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1話:勇者と後悔

 大魔王を勇者が倒し平和が訪れる。

 そんな話は、何処かの世界では無数に存在するらしい。


 この世界『ルオール』は3年前まで魔王に支配されていた。

 それが、この世界にとっての現実。


 その魔王も勇者により倒され、街に爪痕は残されているが今は平和そのもの。

 人間の適応力は残酷な程高く、まだ3年しか経っていないのに、勇者が魔王を倒したというのは、昔の伝承、あるいは作り話に近いような扱い。

 

 その勇者が、今何をしているかと言うと……

 

 

 ~とあるギルドの酒場~



 「シアン様、クエストは受けられないのですか?」

 

 

 話しかけて来たのは、受付嬢のあずきちゃん。

 年齢は知らないが、恐らく10代前半。

 だいたい受付嬢は10代後半から30前くらいの女性が担当するので珍しい

 


 「ジルブラ産のコーヒー豆が入ったって、ギルドマスターから聞いて来ただけだからね」

 

 

 酒場で昼間から酒を飲む冒険者は珍しくない。

 むしろクエストを受け日銭を稼ぎ、すぐに酒に消える、というのは過半数だ。

 このギルド“暴食の館”も例外では無い。

 まぁギルド名の通り、食べ物も良く出る店だ……いやギルドだ。 


 さっきの酒の話だが、このオレ、シアンは少数派。

 昼間から飲もうとしているのはコーヒーだ。

 

 逆張りのオレ格好いい!! とかは思っていない。

 むしろ、その理由はかっこ悪い。

 酒は、魔王軍討伐の旅で、ハニートラップに引っかかって以来控えているんだ。

 それがオレにいとっての最初で最後の酒だったなぁ。

 

 

 「魔王を倒した勇者様が、毎日ギルドでコーヒーを飲みに訪れる。

 これこそ平和ですね」

 

 

 全く邪の心を感じない笑顔!!

 これぞ天使!!

 コーヒーは好きだが、本当はあずきちゃんの笑顔を目当てに来ているのは内緒。


 クエストなんて受けたら、この笑顔を見れなくなってしまう。

 それに彼女の言うとおり、俺がこうしていられるのは平和な証拠。


 この笑顔を浴びる事は、平和の実感でもある。


 本当に勇者が必用な出来事が起こった場合を考えても、ギルド内にいた方がいいしな。


 まぁ数百年ぶりと言われる平和が訪れてまだ3年。

 流石に、まだまだ平和な期間が続くだろう。

 

 なんて考えていらた、ギルドのドアが勢いよく開けられた。

 冒険者は血の気の多い人間が多いので、ドアが乱暴に開けられるのは珍しい事ではない。


 だが……もの凄く嫌な予感がする。

 

 

 「だれか!! 治癒魔法を使える奴はいないか!?

 ヴァレットがやられた!!」

 

 

 大男が、血だらけの男を肩で担いでいる。

 ヴァレットという男が大けがを負ったらしい。

 見たところ2人でクエストを受けたのか。

 難易度を見誤ったか油断したか……

 ん? 今ヴァレットって言ったか?

 

 

 「おい!! 大丈夫か?」

 

 

 知り合いだと気が付くのに遅れ、慌てて駆け寄る。

 血だらけの男は、紛れもなく俺の知っているヴァレット。

 既に数人のヒーラーから回復魔法を掛けられており、命に別状はなさそうだ。


 ヴァレット……俺と一緒のパーティにいたわけではないが実力は本物。

 1対1の対人戦、または大量の雑魚魔物との戦闘を得意とする大剣の戦士。

 魔王や、その幹部との戦闘は不利と言い切り、パーティには入らなかったが、正直彼がいれば、もっと楽に魔王を打ち倒せただろう。

 

 

 「おぉ……シアンか、久しぶりだな……

 ちょっと仕事先でヘマしちまって……」

 

 

 弱々しい声だが、この様子なら大丈夫そうだ。

 

 

 「お前ほどの男が大けがとはな、討伐対象は?」

 

 

 ヴァレットは首を横に振る。

 大けがを負った上に討伐も失敗……か。

 彼の呼吸が落ち着いているのを確認し、質問を続ける。

 

 

 「おいおい、古龍討伐クエストにでも挑んだか?」


 「スライム」


 「は?」


 「スライム討伐クエスト」

 

 

