プリンセス学園入学
お気に入りが我が力になるー!
なんてね。お気に入り数は見ないと決めた。
増えないのはいい。しかし、減ってると悲しくなるもの。
あれから、まずは学園に入学しようと思い、試験を受けた。
当然、溢れる知性を持つこの僕は余裕で合格である。
危ない思想を持たないかの軽い確認、動機を聞かれたりなどの簡単な面接だったので、溢れるほどの知性が必要であったかと言えば否であるのだが。
もともとその知性を求めて学ぶ場所が学園だし、学費さえちゃんと収めて大きな問題を起こさなければ概ね問題なしということである。
授業は好きな授業を選び、その授業の始まる教室に個々人が集まって受ける、言わば大学方式。
基本的にどの授業を受けてもいいけれど、何かしらの科目試験で合格をもらわないと卒業は不可。
卒業した場合、学園側での仕事の斡旋と学費の一部返却。というのが卒業特典。
特に仕事は学園の職員が自ら見に行った職場なので雰囲気や給料など条件が堅実である。
ゆえに遠くに住む人間もこぞってこの学園都市アルタイルに来るのだとか。
僕が受けるのは当然やまいの手伝いも出来るであろう薬剤科一筋、と思ったのだがやまいが持つ教科書を見て愕然とした。
え、何この難易度?と。
日本のゆとり仕様の教科書なんて目じゃないほどのビッチリ具合。
文字が読めないので軽く内容をやまいに教えてもらうとまぁ出るわ出るわ。
面倒な調合比率だとかこれは暗記しておかなくてはならないという公式的なものが。
そしてやまいは文字を読むために文字学というのも習っている。
我が家族ながらすっごい勉強家だ。
それだけグリューネを助けたいということなのだろう。
文字を習って薬剤の勉強も!となるとさすがに時間がかかりすぎる。
だったら僕はやまいのサポートに徹するべき。
もといやまいの衣食住の面倒と素材集め。学園なんてシンボルさえ貰えればこっちのもの。適当にファンタジーときたら魔法でしょ!っということで魔法科を選択。
しかして実際は全部サボるつもりである。
んなことやってられないと言いたいところなのですが。
残念ながらやる気のない生徒はダメダメだよぉ!ということで学園からの退去命令が下るという。
ならばぼちぼちやりつつ、合間の時間でやまいの手伝いをすることにした。
そういう流れで現在魔法の授業を受けている。
ここらでサクッと回復魔法でも会得すればこの先、いろいろと使えるだろうという思惑もある。
「・・・なのに、なぜ攻撃呪文ばかりなのか。」
そう。授業でやることはすべて攻撃呪文ばかり。
攻撃は最大の防御なりと言わんばかりの内容だ。
先生が悪いのだろうと思い、他の先生の授業も受けたがカリキュラム管理でもしてるのか似たような内容だ。
髪飾りとしてサイドテールにつけた魔法科のシンボルをいじりつつ、のんべんだらりと授業を聞く。
「であるからして・・・」
そして攻撃呪文も舐めてました。
どうせファンタジー!
イメージが強さを決める!!とか魔力をぐおっとしてバッで発動!!
そんなノリだと思ってたの。でも違った。
ここ一週間の授業内容をまとめるに、適性があってそれが無い人は全く使えません!
というのが一番大事な部分。
適性が高いとなんの準備なしでも使えますよ!というのが二番目くらいに大事。僕で言うエアスラッシュやエアジェットである。
しかしここで大番狂わせ。
魔法は基本的に魔法陣を作成する工程ががうんぬん、それが中途半端だと威力でないよ!!
