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タコのグルメ日記  作者: 百合姫
Ⅳ章 豊饒の森
39/110

はじめてのお使い 後編

今回で豊饒の森編、もといやまい編は終わり。

次回はどうしようかな~そろそろ別の場所でまるで別系統の食材を出したい。

今回の話は僕の書いた物には珍しくハートフルにできたと思います。多分。

「もうっ!もうもうっ!

まったくもうっ!!」


ぷんすか怒りながら森を突き進むやまい。

当然動物は逃げていく。

それに気づいたやまいはいったん落ち着いて、タコに習ったことを思い出していた。


狩りにおける鉄則1。

音を発てず目立たないこと。


まずは頭を低くして、ゆっくり歩く。

出来るだけ草の無い土の部分を踏むようにして歩いていけば草が擦りあう音も軽減できる。

腰にはポーチがあり、そこには水筒と、いざと言うときのための獣よけと投げられるように加工した獣よけ爆弾。

おやつとしてメープルシロップをつけた木の実(へびいちご)。迷わず帰ることが出来るようにと、コンパスも入っている。

どこからともなく現れたグリューネに『がんばりなさい』と言われ渡されたものである。


「うう・・・」


きょろきょろと落ち着かない様子のやまい。

冷静になり始めるととたんに怖くなってきたのだろう。

常に回りに気を配らないといけない足場の悪い森の中では、体力はもちろんのこと精神力も削り落ちる。

森では捕食者が次の瞬間には被捕食者となることは珍しくないことである。

強くなったタコとていまだに怪我を負う事もある。

自然界における生き残る力(サバイバル)は純粋な戦闘力では測れないものがあるのである。


そのまま30分ほどだろうか。

周りに気をとられて本来の目的を忘れひたすら警戒していたやまいは、ふと狩りをしにきたことを思い出した。


「私だって・・・私だってできるもん。」


自身を鼓舞し、意地のみで歩みを進めるやまい。

と、ここでようやく始めての獲物に出くわすこととなる。ようやく、というより一時間もしないうちに見つけるのは幸先の良いほうであるが。

運の良いやまいの視線の先にはおなじみトンボウサギ。

羽ウサギから進化した動物で、羽ウサギ時代には無かった立派なトンボのような薄くもしなやかそうな羽が特徴である。

羽はプルプルとしたゼリー状のコラーゲン物質で形成されていて、魔力によってある程度の強度を保っているため、締めたあとは非常にやわらかい部位となる。

出汁として使えるし、そのまま食べてもゼリーのような触感と、肉とは思えない甘さがあり、子供が好きそうな部位である。

いざと言うときのために糖分を蓄えてるため非常に甘い。軽く湯通しすると動物特有の獣臭さも抜け落ち、デザートとして食すことも可能だ。

基本的に一家族単位で群れていることが多く、親らしき個体が常に周りを飛んで警戒しているウサギである。

耳がとても良いため、下手に大きな動物を捕らえるよりも難しかったりする。

近づいた段階で気づかれすぐさま逃げ出される上に、体は羽ウサギ自体とあまり変わらず小さいがゆえに草の茂みに混じって逃げられるとすぐに見失うのだ。


「・・・。」


やまいは息をひそめて近づいていく。

彼女の武器であるくろもやさんの有効射程はおよそ8メートル。

長いようで短い距離だ。

またくろもやさんは普通に目で視認できる不思議な物質なため、相手の視界を考えて広げなくてはいけない。

慎重に慎重を規して、接近していく。

有効射程に入った瞬間、瞬時に俗に言う竜の爪と呼ばれる基本形態を作りあげ、それで襲い掛かるやまい。

極力接近すれば攻撃が届くまでの時間も縮まる。

最大限に近寄ったことが良かったのだろう。

