ノルド・マギの秘密
リリアは目を覚ますと身体を起こした。
時計の針は午前6時。
窓の外は薄闇が晴れようとしていた。
夜明けの訪れである。
リリアは欠伸をすると
「懐かしい夢を見ました」
と呟いた。
昨日の土曜日に優と共にピアノコンサートに行った。
そこで聞いた心に響く旋律が懐かしい日を思い出させたのだ。
リリアは身体を起こして隣の部屋で眠っている優を見て笑みを浮かべた。
秀美はそのコンサートのあったホテルで贈収賄の金品受け渡しの現場を押さえて泊まり込みで裏付けと事情聴取をしている。
相変わらずである。
リリアは顔を洗って身だしなみを整え
「さて、まだ朝ご飯には早いですし」
始めましょうか!
というと魔導宮をテーブルの上に置いて両手を翳した。
このままではいけない。
ただ。
ただ。
『何故』『どうして』と思うだけではダメだと気付いたのである。
リリアは自ら動かなければ秀美の命が、優の命が、危険にさらされると気付いたのである。
考えれば自ら考えて自ら動くという事をリリア自身これまでしてきた記憶があまりない。
マリナ・ノルド・マギを指名され。
王の指示でフィマール国を守り。
そうやってノルド・マギの時間を過ごしてきた。
ノルド・マギとして王の指示を実現する為に努力はしてきた。
しかし、優が何時も言っているような
『リリアもリリアがどうしたいかを決めて努力すれば良いと思うんだ』
そう言う努力をしてきたことはない。
そもそも自分がどうしたいのか?自分がどう生きて行きたいのか?そういうことを考えたことが無い。
ランスロットの言っていることもきっと究極は同じなのだろう。
『貴女はいつもそう…真にフィマールのことを考えられたこともないのに』
リリアは息を吐き出すと
「そうね、フィマールの安寧を願っていたけれど」
それはノルド・マギの役割だったからだわ
「私は本当にフィマールの安寧を願っていたのかしら」
と呟き、真っ直ぐ魔導宮を見ると
「でも今は誰の命令でも指示でも…ノルド・マギだからでもなく」
優と秀美を危険にさらしたくない
「この世界を混乱に落としたくない」
その為に私が来た理由を探るわ
と告げた。
「さあ、聞き届けよ」
我が精霊…時のノルン
「遥かなる過去」
最初のノルド・マギの誕生を写せ
「長女ウルド」
フィマールを含む世界の成り立ちの刻を
しかし、魔導宮から浮かび上がったのはウルドではなかった。
リリアの良く知る先代のマリナ・ノルド・マギであった。
『リリア・ノルド・マギ…漸く貴女は自ら貴女を知ろうと思い始めたのですね』
リリアは彼女を前に目を見開き
「マリナ様」
と名を呼んだ。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。