 あぁ、なるほど、そういうことか。

 希にあるんだ、安全地帯での簡単なクエスト。

 それでも相手は自然、運悪く上位の魔物に遭遇してしまうことはゼロではない。

 たまに、その魔物を返り討ちにして名を上げる冒険者もいるらしいが……


 しかし、次にヴァレットが口を開いたとき、俺は血の気が引いた。


 

 「スライムにやられたんだ、テラ級の魔法を……使ってきた」

 

 

 ここでヴァレットは、気を失ってしまった。

 回復魔法による急激な傷の回復の後には良くあること。

 寝て起きれば、体調もウソのように回復しているはずだ。

 それよりもだ、スライムがテラ級、つまり最上級魔法?

 体当たりや、変な液体を掛けるくらいしか出来ないスライムが?


 ヴァレットのことだ、ウソでも冗談でも見間違いでも無い。

 俺の聞き間違いという可能性も低いはず。


 スライム討伐は言わずもがな初心者用のクエスト。

 このまま放っておけば、冒険者が次々に犠牲になるぞ!!

 

 

 「あずきちゃん!! ヴァレットの受けたクエストは!?」


 「はっはい!!」

 

 

 焦って威圧してしまったか、あずきちゃんはビクッと怯えながら、クエストの書かれた紙の束を漁り始めた。

 

 

 「こっこれです!!」


 

 北東村、馬車で1時間もあれば着く。

 クエスト内容は……最近スライムが多く、商人の積み荷が液体で汚される。

 当事者は大変だろうが、何の変哲もない一般的なクエスト。

 テラ級の魔法が飛んでくるなんて、最初から知っていなきゃ、想像もしないし俺もヴァレットと同じ目に遭っていたかもしれない。

 

 

 「よし!! 俺が行く!!」

 

 

 気合いから思わず大きな声が出ると、ギルド内から「勇者様の出陣だ!!」などと大歓声。

 こっぱずかしいな……北東村の馬車なら、ちょうど出る時間のはず。

 

 

 「あずきちゃん、念のため、北東村に危険な魔物がいるって勧告出しといて」


 「了解しました!! って1人で行くんですか?」

  


 あずきちゃんの声は聞こえていた。

 いつもなら、あり得ない事だが、俺は彼女の言葉を無視してギルドを飛び出す。

 裏手に回ると、馬車は待機中、ちょうど定刻だが、恐らく客がいないのだろう。

 

 

 「オヤジ、北東村に出発できるか?」


 「もちろん……って勇者様!?」

 

 

 馬車引きは、勇者が大慌てで馬車に乗り込んで来たので何か大事があったかと不安になったのだろう。

 まぁ、実際その通りなのだが、俺はなるべく不安にさせぬよう言葉を選んだ。


 

 「北東村の付近で、厄介なあ魔物が出たらしい。

 俺1人しかいないが急ぎたい、すまないが出せるか?」


 「もっ勿論でさぁ!! 勇者様を乗せるなんて光栄な事でぇ!!

 ヒヒンの助も喜んでらぁ」

 

 

 ヒヒンの助……とんでもない名前を付ける主人を持ったモノだと笑いが込み上げて来てしまった。

 馬には悪いが、俺の気持ちは落ち着いた。

 


 「ヴァレットの弔い合戦と行こう!!」

 

 「はい?」


 「い……いや何でも無い」

 

 

 思わず声が出てしまい、馬車引きのオヤジが、何だ何だと振り向く。

 比較的、近場へ向かう馬車なので、手狭で仕切りも無く、話そうと思えば話せる距離。

 恥ずかしくなり目を背ける。


 勇者パーティで活動していた時期なら「ヴァレットさん死んでないでしょうが!!」なんてツッコミが入ったんだが、今は独り。

 

 勢いで出てしまったが、少し寂しいな。

 だが、聖剣無しの俺より強いヴァレットに深傷を負わせるような相手だ。

 放ってはおけないし、気を引き締めないと……

 

 

 あれ!? このクエスト、俺ソロで受けたのマズくない!?

 数分前の、あずきちゃんが「独りでですか-?」と呼び止めた声が。俺の脳裏でリピートする。

 

 独りで……なんとかなるか?

 コレ?

 

 後悔しても、馬車はただ前へと進み続ける。

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練っているので少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると幸いです。


 下の星から評価も、入れてくださるとモチベが最高潮になるとか。

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