トンボウサギの一匹に攻撃があたり、足数本と羽が千切れかけたトンボウサギはもがくしかない。


「と、獲れた・・・えへへ、ほら、ぜんぜん出来るし。」


今までの緊張とはじめての狩りを成功させたことでつい笑みがこぼれるやまい。

緊張も弛緩し、トンボウサギに止めをさそうとしたときである。

背後から攻撃を受けたやまいは吹っ飛ばされた。


「きゃっ!?」


ごろごろとみっともなく転がるやまい。

かばんに詰めてあった水筒が転び出て、中身が飛び散った。

おやつの木の実や獣よけも数個飛び出る。手に持っていたコンパスが跳ね飛んで壊れてしまう。

幸いくろもやさんを展開していたので体をまとうソレが身を守ったものの、次の瞬間には目の前に大型犬ほどの犬が居た。

ビッグウルフと呼ばれるこの森でも強い位置にいる動物だ。


狩りにおける鉄則2。

周囲の安全確保。


先ほども言ったように自然界において捕食者が被捕食者になることなど日常茶飯事である。

それを防止するためには自身の周りに他の動物、漁夫の利を狙っている者がいないか、自分より強い動物が自身が狙う動物を狙っていないか、逆に自分に忍び寄っているものがいないかの確認が必要である。

このビッグウルフは大型な上に必ず3~5匹で狩りをする動物だ。

1匹のオスに他数匹のメスが集まるというハレムを形成する。

ぞろぞろと出てくるビッグウルフ達。

その数四。

8つの目ににらまれたやまいはびくりと硬直する。


2匹がトンボウサギを抱え、ボスらしき個体がやまいのこぼした木の実を食べ始めた。

この群れはさきほどのトンボウサギを獲物にするつもりだったのだろう。

やまいはそれに気づかず彼らのフィールドに押し入ったことになる。

心なしか、他数匹のトンボウサギを仕留めそこなった原因になったやまいに対して怒っているようにも見えた。


「あっ・・・」


用意してもらった木の実がすべて食べ終わったころに、やまいがしとめた始めての獲物も加え、去って行くビッグウルフ達。


「ま、まってっ!

まってっ!!」


せっかくの獲物を獲られ、つい追ってしまったやまいだがビッグウルフは意に介さず森の奥へ消えていった。

体当たりが通じず、得たいの知れない狩りの技を持つやまいを警戒して、さっさと巣に帰ることにしたのだろう。

ビッグウルフはやまいを獲物とせず、あっという間にその姿を消した。


「まっ、あうっ!?」


足場の悪い場所で走れば当然転びやすくなる。

転倒して地面に転がるやまい。

すぐさま立ち上がるが、立ち上がるころには何も無かった。


数個の獣よけと空になった水筒が残されるのみ。

あまりの結果に少し泣きそうになりながらも、歩みを進めるやまいだった。

コンパスが壊れていても目印をつければ良いと思って、くろもやさんを使って木に目印をつけておく。


一方、そのころ。

ビッグウルフ達は獲物を手に入れ、自分達の縄張りに帰ろうとしたところで、横合いにかなり強い衝撃に見舞われた。

4匹が一片に吹き飛ばされたらしく、全員が全員、獲物を落っことしてしまう。


「弱肉強食だからね。君達も生きるためだろうから・・・

うらみはしないけど、あの子の初めての獲物くらいは奪わせてもらう。

あれ・・・?

どれがあの子のだろう?

・・・まぁいいか。全部持って帰っちゃえば。」

『その足と羽がちぎれたやつよ。』

「よく分かるね。」

『森の中で私に分からないことは概ね無いわ。』

「・・・すべてじゃないんだ?」

『う、うるさいわねっ!』

「ありがと。」

『そ、そう?』


いきなり目の前に現れた乱入者に対し、ビッグウルフのボスが、群れを守るためにも自分達の獲物の所在を突き止めるためにも眩む意識を必死につなぎとめて敵であろう存在に視線を合わせた時には、そこには何もいなかった。

