露骨な伏線
露骨な伏線・・・露骨なフラグ・・・露骨な肋骨。
何を言っているんだろうね。うむ。
「さて、いろいろと言いたいんだけれど、とりあえずあれだ。
まずは戦おう。襲ってくる敵を迎え撃とう。
そこからはじめようじゃないか。」
まずはそこから。
襲ってくる敵を迎え撃つ。
そう、これだけである。
・・・だというのに、なぜこれすらダメなのか。というか、なぜにこんな当たり前のことから言わなければならんのか。
「特にマキシマム君。君は論外。わかってるよね?」
「あああんっ!?
マジもんの素材に触れて興奮しなきゃ男じゃねぇぞゴラァすいません!」
脚を振り上げて蹴ってやろうとしたらすぐに頭を直角に下げるマキシマム君。
始めからそうしろ。
こちとら普通の護衛ならともかく、冒険者組合に来た依頼書にはサポートって書いてあるんだ。
実際に戦うのはこの子達だというのに、死にたいのかと。
かといって見捨てるわけにも行かず。
「日向さん。」
「は、はい。」
「ええと・・・戦うのは初めて?」
「は、はい、すいません。
血とか見るのも苦手で・・・」
魔法を使う職業を良くは知らないのでなんとも言えないが、それで大丈夫なのだろうか?
魔法使い=戦闘できると思ったが、それは日本でのゲームや漫画のイメージ。
そうでもないのかな。
一言に魔法といっても様々なものがあるだろうし、錬金術とか傷を癒す回復が得意とかそういうことなのかもしれない。
「ケッ。確か日向家と言ったら魔法士の名門どころ。分家か本家は知らんがそこの出の人間の割にはつっかえねぇなコラ。ただの肉の壁かーごぶふっ!!」
悪態をつくなとは言わない。それぞれの勝手だし、その言葉を受けて泣きそうになりながら黙る日向さんが何も言わないところを見ると、言い方は悪いもののれっきとした事実なのだろう。
普段ならちょっとしたイヤミや個人の諍いに口出すほど野暮じゃないが・・・君が言うな。
反省してないだろ?
一応言っておくけど君だからね。一番論外なの。
そして言うタイミングと意味を考えて欲しい。
今も僕たちに向けて動物たちが「美味しそう!むちむちプリンなお尻とかおっぱいとか美味しそう!」みたいな目を向けて虎視眈々と隙を狙ってるから。
仲違いとか学園内でやってくれ。
もう暴力ダメ絶対とか言ってる場合じゃないから。ガンガン殴ってこー。言ってわからなきゃ殴るしかないでしょ。じっくり話し合っていられるような場所じゃないことを恨みなさい。
ちなみに、殴られたマキシマム君はうごごと言ってお腹を抑えて、悶絶していた。
・・・ちょっと強すぎたかな?
力の加減がわからない。
「ところで魔法士って何?」
という僕の疑問にティキと日向さんが目を見開いた。
もとい驚いたようだ。一般常識なのだろう。
ティキはなぜに驚く。
僕が捨てられたであろう存在で一般常識的な教育を受けたわけじゃないのは知ってるでしょうが。
で、聞いたことをまとめるとゲームや漫画で言うところの魔法使い、魔法の力を使って戦闘をする人たちのことを魔法を使う戦士、略して魔法士と呼ぶのだとか。
魔法を生活関連で使うのは錬金術師や魔法使い。
うむ、また一つ賢くなった。
「・・・そうなると日向さんは魔法士でいいのかな?そして魔法士である日向さんは戦えないと・・・本来はダメなんだよね?」
「・・・す、すいません。」
申し訳なさそうに謝る日向さん。
「今、できないものはしょうがないさ。ゆっくり克服していけばいい。」
今すぐどうにかすれば良いといっても無理だろう。
だったらそれを踏まえたうえで動いたほうがいい。
「・・・。」
またも日向さんが驚きの表情を浮かべてる。
「どうしたの?」
「いえ、その・・・そんなこと言われたのは初めてで・・・今まで・・・その・・・こんなこと言ったら笑われていたか、怒られた・・・ので、その。」
そら第三者で、なおかつ日向家なんて何も知らない人だからね。
彼女の親からすれば世間体や、名門と呼ばれるだけの年月をかけて積み重ねてきたプライドってのがあるだろうし、しょうがないことだと分かっていても家族はついつい怒ってしまうだろう。
家族以外の人たちはめっちゃ凄いって聞いてたのに全然すごくない!ぷーくすくすという感じかな。
日向家という名前のブランド効果が下手に高いために余計滑稽に映るのだろう。
『こいつが今からめっちゃ面白いトークやりますよ!』と散々、ハードルを上げておいてその実、滑ったときのあの絶望感を彼女は常日頃から感じて・・・ちょっと違う話になってるな。
それはさておき。
「まずはそのたどたどしい動揺を出さないように頑張ることから初めて見るといいと思うよ。」
「・・・そんなの無理です。」
「そうか。」
まぁそんなことは自分が一番わかってるだろうし、それで無理だと言うのならいろいろと頑張ってみたのだろう。
それで無理なら赤の他人の僕に言えることは何もない。
ただ、戦ってくれなきゃ困る。
なんて説得すればいいのだろうか?
