第15話「お互いに必死也」
夕飯時に近くなったからなのか、人々が賑わい街の喧騒がより活発に聞こえてくる。辺りは日が暮れ始め、赤い陽の光が射して部屋を照らす。
子供達が未だ声変わりしていない甲高い笑い声をあげて走りながら遠くの方へと消えて行く、そんな騒がしくもどこか懐かしさを感じる牧歌的な時の中、八千代の目の前には一糸纏わぬ裸の美少女2人が今、目の前に並んで立っていた。
赤い陽の光が窓によって一部遮られ、陽の光と影が織り成すコントラストが彼女達の裸体を美しく際立たせる。その究極の美を現したかの様な芸術とも言える光景に八千代は魅了されて息を飲んだ。少女2人はそんな八千代に対し頬を赤らめつつも何も言わず、刻一刻と高まる鼓動と羞恥心に耐えていた。
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・あ、あ、あのっ!・・・・お、ぉニャがいしますニャ」
「 ・・・ぉ、ぉねがぃし△〇✕・・・・」
「・・・あ・・・ぁあ・・・・・・・・」
八千代は2人の声で我に返るが、どう言葉を返して良いかも分からず、また何か言おうと口を開こうとするが、その口からは何も言葉が出てこなかった。
そんな八千代を無視するかの様にミュミュはベッドへと歩み始め、カミユもまた少し遅れながらも後へと続く。2人がベッドの上へと跨り八千代に近づき、そのまま頬をより一層赤く染めつつも八千代を見詰める。
ミュミュは未だ覚めやらぬまま呆けている八千代を見ると覚悟を決め、「初めてだから優しくして欲しいニャ」と小さく呟き、自身の唇を八千代へと重ねる。
「 ! ・・・・・・・」
ミュミュの唇の柔らかさに驚き一旦目を見開き驚くも、八千代は優しく手を腰に回しながらも徐々に強く、また慈しむように抱きしめた。全ての感触を唇に集中させ、ミュミュの唇を堪能して唇を離した後も、そのまま今の感触と感動を脳裏に焼き付ける様に互いに見詰め合ってから俯いた。
八千代は照れながらも自分を受け入れてくれた事が嬉しくなり、愛おしい相手の顔を再確認しようと顔を上げると、彼女は嬉しそうに照れながらも、八千代の視線に合わせて優しく微笑んでくれた。
八千代はそんな風にしてミュミュと見詰め合っていると、自分達の事を見ていたカミユに気付いた。
彼女は八千代とミュミュが魅せた光景に心奪われ、13歳と未だ少し早くにも感じる大人びた刺激に、口を半開きにしたまま見惚れ呆けて蕩けていた。八千代の視線に気付くと、震えながらも八千代の刺し出した手を恭しく受け取り、これから自身がさっきまで見惚れていた2人と同じ行為をするのかと思うと、緊張して鼓動が高まる。だが、目の前の主人はそんな事に気付く事も無く唇を重ねてきて身が強張ってしまうのだが、自身が想像していたよりも遥かに柔らかく、また温かみを感じる唇はカミユの緊張が解け、思考を容易く放棄させた。
そうしてまた、カミユも同じ様に八千代と見詰め合い、当初互いに対する恐怖にも似た緊張は、恥ずかしくも心地良い緊張へと変化していく。
八千代は2人の唇を堪能した後、再度込み上げてくる深い感動に歓喜し、思わず2人を同時に抱きしめてしまう。
「・・・・ありがとう・・・・・何て言うか・・・・本当にありがとう・・・ははっ、これしか出てこないな・・・・女の子ってこんな可愛くて、暖かくて、柔らかかったんだな・・・・」
八千代はそう言うと、思わず小さく微笑んでからまた2人をゆっくりと抱きしめた。
八千代の抱擁が終わり、2人はいよいよ覚悟を決めると再度高まる鼓動を感じながらもベッドに背中を倒して八千代を見詰め、そして静かに受け入れる様にして目を閉じた。
そうした2人を見て八千代は興奮し、彼女達の白く透き通った裸体に手を差し伸べ様とするが・・・・手を出したまま固まってしまう。
(このままイッっちゃって良いのか?・・・・・イヤ・・・・でも・・・・しかし・・・もう・・・・)
八千代は思い留まった。彼女達は確かに自分の所有物であり、奴隷だ。恐らく自分の意のまま何でもしてくれる事だろう。だがしかし、それは性行為を許しただけであり、言うならば契約と云う名の仕事の延長に過ぎない。
日本に居た時は何度もその手の店に行こうと考えもしたが、長年の童貞が拗れた結果、愛の無いSEXに対し抵抗があったのだ。自身が長年守り続けて童帝にまで昇華した思いが、この様な契約で結ばれた愛の無い行為は、自分が否定してきた事と何等変わりは無いのでは無いかと考えた。
八千代がそうやって性欲と理性の狭間で思い留まっていると、自分達に手を出してこない主人に対し不安になった彼女達は体を起こし、不安な気持ちを隠し切れないまま八千代に問うた。
「・・・ご主人様、どうかニャさいましたかニャ?・・・・ニャにか私達がお気に触る様ニャ事でもしてしまいましたかニャ?」
