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新聞部(仮)【リレー小説】  作者: 「小説家になろう」LINEグループ
39/45

シスコンという業

この回の執筆者は佐堂さんです。

 いつも通り家に帰り、夕食を優子と食べていた時、事件は起こった。


「あ、お兄ちゃん。私、今週の日曜日は鸞くんとデートしてくるから、晩御飯は作らなくていいよ」


「……えっ?」


 俺は箸を落として、硬直してしまった。

 そのまま二秒ほど固まってから、優子が何を言ったのか咀嚼してみる。


 たしか、デートがどうとか言っていたような気がする。

 いやいや、そんなまさか。

 ……でも、念のために事実確認は行っておいたほうがいいよな。


「ごめん、優子。お兄ちゃん、ちょっとボーッとしてたせいで優子が何て言ったのか聞き取れなかったんだ」


「え? だから、今週の日曜日は鸞くんとデートしてくるから、私の分の晩御飯は作らなくていいよ、って言ったんだよ」


「――な、に?」


 デート?

 優子と中二が、デート?


 いつの間に、そこまで関係を発展させていたというのか。

 この前、その片鱗は見せていたが、まさかデートをするほどの仲になっているとは……。


「そ、そうか。へぇー。ふーん。よ、よかったじゃないか」


 俺はなんとか平静を装うために、曖昧な返事を返すことしかできなかった。


「うん! あー、楽しみなんだぜ」


「あっ、その口調、まだ治ってなかったんだね!!」


「そりゃそうだよ。鸞くんに教えてもらったものだもん。あー、でも使い分けるようにはしてるんだけどね」


「……そっか」


 そう言って無邪気に笑う優子の顔は、本当に綺麗で。

 だから俺は、何も言うことができなかった。




「――っていうことがあったんだよ」


「なるほどなるほど。それで良太さんは、妹さんとその妹さんの彼氏のデートを尾行したいと。そういうわけですね」


「いや誰もそんなこと言ってないけど」


 翌日の朝、たまたま廊下で会ったロリぃ員長――如月に昨日の夜のことを話したら、そんな言葉が返ってきた。


 まったく、如月の早とちりにも困ったものだ。

 これではまるで、俺が妹にべったりのシスコンみたいではないか。


「いや、俺はただ優子の保護者として、その妹が付き合う相手がどの程度なのかを見極めたいと、そう思っているだけでね。尾行はまあ……考えないでもなかったけど」


 俺がそう言うと、如月の顔が露骨に引き攣った。


「……尾行はさすがに冗談のつもりだったんですが。それで妹さんを尾行したいとか、どんだけシスコンなんですか。妹想いを通り越して、普通に気持ち悪いです」


 如月は俺から少しだけ距離を取り、警戒するようにその身を震わせる。

 いや、ちょっと待ってほしい。


「世の中の兄貴として、妹の初デートの心配をするのは当然のことだと、そう思わないか?」


「いや知りませんから。っていうか、それ以上近づかないでください。危険なので」


 そう言って、ジト目のまま俺と距離を取り続けるロリぃ員長。

 まったく。ひどい奴だ。


 しかし、ふむ。

 尾行か。

 なかなか悪くない考えだ。


「今、明らかに『尾行……なかなかいい考えだ』的なことを考えてましたよね?」


「は? 何を言ってるんだ如月。俺がそんなこと考えるはずないじゃないか」


 胡散臭そうな目を向けてくる如月の言葉をバッサリと切り捨て、俺は教室へと向かう。


 とりあえず、今回は役に立たなさそうな如月じゃなくて、他の奴に相談してみることにしよう。


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