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第16話「デート也」

 カミユの巧みなギアチェンジに因って最高速で無精(ゴール)を決めた八千代は、未だ目の覚めぬ2人にコッソリ隠れてパンツを洗っていた。だがよく考えれば、パンツ一枚だけ干してあるのも不自然だなと考え、結局ゴミ箱に捨てる事にしたのだった。



 「ふ~、証拠隠滅っと・・・・さて、もう王都に用は無いっちゃ無いんだけど、折角可愛い女の子と居るんだしデートってやつをしてみますかね?」



 そう言って眠る2人を見ていた。


 前世では考えられない程の美少女の2人は、日本のトップアイドルとしても2次元キャラとしても十分通用するであろう。八千代が今回利用した奴隷商は王都でも指折りで、(・・・こうして奴隷を買う以上、失敗は許されないぞ?)等と考えて、なるべく高級な店を選んだのだ。


 八千代がヒーターを購入した魔道具屋に居た店員に話を聞いたところ、奴隷商館はハンターの様にランク分けされており、ランクの低い奴隷商ともなると処女でなかったり、出戻りの奴隷を扱っているのが常々で、若くて可愛い処女と言った三拍子を揃った奴隷は中々見つからないらしいとの事であった。


 かくして八千代は見事、美少女処女獣人2人をゲットだぜっ!とした訳だが少し懸念があった。


 まず、八千代は女の子とまともに遊んだ事が無い。小学生の頃は一緒に遊ぶ事こそ無かったが、学校などで普通に会話も出来ていたし、割とスキンシップも出来ていた。だがしかし中学生の頃になると会話は滅法無くなり、やがて敬遠する様になっていた。


 つまり、八代にとってデートと云った事はある種、ファンタジーゲームの世界よりもファンタジーであり、どうやって女の子と遊べば良いのか分からないのであった。



 (う~ん・・・日本でデートの定番て言ったら映画館とか遊園地?・・・後は水族館とかかなあ・・・でもそれってこの世界にあんの?・・・どうしてるんだろ?ここの世界の人達・・・・)



 そうやって未だ糸口の見えないデートプランに思いを馳せていると、2人が目覚め始めてきた。早速モーニングコーヒー飲もうよ3人でとばかり用意していたティーカップにコーヒーを入れ、2人に差し出した。



 「おはよう、よく眠れた?」



 と言って差し出すが・・・・・



 「・・・・ありがとうございますニャ、でも猫舌ニャニョで冷ましてからニョむニャ」


 「・・・・・・ご、ごめんなさい!・・・・コーヒー飲めないんです・・・・」



 ・・・・と断られていた。モーニングコーヒー飲もうよ3人で計画は一転してモーニングコーヒー飲みますよ1人で・・・に変ってしまった。


 その後朝食を摂り、おっさんが10才以上離れた少女達に「デートがしたい」と宣い、暫くしてから外へ出たのだった。



 「デートに誘っておいて何だけどさ・・・・デートって何やんの?」


 「えーと、私もよく分からニャイですけど、美味しいもニョ食べたりするみたいですニャ」


 「あ、後は、服を買ったりとか演劇観に行ったりとかするそうです」


 「ふ~ん・・・・どこか行きたいところある?」


 「「え?」」



 2人にそう聞くと互いにモジモジとして言い難そうにしているので「言うだけ言ってみてよ?」と聞いてみると・・・



 「「演劇を観に行ってみたいです」ニャ」と言った。



 今、町の女性達の間で話題になっている劇があり、2人共気にはなっていたのだが、自分達は自由の無い奴隷であった為に我慢していたとの事だった。



 「よしっ!じゃあ行ってみっか?」



 と言って街の西側に位置する劇場へ向かう事になったのであった。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




 八千代達が演劇上に向かっている間、王都の道路を走るカートに乗った4人組の男達が何処へ向かうでも無く会話をしていた。男達は最近世間を賑わしている爆破テロの犯行グループであり、奴隷解放戦線のメンバーであった。



 「準備は良いか?」


 「・・・・・ああ、抜かりは無い・・・だが大丈夫か?一昨日の騒ぎで相当警戒されている筈だぞ?」


 「だからこそだ。今回の我々の作戦で、例え国が相手であろうと止められないと云う事を奴等に印象付ける。今日、成功すれば暫くの間は大人しくする予定だ。これが上手くいったら声明を出す手筈になっている。気を引き締めて行くぞ」


 「判ってるさ、これが成功すれば奴等もこれ以上無視は出来まい。俺達が流した噂も漸く世間に浸透し始めているみたいだしな・・・これでダメ押しとなる訳だ」


 「ああ、妖しい奴だったが奴の言った通り、上手く行けばこの世の中の流れも変わるかもしれん」


 「さあ、時間だ。英霊達に祝福を」


 「「「祝福を」」」



 そう言って男達はフード被り、進路を変えて次のテロの目標である演劇場へと向かった。



 一方その頃、八千代達は劇場横にある喫茶店にて次の公演が始まるまで時間を潰していた。公演は1日に3回に分かれており、八千代達がたどり着いた時には既に第一回目の公演が始まっていた。