彼女達は奴隷である。借金や戦争に因って一旦奴隷の身分に一度陥ると、結婚や労働をして給金を貰わない限り自力で平民の身分に戻る事は難しい。ましてや学も無い技術も無い彼女達の立場からすれば、ここで主人に気に入られないとなると、また奴隷商へと売り払われてしまう事になってしまう。
望む望まぬに関わらず、自分達が主人に気に入られる事が今後の人生に於いて大きな死活問題であり、同じ奴隷商館に居た嘗ての姉替わりであった奴隷から聞いた話から思うに、目の前の八千代は奴隷の主人として理想では無いかも知れないが、最良ではあった。
今まで見てきた奴隷を買いに来る男は総じて金を持った富裕層であり、歳を取った男や醜男ばかりが多かった。中には異常な性癖を持った男に捕まり、酷い扱いを受けた奴隷がいるとも聞いた事がある為、決して美形では無いが奴隷を買う程のお金が有り、それでいて自分達を気遣ってくれる様な優しさを持った八千代は、彼女達にとってこれ以上望めない程の優良物件であった。
つまり、彼女達は八千代と肉体的な関係を持つ事に依って今後が保証される事に繋がり、懐妊でもすれば八千代の妻や妾になる事も考えられ、例え飽きられたとしても、メイドとして雇用される可能性があった。
彼女達の当面は八千代に気に入られる事が最上の目標であり、またそう教えられてきたのだった。
そんな彼女達の不安を他所に、八千代はベッドから離れ、振り返らずにこう言った。
「・・・・俺さ、女の子とさ、付き合った事が無いから良く判んないけど・・・・どうせ肉体関係を持つんだったらお互いを好きになって、気持ちを確かめてからにしたい・・・・馬鹿かも知れないけどさ、色々頑張るから好きになって欲しいかな・・・何て思ってるんだよ・・・・それに何かさ・・・勿体無いじゃん、お互い初めてなんだし・・・・・だからゆっくりやって行こうと思う・・・・・って、俺みたいな奴がこんな事言っても気持ち悪いだけかも知れないけどさ?」
八千代はそう言って振り返り、どこか困った様な顔を浮かべて笑った。
「「・・・・・・・」」
八千代の言葉に彼女達は呆然とするだけで何も答えられなかった。
━━奴隷は人に非ず・・・・そう云った扱いや認識が世界の常だった。幸せになった例はあれど、あくまでそれは例外中の例外であり、全体の一割にもならないかも知れ無い。大体の奴隷は飽きらると転売されて売春婦となり、戦場や売春宿に送られる末路が多く、果ては病気になって治療される事無く野垂れ死ぬ事が多い。
そんな非人間的な扱いを受けると云う境遇が女性奴隷の常であった。
そんな八千代の言葉は、自分達を一人の人間として接してくれた事に等しく、彼女達の傷ついた心と尊厳に深く響き渡った。
思わず彼女達は涙を流し大声で泣いて八千代に抱き着くのだが・・・・残念な事にそんな事を恰好つけて言いつつも八千代はフル勃起していた・・・・そこは察してあげて欲しい。
そうして微妙な空気になった後も、気を取り直して食事に向かうとするのだが、出掛けにアベルに見られ、これまた微妙な空気になってしまった。
そうして夜は夜で、風呂上がりの彼女達の仄かな色気に興奮して中々寝られなかった八千代は、就寝した2人のゴールデンスライムを密かにバレない様に撫でてからやがて就寝した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
甲高いエキゾーストを上げ、アスファルトの上を疾走させる。流れる様な景色の中、何故か自分の目線は低く、前にいる数台の車両をごぼう抜きしていく。
最終コーナーを曲がった瞬間、トップを走っていた先頭車両と並び、後はストレートで勝負。
回転数を上げ 、4速・・・・5速・・・6速・・7速 と 加速して相手を抜いた瞬間・・・・
「ふぉおおおおおおんんんん!!!」
八千代は体を瞬間的に上半身を起こし、そう叫んで目が覚めた。
「・・・・・一体何だったんだ?今の夢は・・・・」
摩訶不思議な夢を見た・・・・まるでドライバーでは無く、レーシングカーになってサーキットを走っていた。最早、あと一歩でゴールというところで目が覚めたのだった・・・不可思議な夢ではあったが、不思議と爽快感があり、決して悪夢の類と言った夢では無い・・・・だがしかし八千代は思う。
(・・・・夢だから理屈じゃ無いんだろうけど・・・・・けど俺、夢に出てくる程レースや車に興味無いけどな・・・・・それに免許も持ってないし・・・・)
そう考えながらも気を取り直して体を動かそうとすると、何かが動いているのが視界に映る。
「・・・・・・・・」
・・・・その動く物の正体は、カミユが八千代の元気なシフトレバーを握って縦横無尽に動かしている手であった。
(ああ、そう言えば俺、この子達の事買ったんだっけ・・・・・)
「ハハッ、やっぱ、寝顔もカワイイな・・・・・」
八千代はそう言いながらも未だ気持ち良さそうに眠るカミユとミュミュの頭を撫でるのだが、カミユの手を決して退ける事は無かったのだった。
「うしっ!2人に好きになって貰える様に頑張るか!」