とりあえず・・・少しでも、そう、少しでも戦えればいいのだ。
ちょっとづつ自信をつけて、戦うという行為に慣れを見出していってくれればいい。
「僕は魔法使い、じゃなくて魔法士じゃないからよくわからないんだけど・・・魔法ってどうやって使うの?」
「・・・?
それは魔力を練って・・・」
魔法のプロセスを聞いたところ、遅延詠唱的なことをできそうだったので、聞いてみるとできるという。
遅延詠唱というのは単に僕が勝手につけた便宜上の名前で、実際はー
魔法を詠唱する。
魔力をこめる。
炎の球が相手に向かう。
の3つのアクションがあったとして、三つ目の、もう炎の球が打てるよ!状態で常にいられないのか?ということだ。
このことをなんちゃらかんたらというそうなのだが、ぶっちゃけそのへんは聞き流していた。
とにかくできればいいのだ。
さすがに事前に落ち着いて魔法の準備をしておけば、あとは狙いをつけて魔法を解放するというだけ。
それだけなら慌ててる最中でもできるんじゃないか?と思う。
というか出来て欲しい。お願いだから。
できなきゃもう今日の実地演習とやらは中止にしてもいいくらいである。
次にツインちゃん。
なんだかんだで彼女が一番いい子っていうのが、これまたひどい。
頬についた返り血なんかを軽く拭ってあげつつ、先行しすぎないように。と一時的にも仲間がいるのだから仲間をサポートしつつやるんだという言葉に素直に頷いてくれた。
生来から無口気味というだけで、中身は普通?で素直なことに心を癒された。こんなことで癒されるとは。
ほか二人がどれほどのストレスを僕に与えているかが再確認できた次第である。
が、まだまだ始まったばかり。この程度、サービス残業よりははるかに幸せだ。
なによりもその手間に見合う報酬をもらえるのだから。
念のためもう一度仲間と連携することの大切さを言い含めると、彼女の言った一言が胸に突き刺さる。
「仲間と連携することで生存率があがる・・・本当に?」
ごもっともです!
ごもっともな意見だよね!
あの二人と連携しても、ただの足でまといだよねっ!!
純粋なようなので、この場しのぎで彼らと協力すると助かることもある!なんて無責任なことは言えない。
そんな無責任なことをいってこの先、彼女がほかの仲間を作った際に一見使えない仲間でも連携し合うことでその力は二倍にも三倍にも・・・なるといいなぁ。
その時になって僕の言った事が嘘だと分かっても、分かった時、それ死ぬときかもしれない。冒険者は危険な職業。彼女の専攻学科も聞いてないけれどもしも冒険者の道を歩んだ際に、今日の僕の言葉を真に受けてしまうと、僕の嘘で一人の子供の将来を摘み取ってしまうかもしれない。
かと言って、協力してくれないと彼女たちのパーティは実地訓練失敗、僕たちの報酬もお流れということに。どう考えてもこのパーティの一番のダメージソースは彼女だ。
・・・まぁお金はすぐに稼げるし、格別急ぐ旅というわけでもない。
ダメならダメでその時に考えればいいかな。たしか失敗しても何割かは報酬が貰えたはずだし。
「相手によってはね。」
「・・・そうなのかな?」
「・・・いや、あの二人を見てもそうは思わないだろうけど・・・」
「それにしてもその尻尾凄い。触ってみてもいい?」
「え、ああ、別にいいけれど。」
さっきから不意打ちだとばかりに襲いかかってくる動物たちはすべて僕の尻尾で弾き飛ばしていたが、どうにも隙がないと分かると動物たちは散開していった。
もう尻尾を使うこともない。別にいいだろうと思って触らせると、彼女は尻尾についてる吸盤をいたく気に入ったらしく、ぷにぷにと触っていた。
・・・よし!
次こそ大丈夫だ!!
「ティキ・・・何してるの?」
「・・・ふん!」
どうも彼女は自分が積極的に話しかけても無視していたツインちゃんが僕の尻尾を見るだけで興味津々になっていたことがなにか面白くないらしい。
ちょっと涙目になっていた。
☆ ☆ ☆
「ひゃああああっ!?」
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラっ!!」
手甲にスパイクをつけたような武具でもって迫り来る魔獣を殴り飛ばし、弾き飛ばすマキシマム君。
ただ叫んで頭を抱えてしゃがみこむ日向さん。
マキシマム君が弾き飛ばして飛んできた動物たちを盾で玉砕粉砕大喝采していくツインちゃん。
まぁ僕とティキが出る必要がなくなっただけでも進歩というものだろう。
ちなみに狩った動物たちは彼らが回収して売るのだとか。いらないものや僕やティキが迎え撃ったものは僕たちが回収。
今日の晩御飯兼売り物である。
ただ、ツインちゃんが少し肩で息をしていた。
小柄な体型通りに体力が少ないようだ、が、この世界の人間は前にも言ったが他の生物を倒すたびに強くなる。
冒険者組合で言うところのレベルが低いのだろうか?
