ミア
ユウの指が、私の首筋をなぞる。
その感触だけで、また世界がふらつく。
眠れない夜。
煙草の煙とスピーカーの低音だけが、ここにいる証だった。
あの人と出会ってから、呼吸の仕方を忘れた。
笑うたび、
苦しくなって、
触れられるたび、
少しずつ自分が消えていく。
それでも離れられなかった。
「おまえがいなきゃ、生きてる意味ねぇよ」
その言葉を、何度も聞いた。
そのたび、胸の奥で何かが音を立てて壊れた。
そんな重さ、抱えきれるはずがなかった。
夜の街を歩く。
コンビニの光が滲んで、まるで私を撮ってるみたいだった。
スマホの中には、消せないツーショット。
笑顔の裏で、どちらも限界だった。
「ねぇ、ユウ。私たち、いつから生きるより“壊れるほう”を選ぶようになったんだろ。」
彼は笑って答えない。
その笑顔が好きだった。
でも、同じくらい憎らしかった。
朝がくる前に、私は彼の部屋を出た。
何も言わず、鍵だけテーブルに置いて。
外の風が、やけに冷たかった。
初めて、肺の奥まで息が届いた気がした。
愛って、死ぬより怖い。
でも、生き返るために、私は彼を手放した。
夜明け前の街を歩きながら、
イヤホンから流れるリアーナの声に、少し泣いてしまう。
We found love in a hopeless place.
希望なんてなかった。
でも確かに、あの瞬間だけは、本気で生きてた。
その記憶がまだ、胸の奥で光ってる。
痛みよりも、少しだけ優しく。