少し虚をつかれたものの、ビッグウルフは二匹に減っているトンボウサギを抱えて、巣で待っている子供達の元へと帰ったのであった。


☆ ☆ ☆


狩りにおける鉄則3。

水分を確保しろ。


狩りと言うか生きるためには必ず必要なことだが、水分補給の手段の確保は一番大切なことである。

数日物を食べなくても死なないが一日水を抜いただけで死ぬこともある。

空になった水筒を抱えつつ、やまいは周りの動植物を見ていた。

元の道に戻ればいいだけなのだが、あそこまで啖呵を切った以上一匹は獲物を持って帰りたい。

少なくともこのまま変えるのだけはいやだ。


何よりもこれではただタコに気苦労をかけただけではないか。

やまいがあそこまで狩りに出ると言ったのは自分にばっかり色々なもの、干し肉や街で買った保存食や家の周りで取れる山菜などを与えて、魚ばかり食べているタコに美味しいものを食べてほしかったからだ。

絶対にこのまま帰るのだけはしたくなかった。


そこでやまいはタコに教わったことを活かして水源を探す。

タコが言うには出てくる動物によって水源が近いかが分かると言う。

森は広く、粘膜を持ち、皮膚の薄いタイプの動物が多々いる。

陸貝ナメクジやカタツムリなどの類やカエル、トカゲや蛇などの爬虫類も脱皮の際には脱ぐ皮を湿気でやわらかくして脱ぎやすくするためにあまり水源から離れることは無い。

小型の哺乳類もそうだ。

それらの糞や食べ残し、脱ぎ捨てた皮などをたどっていけば自然とたどり着ける上に、グリューネに教わった植生の分布もある。

湿気が多いほうが育ちが良かったり、逆に乾燥した環境を好む植物も居る。

そうした道しるべをたどり、時には間違いながらも、確実にじめじめしたほうへと進んでいくやまい。

湧き水の出る場所を見つけ、周りの草木を見て、グリューネ曰く綺麗な水場でしか育たない植物を発見。その後に水を軽く口に含み、ここにくるまでの警戒しながらの移動で普通よりものどの渇いていたやまいは笑みを浮かばせながらも、水をたっぷりと飲み続ける。

渇きを満たしたところで水筒に入れることも忘れずに、ここでひとまず休憩することにした。


ここにくるまでゆうに3時間が経過している。


「おなか・・・へったな。」


タコが朝ごはんを食べるときに出てきてしまったので、お腹をすかせるのも無理は無い。

それを思ってのおやつだったのだが、それはもう食べられてしまった。


ぐるるるるると鳴るお腹を努めて気にしないようにして、ぼんやりと休憩する。


「うん、大丈夫、大丈夫・・・」


自分に言い聞かせるようにつぶやいた後、立ち上がり、早速獲物を探しに行くやまい。

このペースだと下手をすれば今日中に獲物を狩って変えれないかもしれない。

日が暮れれば夜目の利かない自分は動けなくなるし、暗い森の中というのは非常に怖い。

今だって夜中におしっこに行きたくなった時はタコに付き添いしてもらっている。

一人、暗い森の中に残されると思うと焦りが出てくるやまい。

すぐさま獲物の探索に出かけて2時間が経過したころ。

空腹や疲労で集中力が散ったやまいは道中何度か獲物を逃がしながらも、次に見つけた獲物はそこそこ美味しそうな見たことも無い動物だった。


見た目状、毒は持っていそうに無い。

そもそも毒をもつ動物の姿は優先的に教えてもらっていたので、まずこの生物が毒を持っていることは無いだろう。

そう判断したやまいは目の前の動物に忍び寄る。


動物は鈍感な方なのだろう。

やまいの杜撰な潜伏スニーキングに気づかない。

その動物は黒の毛皮に、白のコントラストが混じった物で、尻尾の毛はフランクフルトのように膨らんでいた。顔はイタチ科の動物のように見えるものの、体系は小型の熊のようにずんぐりむっくり。