これが一番大切なことである。
適性があり、なおかつ魔法陣もある人がすごい魔法が使えるということになる。
僕のエアスラッシュをしっかり魔法陣を書いて使えば格段に威力が上がるとかなんとか。
細かい説明は割愛して、いろいろと難しい理屈があって結論が『魔法陣を刻んだ何かしらが必要だよ!』みたいなことを言っているのだ。
で、その魔法陣にも法則性が有り、かと思えば不規則性がありと・・・覚えることや習熟が必要なことがたくさん。
魔法陣=魔法のプログラムとでも思ってくれればいい。
で、先生に個人的に聞いたところ回復魔法は非常に複雑な魔法陣が必要で、かなり大変だよ!がんばれよ!!と言っていた。
魔法使いと言えばもっと簡単なものかと思ってました。
「おっとタコちゃん。君は筋がいいね。」
「そうですか?」
「確かに魔インクと魔力ラインでは後者のほうが効果が高いのだけど・・・ここまで安定して魔力が扱えるなんて・・・将来が楽しみだ。」
壮年の先生がそう言ってくれた。
彼が言っているのは魔という字がついてるからちょっと目新しく感じるが、インクで書くか、魔力という目に見えないもので書くかを言っている。
インクだと呪印的な物が書けてカッコイイ。
魔力だと普段は何が書かれているのかは見えないが、魔法発動の時のみその魔法陣が光ってカッコイイ。
要はどちらも厨二的なカッコよさを秘めているということである。
というと僕がアホっぽく見えるかもしれないので、真面目に解説すると前者は目に見えるので魔法に詳しい人はどんな魔法かわかってしまう。
後者は発動直前まで見えないけど、魔方陣作成に純粋な魔力コントロールが技術的に難しく、魔力もかなり必要ということである。
まぁ前者は隠してしまえばいいし、適性が高い人は僕のエアスラッシュのように魔法陣なんてなくてもバカスカ撃てる。
あまり意味は無い。
となれば光ってカッコイイ魔力ラインで書くのは、当然のことである。
回復魔法の魔法陣を早く作れるようになりたい。
☆ ☆ ☆
授業が早く終わったので、やまいの教室へ行くとまだ授業中。
こうして見ると授業参観に来た気分である。
ドアの窓から見る分には横顔しか分からないが、真面目に頑張ってる姿がまた可愛らしい。
そして授業参観に来た保護者なりの不安に駆られた。
魔法使いだし、ということで日向さんに穴の開けられた服の変わりに買ったローブ。
ふとそれを見回し、変なところがないかを確認。
他の生徒さんに「やまいちゃんのお姉さんってだっさーいっ!」とか言われないかちょっと不安である。
一応性能よりも見た目重視でフリフリがついていたり、色合いも黒を基調として、ところどころに赤が混じっている腰くらいの丈のローブ。
下半身はミニスカニーソックスである。
なぜかって?それの方が可愛いと思ったからさ!
気分は着せ替え人形遊びを自分の体でしているようなものである。
そもそも服なんてタコ状態の時には来ていない。
・・・となると。
ポリプス騎士街では僕は裸体で盗みを働いていたことになる。
な、なんて度し難い変態泥棒だったのだ!
無自覚にそんな変態プレイをしていたなんて気付かなかった!!知らず知らずのうちにわいせつ罪も働いていたことに!!
なんて馬鹿なことはほどほどに。
授業が終わったようである。
やまいが扉から出てくるのと同時に抱きついた。
ここ数日、僕は基本的にこうしたスキンシップを多めに取ってる。
どうもちょいちょい気分が沈んでるんだよ。この子。
「さぁ!やまいっ!!
今日は武器屋の前にあった定食屋にいこうっ!!」
僕を見ると余計にグリューネのことを思うってところなのか?
はたまた。
幸せ過ぎて怖いとか。たまに思うものだ。
今までが辛かった場合、それを脱して幸せに感じたとき、逆に怖く思うのは。
「わぷっ。・・・た、タコ?」
「おうともさ。」
わざわざ教室まで迎えに行ったのは初めてですよ?
少し、あざとすぎたかな?
「・・・タコの手料理がいい。」
「そ。ならそうしようか。そうだな・・・帰りに野菜を買いまくって、サラダ三昧といこうかな。」
「お肉。お肉が良い。」
目を輝かせて言う。
・・・いいか。別に。
「・・・なら肉団子もメニューに加えるか。ちゃんと野菜も食べるんだよ。」
その言葉に首を縦に振るやまい。
それとも焼肉にして、レタスと一緒に食べるというのも・・・
甘ダレソースを作っておかないと・・・
大きな都市だと調味料もたくさんあって良いものだ。
普通のソースとか醤油とか。当然のようにある。さすがにかなりお高いものだが、食べることにおける贅沢は贅沢とは言わない!
「お、おい、まじかよ・・・」
「ああ、なんだ・・・」
「え、あの子・・・すっごい笑ってる・・・」
ふと気づくと周りがどよめいていた。
おそらく僕の可愛さに驚きの念を隠せないのだ。
だったらよかったのだが。
笑顔で僕の手を引っ張るやまいを見ながら、やっぱり友達はいないのだなと確認する僕だった。
やまいの日頃の態度が周りから見て取れるというもの。
「やまいは友達とかいらない?」
「タコとドードがいるもん。」
あからさまな話題フリに少し機嫌を悪く、というよりも残念がる気持ちを隠すように口を開くやまい。
ここプリンセス学園の敷地内には八百屋や肉屋なんかも普通にある。
そこで買い物をしながら話していた。
「嫌われるから?」
「・・・。タコは嫌わないよね?」
「もちろん。でも、今なら加護もあって他の人にも嫌われないでしょう?」
「・・・・・・・・・別に、いい。」
「・・・そう。」
そのままそっぽをむく。
ただ力を使っただけでそれまで築き上げてきた関係が崩れるのだ。
仲良くなった友達の前でもしも使って嫌われたら?
