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7日目の訓練

11月分 4つ目

 冒険者ギルドに寄って周囲の魔物の情報収集をする。

 最初の街とほぼ変わらないようだが、このまま先に進むとゴブリンが減ってオークが増えていくようだ。


 冒険者はレベルが上がるごとに拠点を変えていき、オークが物足りなくなったらさらに先に進めばミノタウロスが出てくるようになり、その先にはオーガが生息している。

 地上の敵はオーガくらいが一番強いことになるが、それで物足りない冒険者は地下深くダンジョンに潜る。

 もし魔王が現れれば、そのダンジョンを抜けなければ魔王城にはたどり着けないと言われているのだが一般人には縁のない話だ。


「転職を済ませたらそのあたりで依頼を受けながらレベル上げになるのかな?」

「レベル上げカ?」

「通常はそうですね、自分のレベルに見合った場所でじっくりレベルを上げて、成長が止まったと感じたら強い敵を求めて拠点を移動することになります」

 2人にとっては転職の神殿の付近ではレベルアップに必要な経験値が稼げない、転職したての冒険者にちょうどいいくらいの敵だから大体30レベル向け。

 50レベルを超えた2人には物足りないようだ。


「拠点はその時の自分たちの強さを見て決めよう。

 それより、移動だけだと戦闘の感覚がにぶっちゃうかもな」

 歩いているから運動してないわけじゃないが、何日も戦闘をしていないとまた素人に戻ってしまうだろう。


「リーダー、時間あるし訓練するカ?」

「そうだな、頼むよ」

 キアを連れて冒険者ギルドの訓練場に行く。


 冒険者ギルドでは訓練用の模擬剣の貸し出しもやっていて、ギルドの職員やベテランの冒険者もいてアドバイスを求めることもできる。


「ふっ」

 カンッ、カンと木剣同士が打ち合わされる。

 一見いい勝負をしているように見えるが、実戦だったらなん十回も転ばされている実力差だ。

 打ち合いの隙をついてキアの足がおれの足に当たる。

 遊んでいるわけではなくて、足が当たるたびにおれは足払いを掛けられて転ばされているということだ。


 遊んでいるわけではないと言ったが、キアにとってはおれの相手など遊びにしかならないと思われても仕方がない。

 『剣術』のスキルにおいてはお互いにスキルレベルが3あって拮抗しているようだが、『剣術』のスキルは身のこなしまでは与えてくれない。

 ただ剣が当たった時に謎の力が働いて威力が100倍になるだけだ。

 それはそれですごいんだけど、当てなければ意味がない。

 そして避けなければレベルの低いおれのステータスでは致命傷を食らうだろう。


 まっとうな手段でスキルレベルの3を手に入れたものは長年の研鑽があり、高レベルの魔物を相手に実戦で生き抜いてきたものだけだ。

 おれみたいなちぐはぐな強さは異世界転移した者たち特有の物だろう。


「ふっ、はっ」

 足元に集中すると頭上を剣が通り過ぎる。

 これも当てられたのにわざと外したものだ。


 小一時間訓練をして休憩に入る。

「っはー」

 水がうまい、水袋の中身を飲み切ってキアの分まで貰ってしまった。


「リーダーの強さって、普段はわかりにくいナ」

 それは強くないからだな。


「スキル頼りなんだよ、あと魔法か」

 光魔法の『祝福』は動きもサポートしてくれる感じか、ステータスが上れば普段の動きももっと良くなるのだろうか。


 休憩後の訓練は『祝福』と『感謝』のバフを自分にかけてまたキアと打ち合う。

「さっきよりは戦えるな」

 キアの動きが見えるようになり、体の動きも攻撃に追いつくようになってきた。


「やるナ」

 キアの動きが変則的になる。つばぜり合いから剣の持ち手同士をぶつけてきて剣ごとおれの手を掴んだり、そのまま関節をきめようとしたり、おれの体を掴んで両足で攻撃をしたりする。

 膠着状態になれば頭突きもしてくるし、訓練でなければ噛みついたりもしただろう。


「それが『2刀4爪1牙流』なのか?」

 スキルレベルは0だったが普段から手数が多い。

 正式にスキルを得たらどうなってしまうのだろう。


「なんダ? あれってそういうことだったのカ」

 本人は意識していなかった、元々そういう戦い方だからあんなスキルが生えてきたのだろうか?


 キアとの実践的な訓練は魔物と戦う時に参考になりそうな動きが多く、短期間の訓練だったが得るものは多くあった。

 技術の吸収、学習能力も上乗せされている気がする、『祝福』か『感謝』の効果だろうか。


 部屋に戻ったらお湯を買って風呂場代わりの水場で体を拭いて肌着を替えた。

 残ったお湯で汗だくの肌着を洗ってきつく絞る。

 寝ている間に部屋に干しておけば朝には乾いているはずだ。


 部屋に戻ってニアと話す。

 冒険者ギルドで情報収集をしていたようでこの辺りはまだゴブリンが多くて適正レベルの相手は少ないようだ。


「リーダーにとっての適正レベルはいくつなんでしょうね?」

 首をかしげてニアが言う。

 適正レベルと言えば強すぎない相手でありながら経験値効率がそこそこにいい魔物が生息していることだろう。

 いい場所を見つけたら経験値効率が悪くなるまでその場所でレベル上げにいそしむことになる。


「むずかしいナ」

 コロコロレベルが上がってしまうおれにとっては適正レベルの場所を見つけたとしても、翌日には適正レベルでなくなってしまう。


「レベルのことは考えなくていい、転職を済ませたら危なくない場所で生活費を稼ぎながら暮らせればいいよ」

 腰を据えて働くことができていないおれは、旅の費用のほとんどをニアに払ってもらっている。

 ご主人様どころか高レベル女性に養ってもらっているヒモ状態だ。

 何とか自分の力で稼げるようになりたい。

11月分終わりです

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