爪はあるものの、あまり大きくなく、鋭そうにも見えない。

やまいはいけると思った。


狩りにおける鉄則4。

得体の知れない動物には十分な警戒を。


動物はさまざまな特徴や生態を持つ。

その中には毒を持って無くても、あっと驚くような自衛手段を持っていたり、見た目では判断できないこともある。

タコの前世である地球ですらそうなのだ。

魔法や魔力といった摩訶不思議な力の働く場所にいる動物はさらに驚くべき生態や特徴を持っていたとしても不思議は無い。


やまいが竜の爪を繰り出したとき、その見た目に反して機敏に動いた黒白の動物。

この動物、地球にいたスカンクをそこそこ大きくしたような生物である。

スカンク。

スカンクとは元々イタチ科に分類されていた動物で、現在ではスカンク科という独立した科に分類される。

スカンク。

地球では最高に臭い液体を吹きかけるというある意味恐ろしい動物だ。

スカンク、この世界では悪臭メフィティダエと呼ばれる。


「ひやっ!?」


スカンクがやまいに尻を向けて尻から液体を飛ばす。

それをもろに受けるやまい。

すぐに感じる激臭と言うべき悪臭を感じ、やまいは意識が飛びかける。

それだけではなく、あまりの臭いに吐き気に襲われ、あえなくげろげろしてしまう。

当然のこと、メフィティダエはどこかへと行っていた。


「・・・くちゃい。」


すさまじいまでの臭さに押さえてただじっとするしかできないやまい。

その臭いは鼻が慣れて、感じなくなるまで続いた。

分からないだけでその臭いはずっと漂っているだろう。

その後も日が暮れかけるまで粘るが、それだけの悪臭を漂わせる生物に気づかないほどの鈍感な生き物は居ず、結局何も獲れずやまいの狩りは終わってしまった。


とぼとぼとお家に帰るやまい。


狩りにおける鉄則5。

帰る際の目印は忘れずに。


目印をつけておけばまず帰れるし、コンパスがあればなおのこと安心である。

が、ここでやまいは重大なミスに気づいた。

目印を途中で付けていくのを忘れていたのだ。

後方で着いてきていたタコとグリューネも「忘れてる忘れてるーっ」とついぼやいたものだが、聞こえるはずもなく。


ついとその場に立ち尽くすやまい。


おろおろとしながらも歩かないと始まらない。

一生懸命、記憶をたどり、こうだったかな、こうだったかなと不安になりがらも暗くなっていく森を歩いていった。

が、その歩みは当然ながら遅々としていて、さすがに明かりをともすための道具はポーチに入っておらず、魔法も使えないやまいは真っ暗な森で一人泣きそうになって、うずくまっていた。

ちょっとした物音にもびくりと震えつつ、泣かないように辛抱強く我慢した。

泣いてしまえば夜行性の動物を呼び込んでしまう。

そもそも、こんなことで泣くのは自分の意地が許さなかった。

泣けない、泣かない。

今回森に一人で入ったのだって、タコに美味しい食事を取ってもらうため。

自分が泣いて助けを求めても逆に余計な気苦労を背負わせることになる。

そんなことしたくないし、してはいけない。

はずだったのだが。


「しんぱいしてるかな・・・」


幸せだった生活が一変、加護のせいで良くしてもらっていたのにいきなり嫌われたという過去を持つ彼女としては、心配していて欲しいという思いがあるものの、でも心配をかけて余計な苦労をかけたくないと思いもあった。なのに自分は何をやっているのか。