ちと体力の消耗が激しい、というより上限が低い気がする。
そして気になるのが、彼女の盾を覆うように展開する黒いモヤモヤっとしたもの。
暗黒魔法とか、闇魔法とかそういう類のものだろうか?
強大な力の代わりに心が欠けていく呪いが・・・みたいなバックボーンがあったりして。
あったとしてもどうともできないが・・・とか言うと巻き込まれフラ―と、とにかく、より威力のました盾は威圧感も醸し出し、余計な魔獣がよってこなくなった。
そんなものあるなら始めから使って欲しかったです。
「ちびのくせして俺の分までとりやがってよ。ずうずうしいぜコラすいません。」
マキシマム君を睨む。
彼はたしかに壁としては使えるのだが、それだけだ。
彼はリーゼントであり、特徴的なキャラではあるものの平凡な12、3歳の体格と筋力しかない。その彼から繰り出されるパンチの連打はスパイク付き手甲であったとしてもそれほどのものではないし、どんなに頑張っても動物たちの骨を砕くほどではない。
ツインちゃんが頑張ってくれるからこそ今ここまで来るのに三人とも特に怪我がないのだ。でなければ今の十倍は疲弊していただろう。
その自覚があるのか、あってなお文句を言わなくては気がすまないのか。
かまってちゃん疑惑のあるマキシマム君に一瞥だけをしてそっぽを向くツインちゃんだった。
な、なんだよっ・・・とちょっとビクッとなっていたマキシマム君。打たれ弱いのかもしれない。
縮こまっていた日向さんは、こうなるかなぁとはちょっと予想していたので別に思うところはない。
あれだけパニックになってた子がそうそうすぐに戦えるようになるとは思っていないし、もうちょっとだけ様子を見る。若干甘い気もするが、本格的な矯正は学園なり家族なりが苦心するべきこと。
あまり厳しく追い詰めてヤケになったり、怪我されたりするよりはマシである。自己嫌悪に陥っているであろう彼女をティキが励ましているがどれほどの効果があるか。
幸い、彼ら生徒をパーティとしてまとめるのは管理しやすいためで、パーティ内での協調性に重きを置いた訓練ではない。と思う。
このまま彼女が足でまといに終わっても僕とティキで十分カバーできる範囲だ。
「彼女みたいな人にもできるのにどうして私は・・・」
日向さんのその言い回しにちょっと違和感を感じたけれど、僕はそれには気づかず流してしまった。
そう。
思えば気づくことのできる伏線はたくさんあったのだ。
なんていうとアレなフラグだが、実際、この時の僕には思いもよらない大事件・・・というのも少し違うが、とにかく大事件があるとは露とも知らなかった。
「あっちゃあうっ!?」
っと考え事をしていると、日向さんが頑張ったのだろう。
なんとか用意していた魔法の発動はしたのだが狙いが狂ったらしい。
考え事をしていた僕の背中にぶち当たった魔法が結構な熱さで奇声を上げてしまった。
慌てて傷口を手当しようと謝りながら駆け寄る日向さん。
しかし僕のぽっかり空いた服から覗く綺麗な背中を見て傷口がないことに驚く。
熱かっただけだもの。傷なんてつくはずないでしょ。日向さんが手加減したんじゃないの?と聞くとえ?とだけ言っていた。
・・・深くはツッコムまい。きっと、無意識に戦いにおける忌避感から加減していたのだろうと思う。
というか僕がいなかったら、魔法の射線の先にはツインちゃんが。
マジやばかったんじゃないだろうか?
やはりここはしっかり注意せねばなるまい。
というかなぜ僕ばっかり注意してるのだろうか?
ティキも注意しなさいよ!と言うと
「え?ああ、そうだよね。無視する人って最低だよね。」
またもやツインちゃんを見てた。
それもなにやら不快そうに。そして最後の一言。
お前はそんなに無視されたくないのか!
いい加減、そのへん流しなさいよ!!めんどくさいな!!
「ていうかなんで無事?」
「無事じゃない方が良かったみたいな言い方ですね。」
「そ、そんなことないよ?ただ心配よりも不思議さが上まっただけで。」
ひどす。
あ、ちなみにこれはさっき立てたフラグ回収じゃないです。あしからず。
ツインちゃんが不思議そうに、興味深そうに僕を見ていたのがいやに記憶に残った。
まるで皆してそこは怪我しとけよと言われてるみたいでなんか悲しかったです。
少し伏線を伏線っぽくしすぎたかなぁと思います。
露骨な伏線よりも「まさかっ!?ここでこの伏線が生きるとは!!」とか「これが伏線だったのかっ!?」みたいな物が書けたらと思ったけれどこれが限界ですた。
作中でフラグと言いつつもそれを否定!すると読者はこれはないな!と思う。そう思わせたところで・・・ふふふこれから先は秘密。




