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ダーの城 城主登場

 到着してすぐにウィストン伯にご挨拶がある、と緊張していたら。


「レイ・ラング・ルウェリン様並びにご婚約者様とお嬢様ですね。ただ今、当主は親族との会食中でございまして、会食終了後皆様にご挨拶する所存でございます。それまでごゆるりとお過ごしくださいませ」



 馬車寄せでは係の人が丁寧に出迎えてくれた。雰囲気がどことなくフェリーさんっぽいので、きっと使用人頭さんか執事さんなのだろう。



「承知した」

「どうぞ夏の名残りの佳き日をお楽しみください」



 短く答えたレイに感じの良い言葉を返した男性は、次に到着した馬車へと足早に向かう。

 ほっと息を吐いたのはフレイヤお姉さんだ。緊張していたのは私だけではなかったらしい、とクリスティナは思った。



「レイさん、婚約者って」


形の良い眉を少しだけ上げての口調は、なじる感じ。


「のようなもの、でしょう」

「『のようなもの』と『している』は別ですわ」

「それは失礼」


舞台俳優を気取って胸の紋章に手をあてたレイが続ける。


「では、お城ご自慢の蔓薔薇の前で膝をついて正式に愛を乞うことにいたしましょう」



 「いたしましょう」なんて普段使わない言い回しが出るあたり、レイったらものすごく浮かれている。


 ウィストンの城に立ち入るのが嬉しい? そんなわけはない。着飾ったフレイヤお姉さんが綺麗で、ついはしゃいでしまっているのだ。


うん、そういうところが野郎っぽいよね。



「やめてくださいっ。絶対に絶対に止めてくださいね」


 フレイヤお姉さんの拒絶すら嬉しそう。正直、なにかやらかさなきゃいいなと思う。


「髪が乱れている」などと触れようとするレイを、「そんなはずはない」と迷惑気に避けるお姉さんを見ながら、少し同情する。


お調子にのった野郎の相手は面倒だよね。



 入り口で名前を聞かれたらどうしよう、と内心ドキドキしていた。

「クリスティナです」と答えれば、先様はいいように解釈してお姉さんの名前スケリットをつけてくれるだろう、嘘はついていない。馬車のなかでそう話したものの心配していたのだけれど、心配無用だった。



 さあ、後は楽しむだけ。由緒あるお城のガーデンパーティなんて人生初。

レイに浮かれていると言ったけれど実はクリスティナも似たようなもの、自覚はある。



「うふふ。皆のもの、ダーの城へよくぞ参った。歓迎するぞよ」



 おかしなご挨拶がしたのは、左肩の上だった。

ダーの城と言うからには、これはどう聞いてもダー君。でも近くない?



「ダー君、重いっ」

「ウソなのよ、クリスティナ。ダーは体重かけてないぞよ」

「……うん、重いのは気分でした」



 渋々認める。ダー君はきっと満足そうにしているはず。近すぎてお顔は見えない。


「いつもぴぃが乗ってるから、ダーもしてみたかったのよ」



 はい、ここにも浮かれた子がいました。

まだ馬車寄せから動いていないのに、もう長い。これ一日の長さはどれくらいなの? 先が思いやられた。



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