第十四話 侵略
ウィル社長…
―第十四話―
侵略。
「社長、ちょっとよろしいでしょうか?」
数時間前、ラウラ・ホーリックが行動を開始する。
「ここでは話にくいので、社長のオフィスで…」
「どうぞ。」
ラウラとウィル以外には誰もいるはずの無い部屋。だが、そこには、
「こんにちは、社長さん。会って早々だけど、死んでもらうわ。」
テスの銃から、弾丸が発射される。一発の乾いた音。
「案外あっさりだったわね。これで契約成立ね。」
「ちょっと待ちなさい。ほら、私の足撃って。」
「黒幕が被害者面する気? 足じゃなく頭ぶち抜いて差し上げましょうか?」
「遠慮するわ。撃ったら適当にこの部屋、荒らしなさい。」
「一緒に荒らしてから撃ったほうが楽よ。」
「それもそうね。手伝って。」
ラウラの考えたシナリオは、こうである。
テスへの機体強化と兵器譲渡の見返りに、ウィルの暗殺を要求。自分が昇格し、社長の座に納まる。怪しまれないように、自らも被害を受け、部屋を荒らさせる。テスにすべての罪をなすりつけるのだ。しかし、テスが犯人だとばれないように、出荷用の大型機に、アヴィスの強化機と彼女を隠し、逃走させる。一見うまくいくように見えたこの計画、実際ラウラ本人もそう思っていただろう。
「うぅ、ちゃんと治るんでしょうね、この傷… やっぱ撃たれるのは痛いわ。おっと、警報鳴らさなきゃ。」
社内に鳴り響く警報音。
警備員が駆け付ける。
「副社長! どうかされましたか!?」
「何者かが、社長のオフィスにいて、部屋を荒らしていたの。社長は私をかばって、うぅ…」
「とにかく救急と警察に連絡します! こちらへ。」
「(私の演技、すごいでしょ?)」
「銃声が聞こえて、お父様が倒れてて、犯人はテスとラウラ…?」
リリスは一部始終を目撃してしまったのだ。
「一体何がどうなって…? 私は、どうしたら… お姉さま、助けて…」
ツヴァイ・レイボルト
「リリスから通信?」
「お姉さま、ニュースはご覧になりましたか?」
「えぇ、レメゲトン氏のことは、残念だったわね…」
「私…犯人を見ました…」
「もしかして…」
「はい、実行したのはテス・ラーゲットです。」
「その言い方、黒幕がいるみたいね。」
「黒幕は…副社長、ラウラ・ホーリック。」
「嘘… それなら二人の関係は?」
「まだ、わかりません。ですが、私は見たのです。犯人はあの二人です。」
「わかっているなら、ラウラ副社長を突き出して!」
「まだ、証拠や二人の関連がわかりません。私はしばらく目立った行動はしないようにします。」
「そう、でも、危険を感じたらすぐ連絡してね? あなたは私の妹なんだから。」
「そう言っていただけて嬉しいです。それでは。」
ヴァ―ヴァリアン
「ミラン、今戻ったわ。」
「テス、それはなんだ?」
「これ? あたしの新しい手足、アヴィス・インヴェイドよ。これならリベルタだろうが、ヴァルキリーだろうが、落とせる。それと、このデカブツは『べリアル』。超高火力レーザー砲よ、これをヴァ―ヴァリアンに搭載して、連合の本部や主要都市を焼き払うの。最高でしょ?」
「なんと…」
「今更怖気づいたの? しっかりしてよ、あんたはボスなのよ?」
「こんな兵器をどこから?」
「はぁ、メモリアル・ピースに決まってるでしょ? 知り合いがいるのよ。」
「社長殺害事件について何か知っているのか?」
「知ってるも何も、あたしよ。あたしが殺したの。」
「なんてことを…」
「どうしちゃったの? ビビりすぎよ。あんただってもっとひどいことしてきてんじゃない。連合の政策に不満を感じて、戦争吹っかけて。同じ穴のムジナよ。」
クルーに支持を出す、テス。
「この『べリアル』を搭載するわ! 勝つにはこれくらいしなきゃねぇ! あははははは…」