もしくはそんな加護なんていうよくわからないもので嫌いになる。
その程度の友人なの?と。
いろいろと複雑な思いもあるのだろう。
仲良くなればなるだけ嫌われた時のショックも大きくなる。
「あ、そうそう。ザーボンのところにいかないと。」
「背中治すの?」
「おうとも。やまいに作ってもらった元気になる薬の一歩手前版を使ってね。」
「・・・うん。」
「どうしたの?
何か残念なことでもあった?」
「・・・食べたかった。」
しょぼんとするやまい。
どおりで薬を作るのを渋ってたわけだ。
「・・・背中の木から出来る実のほうがきっと美味しいよ。」
「ほんとに?」
「・・・・・・多分。」
すごく亀が食べたかったのね。
「おや、いらっしゃい。
タコちゃんにやまいちゃん。」
「こんにちわ、オルベインさん。」
飼育場のオルベインさんに、にこやかに挨拶。
「こんにちわ。」
やまいは無表情である。
「毎日様子を見に来るなんて感心だねぇ。飼育員としては嬉しいよ。」
「他の人はこないんですか?」
「必要なときに、って感じだからね。別に問題はないんだけど・・・魔獣好きとしてはこう・・・なんていうかね。」
僕としてはいずれ連れて帰るのだから、飼育員に任せているわけには行かないという部分が大半だ。誰かに世話してもらうだけでは豊饒の森、ではなく喰み殺す森に帰ったときに苦労する。
場所だけ借りて世話は自分でしなくては。
それよりも魔獣好きとは驚きだ。
魔獣=殺戮対象みたいな価値観のはびこる世間ではかなり珍しい人ではないか?
「ははは、驚いているようだけど、別に珍しくはないんだよ?
魔獣学者や魔獣医の大半はそれが動機だって言うし。私はそれらになれるほどの頭や学費が無かったからこの仕事についてるだけで。」
「へぇ。そうなんですか。」
魔獣医って・・・語呂悪いなとだけ思った。
「今日も餌やりかい?」
「それもありますが、背の木を治そうと思ってまして。」
「ほう?
となるとゲンキニナールでも持ってきたのかい?」
「・・・何、その名前。」
「ん?薬の名前だが。」
「そ、そうですか。」
そんな名前の薬なのか?
「それじゃまた。」
「はいはい。あのユグドラシルなら今の時間、向こうにいるから。」
「ありがとうございます。」
で、結果的にユグドラシルの背の木は治った。
目の前でニョキニョキって勢いで歯が生え変わるように盛り出たのには少し感動した。
「すっご。こんな効き目のある薬が作れるようになってるの?」
「ん。」
「ご褒美になでなでしてあげましょう!
それとも、今日の晩御飯をお肉三昧にする?」
「ど、どっちもが、」
「どっちもはダメだからね。」
「え?・・・うー、うー。」
凄い葛藤をし出すやまい。
「なんてね。お肉三昧となでなでをプレゼント!」
やまいに抱きつきながら頭を撫で回す。
やまいは顔を赤らめて意地悪とだけ呟いた。
グリューネを助けるという魔法薬自体はそう時間をかけずに完成しそうである。
豆知識
魔法薬『ゲンキニナール』を使ったとたん、ユグドラシルの背の木が治りました。ここから読者が感じたのはゲンキニナールは万能薬的な薬なのでは?と思ったことでしょう。
ファンタジーだから許されているだけで、現実では症状にちゃんとピンポイントで効く薬を使うのが一番です。
例えば風邪薬。
様々なものがありますが、一時期、CMで「あなたの風邪は喉から?鼻から?あなたの風邪に狙いを・・・うんぬん」というCMがありました。
人によって風邪における症状がひどくなる場所と比較的そうでもない場所があります。
作者は喉からタイプ。喉が痛くなって2、3日後に風邪になるという人です。
こういう人は喉にピンポイントに効く薬を。
という具合に風邪のすべての症状に効く万能薬タイプを使うよりも自身の症状に合った薬を使うのが一番良い飲み方、だそうです。
またプラシーボ効果というのを聞いたことはありますか?
これは例えば『ただの小麦粉を薬として渡されて飲んだら、薬として効果が現れた!』みたいな「思い込み」が人体に影響する現象のことを言います。
そのまた逆もあり、効果のある薬を効かない薬だと思って飲むと薬の効果が減退するといいます。
みなさんも薬を飲む時に少しそのへんを意識すると変わるかもしれません。花粉症の季節が近くなっているのでヤク漬けの人が多くなると思うので、是非お試しあれ。
作者的には実感としてはないです。
ただ母親が「これ効くわー」とか言って渡してきた鼻炎薬を「確かに効くわー」と思うのは多少なりともプラシーボってるのかもしれません。




