7日目の移動
11月分 3つ目
でも光魔法はペナルティーを消すために要るんだよな。
光魔法の『祝福』は対象が自分のみだから前衛として戦うためにあるような魔法だし。
ん? ペナルティーは職業に対してどう働くんだ?
魔法のペナルティーだから魔法使いになると軽減されるのか?
3割引きの70スキルポイントでペナルティーを解消できる!?
「ペナルティーを解消するスキルポイントは変化するのか? 職業が変わった時」
おれが聞くとニアは顔を伏せ、キアは目をキラキラさせる。
「リーダーのペナルティー。すっごかったですね」
「見たことないゾ」
興味津々な視線が恥ずかしい。
リスクの高さから言っても特殊な環境の魔物くらいしか属性の大弱点なんて持っていないだろう。
それが5つ、ちょっと前までは8つすべての属性が大弱点だった。
光魔法の『祝福』で軽減されたはずだがそれでも抵抗力が半減しているだろう。
そう考えると火魔法と土魔法のペナルティーを消したのは良い判断だったかもしれない。
『祝福』で軽減できるならペナルティーを解消したのは早まったかとも思ったが、たいまつで殴り掛かられたり投石を受けることも十分考えられる。
抵抗力が半減しているということはダメージを2倍受けるようなものだからまともに戦うのも難しいだろう。
「ステータス」
2人の催促するような目に負けてステータスのスキル欄を開く。
『遊佐 蕗
レベル 17+10=27
HP 41+20=61
MP 41+20=61
攻撃 19+10=29
防御 19+10=29
知性 19+10=29
精神 19+10=29
敏捷 19+10=29
SP 411+10=421
EXP 8192+4907=13099
NEXT 13500
スキル(ー)
火魔法 ー1
水魔法 ー3
風魔法 ー3
土魔法 ー1
氷魔法 ー3
雷魔法 ー3
光魔法 2
闇魔法 ー3
視力強化 ー2
聴力強化 ー2
味覚強化 ー2
触覚強化 ー2
嗅覚強化 ー2
HP増加 ー2
MP増加 ー2
MP消費軽減 ー2
レベル制限 ー2
所有経験値増加 2ー1
鑑定
収納
剣術 3
未収得スキル(+)』
いつ見ても恥ずかしいスキル欄。
属性の大弱点に比べると負担にはなっていないが、五感のペナルティーなんかは消してもいいかもしれない。
しかし属性以外のペナルティーを全部消すとなると100近いスキルポイントを消費することになる。
属性の大弱点が致命的になる場面がどこで現れるかもわからないのでスキルポイントの無駄使いは極力避けたいところだ。
「それでも、スキルポイントの当てはできたし」
レベルの上昇がこれからも続くなら毎日10レベル以上は上がっていくと期待できる。
節約はしなければいけないが、その使い道は最終的にはペナルティーの解消だ。
「今解消してもいいな」
各属性は属性ごとに100ポイントかかるので慎重にならなければいけないが、それ以外はすべて消してしまおう。
『遊佐 蕗
レベル 27
HP 61+6=67
MP 61+6=67
攻撃 29
防御 29
知性 29
精神 29
敏捷 29
SP 421-92=329
EXP 13099
NEXT 13500
スキル(ー)
水魔法 -3
風魔法 -3
氷魔法 -3
雷魔法 -3
光魔法 2
闇魔法 -3
所有経験値増加 2-1
鑑定
収納
剣術 3
未収得スキル(+)』
「うん、スッキリしたな」
五感の弱体化10%をすべて消して50スキルポイント。
HP、MP減少分10%にMP消費増加やレベル制限も消して火魔法と土魔法を0レベルに戻したことで合計92ポイントも使ってしまった。
「増加量がおかしい?」
HPとMPが10%増えているのだが、たしか減らしたときも10%減っていたはずだ。
なにを言っているのかわからないだろうが、おれも言っていて訳が分からなくなった。
つまりHP、MPにペナルティーをかけて減少した時はHPもMPも10しかなかった。
だから減少分は1だけ。
そして今ペナルティーの解消をしたことで10%増えたのだが、その10%で6も増えていたのだ。
「現在値しか対象にしていない?」
思えばレベルアップした時も10%削られた覚えがない。
1レベル上がった程度なら表示が切り上げられてもおかしくないが、10レベル上がった時なんかは10%削られる所が見えるはずだ。
「これは悪いことが出来そうな気がする」
ちょっと思いついただけでも物理職に就いた時にHPを増加させて、魔法職に転職したらHPの増加スキルをリセット。
今度はMPを増加させて物理職に転職。
これを繰り返すだけでHPもMPも伸ばし放題に見える。
「デバッグが行き届いてない黎明期のゲームみたいだな」
ただしオンラインなのであまり目立つことをするとパッチが当たって裏技的なことはできなくなるかもしれない。
やるとしても高レベルになってからだろう。
いつまでもスキルの事を考えていると1日が終わってしまうので立ち上がって外に出る。
オークの討伐のクエストは受注したままなので冒険者ギルドに寄る必要もない。
当面の予定はおれの就職活動なので門の近くにある馬車の乗り合い所に行くが朝一番の便はすでに出発した後だった。
昼の便までは結構時間がある。
「歩いて行くか?」
「その方が良いゾ」
「うちも賛成です」
馬車は楽なようにも見えるが、道は悪いし車輪も直付けなので乗り心地は最悪だ。
歩いた方が楽なところがある。
ゆっくり歩いて馬車に追いつかれたら途中から乗車してもいいし、早めに駆けて朝出発した馬車に追いついてもいい。
それが可能なのはおれたちが冒険者として戦闘力を持っているからで、一般人は馬車に乗るなり同行するないしないと魔物や盗賊におそわれる危険がある。
追いつく気も追いつかれる気もない俺たちは馬車と同じ程度の速度で街道を歩き、時々キアが先行して先の様子を探っている。
ゴブリンすら出てこないのはキアが先に見つけて排除してくれているのだろう。
偵察から戻ってくるときニコニコしてピ-スサインを送ってくることがある。
あれは2体殺ったってことなのか?
返り血も浴びていないのだから後ろから忍び寄って首を掻ききる暗殺者スタイルかもしれない。
それを邪魔しないよう装備品もごてごてガチャガチャしたものは付けていない。
おれのハードレザーアーマーよりも動きやすそうだ。
おれ自身金属鎧を付ける予定もないし、このパーティーは隠密行動に向いているかもしれないな。
昼休憩を少し取り、隣の街までは何事もなくたどり着いた。
止められることもなく門をくぐり抜けて、宿屋を探したら荷物を下ろす。
ちょっと今手持ちがなくて、宿代はニアが払った。
当然のように3人同室だがこれはどうしようもない。
従魔扱いの2人から目を離したらおれが怒られるからだ。
「この街は転職の神殿ないよね?」
「そうですね、神殿同士は離れていますから隣り合った街に連続して建ってはいないでしょうね」
今までいた街には無職になれる神殿があった、他の神殿を探すのであれば2つか3つ街を越えないといけないだろう。