックスが急に眼を丸めてカウンターに手をかけ、身を乗り出してきた。
「そそそ……その腰にかけてある短剣はまさか……SSランクの短剣!!」
どうやら俺の装備しているSSランク武器に気付いた様だ。
よく見た目だけで分かったな。
こいつ。
「ええ、まあ……」
「なるほど……それなら合点が行く。その武器があれば此方はいらないという訳か。いやはや、君ならいつかそこまで辿り着くんじゃないかと期待して師匠を紹介した訳だが……まさかここまで早く製作に成功するとはな。まさに稀代の天才という奴か。素材集めだって大変だったろうに」
「まあ運が良かっただけです。それよりも買取をお願いします」
「む、そうだな。短剣は20億で買い取ろう。時に……出来れば君に頼みたい事がるんだが……」
アックスが何かを俺に頼もうとする。
まあイベントって奴だな。
彼には製作スキル取得に色々手を貸して貰ったので――
「お断りします」
――などと甘い事は言わない。
それはそれ。
これはこれである。
製作系の依頼は全て把握していないので、これがどういったイベントかまでは分からない。
だが、向こうから頼まれる系は糞長いのが定番である。
そして依頼の報酬は経験値にお金、それとギルド関連の物になるのが基本だ。
例えばこの鍛冶ギルドなら武器や防具だな。
つまり貰えるのは武器防具。
それもSランク以下である事は容易に想像できた。
そんなもん誰が受けるかっての。
「ま、まあ話だけでも聞いてくれんか。報酬は弾む」
「お金には困ってないんで」
無限の錬金術を持つ俺に、金など意味はない。
「もし依頼を上手くこなしてくれたら……その時はギルド所蔵のゴッドニウムを報酬として出そう」
「任せてください!」
てのひらクルンである。
何故ならゴッドニウムはSSSランク装備製作に使う素材だからだ。
手に入れるの結構大変なんだよな、これ。
それをここで貰えるのなら、多少の手間など全く惜しくないというもの。
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