一人で暗い場所にいるということでどんどん気落ちしていくやまい。


「怖くない・・・怖くない・・・」


その辺の木の影に隠れているというだけなのでちょいちょい嗅覚の鈍い動物に見つかり襲われるものの、くろもやさんで追っ払うことができる。

しかし動物が敵かと思えば次に襲ってきたのは睡魔だった。

こくりこくりと眠気に負けそうになるやまい。

寝てしまえばそこで食べられてしまう。

寝ながらくろもやさんを展開なんて器用なことは出来ない。

自分の頬をつねったりしながら賢明に眠気をこらえた。

それでも育ち盛りの子供には限界があり、今にも寝そうだと言うときに目の前に現れた狐。

敵か、と思って身構えるも眠気と極度の疲労でふらつくやまい。

それを支える狐。


「・・・あ、ありがとう?」

「コン。」


ひと鳴きした狐はそのまま自身の住処と思われる地面に掘り進め、固めた穴へとやまいを誘う。

警戒しつつもやまいがそこに入ると狐はやまいに寄り添い、寝始めた。

やまいも限界だったので半ばやけくそぎみに安全だと判断するとぐっすりと眠ってしまったのである。


「おやすみ。がんばったね。」


眠る際にそんな一言が狐から発せられた。


そしてやまいが朝起きると狐は居なくなっており、桃のような果物が一個。

やまいは少しさびしい思いをしながらも果物を食べて穴から出る。

狐にお礼をしたかったが、それよりもまずは帰ることが先だ。


「ありがとうございました。」


穴に向かって一礼して、今日こそ家に帰ることにする。

心配しているならばすぐさま家に帰らなくてはいけない。


結局家についたのはそれから10時間後。

夕方になってからだった。


とぼとぼと臭い香りに包まれながら家に帰ってきたやまい。

その顔は心なしか元気が無い。

ご飯をほとんど食べてないせいでもあるし、結局余計なことをしただけに過ぎないことを理解していたからだ。

一人でいくといってこのざまである。

もしかしたら嫌われるかもしれないとすら考え、気持ち重く味のある木で出来た扉をあけるとそこには座ってじっと待っているタコがいた。


何を言おうかとあたふたしていたやまいは抱きしめられる。


「・・・くさいよ?」

「臭くないよ。嗅覚は鈍いほうだからね。」

「ごめんなさい。」

「何が?」

「ご飯取れなかった。魚ばっかり食べてるたこに―」

「別にいいさ。」

「き、嫌いになった?」

「ならないよ。

本当、よくがんばったね。お腹がすいただろう?

トンボウサギがあるから食べよう。」

「うん・・・」


タコがそう言って、部屋にある箱を開けるとそこにはいつぞやに見たトンボウサギと同じ部分が千切れているトンボウサギがいた。


「・・・これ・・・」

「やまいががんばって獲った初めての獲物でご馳走といこう。」

「で、でも・・・これ、持って行かれて・・・」

「僕のために獲ってくれたものをどうしてその辺の犬に持っていかせるの?

取り返してきたんだよ。」

「うう・・・うう~、ついてこないでっていったのに・・・」


ついてきていたということに気づくがその顔には行く前の時のような剣呑さは無く、ただ涙があふれていた。

自分の初めての獲物。

タコのために獲った獲物。

考えないようにしていたがやっぱりショックだったのだ。


「ひぐ・・・うえ・・・うえええええええええええええん。」


ついには泣きじゃくるやまい。

泣き止んだ後にヒノキのお風呂にタコと一緒に入って、体を洗ってもらい、その後はウサギの肉を使ったシチューを食べて、泣き、タコに「美味しかった。ありがとう。」と言われて泣いて、その後は元気をとりもどしたらしく途中で出会った狐の話をしながらあっという間に夕食の時間は過ぎていくのだった。

ほとんど何も食べていなかったために、トンボウサギのシチューは体に染み渡るように感じた。

シチューに入れられたウサギ肉はザク切りにして包丁で叩いてからじっくりと煮込まれ、大きな塊にしてあるがために歯ごたえもあって歯ごたえ抜群。それがゆえに噛み締めれば噛み締めるほどシチューのやわらかいコクと適度な塩分、肉の旨みが交じり合って舌を楽しませる。

