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騎士四家・1


家名が出てきますが、ご記憶にとどめていただかなくても、つど会話に入れますので支障はありません。

気楽にお読みください。



 アンディが城砦のある町についての話を聞きたがると、山賊の頭は明日向かうという。


「復興が進む町で一番に気をつけるのは、会話だな」


 マクギリスとハートリーが奪い合う土地だ。昔から仲良くしている隣人が実は隠れハートリー支持者だということもある。

大げさに言えば、表向きは穏やかでも腹の探り合い。



「破壊しつくされてないのは、元より町なかに敵味方が入り交じってるからだ。まあ、戦慣れしてて白旗上げるのが早いってことも大きいか」



 アンディは尋ねたりしないが、山賊一家は親マクギリス派だろう。クリスが供花を売っていることからみて。



「この辺りはちょいと特殊で」


 酒で唇を湿らせて、山賊の頭はひとり語りを始めた。


 昔々は騎士四家と呼ばれる家が同盟を結び共同統治していた。マクギリス伯爵家とハートリー家はそのうちのふたつ。

あとの二家は、家勢が衰えた時代もあったが今は持ち直しつつある。


 前回、ハートリーからマクギリス伯が奪った時には、他の二家はマクギリス支持の立場を明確にした。

けれど今回は静観の構えか、黙している。真意は不明だ。



「ハートリーは城砦にいるんですか」

「いや、ハートリーは半年で引きあげた。今いるのは治安維持部隊だ。細っこくても男の子だな。そういう話が好きか」


別にそういうわけじゃ、と口ごもる。


「ハートリー家は、ウィストン伯爵家に属しているから城砦を本家に献上した。ハートリーは騎士爵しか持たん、マクギリス伯を討ち城砦を奪ってそのまま治めては他の二家が黙ってないと考えたんだろ」



 たかが騎士ごときが。そう声なき声が聞こえるような気がする。嘲る雰囲気は自嘲か、それともハートリーの暴挙についてか。

それ以上は聞けずアンディは頭を下げた。







 騎士四家のあと二家。アンディの疑問を解消したのは、意外にもクリスだった。


「騎士四家? カラスのおうち、山猫のおうち、クサリヘビのおうち、狼のおうち、でしょ」


あっさりと答え、絵本を取ってきてひらく。


「旗を見ればわかる。屋号が描いてあるから。ほら、この動物の絵がそう。字だと読めない人が多いから、絵でお家がわかるようにしたんだって。戦ってる時に間違って味方に切りつけないように」



 綺麗な薄桃色の爪が示すのは、確かに動物の絵の描かれた旗。子供向けに誇張されているのだろう、どれも愛らしく戦闘意欲をこの上なく削ぐ絵だ。


「昔は四家がお話し合いで色々決めていたの。でも家には盛衰があるでしょう。力の強い家が言い分を押し通して弱い家は泣きをみる。相談とは名ばかりの事後報告になって、四家同盟は形骸化したのよ」

「……クリス、それ意味分かって言ってる?」


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