 「それで、これから見る危険な薔薇って言う劇ってどんな内容?」


 「え~と、確か国ニョ王子が他国ニョ騎士に恋するはにゃしですニャ」


 「・・・は?騎士って女?」


 「い、いえ、男性の騎士みたいですよ?何でも背徳感をテーマにしてるみたいです・・・」


 「それで、両国ニョ王様にバレて処刑されそうにニャるんですにゃ・・・そこに昔付き合っていた仕立屋にょ男に助けられて誰も知らニャい国に逃げるみたいですにゃ」


 「全員男じゃん!?何その話?そんなん公演して良いの!?」



 どうやらこの国ではBL(ボーイズラブ)ブームに火が付いている様だ。八千代はこの国の未来に少し不安を覚える。


 そうして1回目の公演が終わり、次の公演が始まる時間になったので早めに良い席に着こうと向かう事になり、ポップコーンや飲み物を買って席に着いていると、これから公演が始まるのかブザー音が鳴り天井の明かりがフッと消えた。待っていましたとばかりに客席から拍手が鳴り始めると目の前の大きな幕が上がり、それを見たミュミュとカミユは「ウニャア~」とか「わあ~」と言って回りと同じ様に拍手を始める。



 そうして始まった劇の内容は序盤から中盤まで終始、男しか出てこず(・・・何だこれ?)とか思いつつも、両脇にいる2人が目をキラキラさせて楽しんでいる様なので、深く考えない様にして劇の行く末を見守る事にした。



 そして劇がいよいよ大詰めになると急に照明が落ちた。ざわめきが起こりつつも劇の演出の一部かと思い天井を見上げていると・・・・・



 「ッドゴォオオオオンンンン!!!」



 突如出入口が轟音と共に爆発した。



 「「「「「キャアアアアアア!!」」」」」



 余りにもの轟音と爆風に因って回りは恐慌状態に陥り、客席の誰もが我先にと別の出入り口へと向かうが再び爆発が起こる。


 八千代は真ん中の席に座っていた為、避難する事も出来ずに2人に覆い被さって守っていた。八千代自身も半ばパニックとなっていたが、いざとなれば自分のアイテムボックスで何とかなると落ち着き直し、2人を安心させる為、慌てず状況の推移を見守っていた。


 そして唯一残された出口へと観客が殺到しようとすると、フードを被った男が道を塞いで立っている。我先にと一番早く逃げ出していた男がフードの男に対し「クソ邪魔だ!退けっ!」と押し除けようとすると男は悍ましい異形の手を出し、男の首を刎ねた。



 「紳士淑女の諸君っ!我々は奴隷解放戦線である。再三に渡って国には警告してきたが、無視され受け入れられる事は無かった。ファロン王国上層部に依る即時の奴隷制度撤廃と解放の要求と、先立った名も無い奴隷であった我々の同胞である獣人族の鎮魂の為に、諸君等にはここで礎になって貰う」



 男の要求は到底受け入れられる筈も無く、観客達は口々に怨嗟の声を上げて男を罵り始めた。罵声が浴びせられる中、男は回りの声を気にする事も無く、異形の手を地面に手を於いて呪文を唱え始めた。そうすると男の手を中心とした魔法陣が展開され、地鳴りと共に1匹の魔物が赤い光と共に姿を象っていく。


 そこに現れたのは体長5メートル以上は優にある獅子の頭を持った山羊の体とヘビの尾の魔獣、キマイラが姿を現した。



 「グァオロロロロッ!」「シィィィィイイイイッ!」



 キマイラの牙は獅子等と云った生易しい牙では無く、その牙一本一本が槍の様に太く鋭い。それを目にした者は、一度噛まれれば鋼鉄の鎧であろうと容易に噛み砕かれるのでは無いかと錯覚させる。そしてそれのみならずキマイラの尾に当たる蛇は太く、それ単体だけでも凶悪な魔獣であろう事は、一目で分かる位に獰猛で独立した意思をもって明確な威嚇を放っていた。そしてそれらが合わさった威圧感は歴戦のハンターであっても到底跳ね返す事は難しい。



 先程まで男を罵っていたにも関わらず、そのキマイラの姿を見た瞬間、観客達は一斉に静まり返り、顔を青くさせ後退りし絶望した。



 「な!?・・・・・な、何だあの生き物は!?」



 王都であるシャルガンの街の市民はその強固な結界のせいか、魔物の知識や見識に疎い者が多い。演劇を見に来る様な市民は総じてお金に余裕があり、ハンターと云った戦闘職の人間は皆無だ。中には兵役経験もある人間もいるが、元々キマイラと云う生物はファロン王国には存在せず、人類の支配域を超えたイールトン大森林の奥地や古代のダンジョンに生息し、レベルに関しても4つ星以上のパーティーで漸く討伐出来るか否かと云った魔物であり、この国の普通の人間が街中で目にする事はまず無いと言い切れる程の魔物の筈であった。



 「ォィォイオイオイオイ・・・・何だありゃ?キマイラじゃねえのか?あれ?」



 八千代は突如現れて爆発テロを起こした奴隷解放戦線と、異形の魔獣キマイラが現れると云う目まぐるしい状況の変化に頭が追いつかないでいた。

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