そしてトンボウサギのコラーゲンたっぷり、糖分たっぷりの羽によって良い出汁が出ており、シチュー自体にもほんのりとした甘みが付け加えられており、非常に食べやすいものとなっていた。

疲れたときに美味しく感じる塩分、糖分がバランスよく含まれたやまいのことを考えて作られたものであることが伺える。

入れられている山菜はにんじんに近いもので、しかしにんじん特有の苦味はシチューのまろやかにすべて溶け込んでいて、野菜に火を通すと出てくる自然な甘みでこれもまた疲れた体を優しく癒してくれる。

じっくり煮込んだにんじんは噛むまでもなく口の中でとろけて消えていった。


最後に出されたデザートは出汁をとった後に取り出したトンボウサギの羽を冷やした物。

毛はすべて取り除いており、肉を包むのは薄皮一枚のみ。

獣臭さは出汁を取る段階で取れて、さらには肉としての旨み成分も出しにした時にシチューにほとんど溶け込んでいた。

よって残ったのは凝縮された糖分のみ。

ゼリー状の肉は甘みしか残っておらず、それはまるでゼリーのような食べ物で、初めて食べたやまいは一気にちゅるんと口に入れてすぐさま食べてしまった。

残念なのは羽が一対しかないため二つ分しか食べれなかったことである。


自分が初めて狩った獲物。今までで一番美味しく感じたのは言うまでも無く、そして泣く。


「ぐっすり寝てるな。まったく、無理をして・・・」


お腹いっぱいになり、安心したやまいはすぐに眠ってしまった。


『まったく、甘いわね。』

「何のこと?

僕が助けたんじゃなくて、狐が助けたんだ。」

『・・・はいはい。』

「・・・ずっとそわそわしてたくせに。」

『し、してないわっ!』

「・・・はいはい。」

『真似しないで頂戴っ!!』

「ぐあっ!?また刺したなっ!?微妙に痛いんだぞっ!!」

『・・・これ食らって微妙って・・・一応神経毒もあるんだけど―なんで効かないのかしら?』

「えと・・・筋肉があるから?」

『そんなことで神経毒が無効化されたら神経毒をもつ生物はいなくなるでしょうね。意味無いから。ほんとわけわからない。』



寝ていたやまいはタコの服をずっと離さなかったそうな。


動物豆知識


実際はスカンクにとっての臭いかけは最終手段なので作中ほど簡単には使いません。

まずは尻尾を立てて威嚇し、次に前両足をその場で踏みつけて威嚇し、それでも迫ってくる敵に対して最後の手段として肛門腺に溜められた臭う液体を噴出します。

この臭う液体は自然には分解されずらく、人間でも直接嗅ぐと吐き気を催すほどの悪臭です。

量が少ないためにあまり使おうとしません。

ちなみに肛門線はある程度照準を合わせることが出来るらしく、命中精度は高いとか。

作中ではメフィティダエとの名ですが、これはスカンクの学名の悪臭を意味するラテン語をそのまま使いました。

一部の地域では街中で普通に見られていて、土で作った堤防に穴を開けるために危険だとされています。

街の人が野良猫に餌をやり、その餌を横取りすることで繁殖していたらしく、野良猫への餌やりを取り締まると激減したそうです。

野良猫への餌やりはやめましょう。

都会においてはカラスを増やす要因になります。

ちなみにスカンクはペットとして飼われていることもあり、ペット用のスカンクは肛門腺が取り除かれています。

犬猫に劣らず、結構可愛い動物です。


NHK地球ドラマチック「誰も知らないスカンクの話」参照

どこぞのなんちゃら動物園とかいう番組よりは動物番組としてはるかに面白いです。ていうかアレは動物と絡む芸能人が主役だから動物好きからしたらあまり好かれてない番組だったり。動物を引き立て役に使ってるくせにうんぬんみたいな。

地球ドラマチックは動物ばかりと言うわけではないですがお勧めの番組だったりします。

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