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タコのグルメ日記  作者: 百合姫
Ⅴ章 交易都市バルゴ

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美味しいジャムの作り方

ちょっとした前座話。

ちなみに作者が読んだことのあるグルメ漫画は将太の寿司(講談社)くらい。

なぜか寿司屋の玉子焼きをどうすれば作れるのかで苦難した話が一番印象に残ってます。

最近の十代はトリコあたり?あれはギリギリグルメ漫画から外れてるようないないような。

主人公達のリアクションがほんと美味しそうですよね。

あれからさらに一週間が経過した。

あの日以降、毎日の狩りは一緒に出かけることになり、日本で言うところの子供と一緒にキャッチボールをする感覚で狩りに出かける。

毎回毎回獲物を取るたびに間延びした声で―


「たこ、たこっ!

見てっ!!

獲ったっ!!」


と元気に獲物を片手に見せてくるのでほほえましいのなんのって。血まみれの獲物片手に走りよってくる幼女。

嫁にしたいですフヒヒ。

・・・ごほん。

なんて冗談はともかく、僕の引き取った子供がこんなに可愛いわけが無い!みたいな感じのタイトルで小説を出したら売れるんじゃないかなぁとか―なんていう冗談もまたともかくとしてだ。


ジャム。


そう、ジャム作り。

ジャムを作ろうと思い立った。

ちょっとそれどころじゃなかったのでやれなかったが、身を守るくらいは出来るようになったやまいを引き留守番させて、ちょっと奥の方にやってきた。

いい加減、甘いものがメープルシロップだけじゃ飽きるだろうと言うことで果物を採りに森の奥へ。

採るついでに果物の木を、具体的には蜜柑の木を2本、梨の木を3本、桃の木を5本。

計10本。

とりあえずこんなものである。

いちいち森の奥へ行くのは面倒なので家の周りに植えてしまえば良いやと思って引っこ抜いてきた。

こういうとき触腕がたくさんあったり、ガチムチだと便利だ。

全部の触腕がふさがっていたので動物が襲ってこないように獣よけのアンブロシアを使ってのっそのっそと帰ってきた。

木を抱えて戻ってきた僕に気づいたのだろう。

とてとてと走りよってきたやまい。


「なにを持ってきたの?」

「果物の木。」

「くだものっ!?何っ!?」

「蜜柑と梨と桃。」

「た、たべるっ!

たべちゃだめっ!?」

「ううん・・・ちょっとだけね。桃くらいしか甘いの無いけど。」

「桃だいすきっ!

狐さんがくれたものだし、おもいだすもんっ!」


思い出の果物であるからなおのこと好きになったってことかな。


「そう。」


一個もぎとってあげると早速皮を向き始めたやまい。

果汁で襟元を汚すやまいを眺めながら、また服を洗わないとと思いつつ。

さぁ、久々の発明タイムだ。


☆ ☆ ☆


見事に目論見が外れた。

まず蜜柑、梨。

ほとんど青いものだったが、なんとか熟してるっぽいのを見つけて食べてみた。

やまいも一緒に試食してみたのだが・・・


「ううん・・・桃の方が好き。」

「そうだねぇ。」


どちらも然程甘くなかった。

こんなに抜けた(・・・)味だったかな。

甘いことは甘いがスポンジに砂糖水を付け足したようなそういう甘さだ。

淡白で薄い甘さとでも言おうか。

端的に言うなら不味い。

なぜ?

と考えたところでそういえば農家のものは色々と品種改良、もといより甘い実を出す木を選別して交配させていったものが昨今の品種、って話を聞いた気がする。

となると僕が自分で選別して交配していかなくてはいけない、ということになる。

もしくは土壌をいじれば甘くなるのだろうか?


困った時のグリューネさんに尋ねてみる。

森のこと、植物のことなら彼女に聞いた方が早い。


『・・・ああ、なるほど。魔素が抜けてるのね。』

「魔素・・・だと?」


地球ではまずないであろう要素っぽい名前が出た。

グリューネさんの話をまとめると地球において植物における三大栄養素、窒素、リン、カリウムのほかに魔素とやらがあるらしく。

それが無いと枯れたりはしないが抜ける(・・・)らしい。

特に、この森にある植物はすべて魔素を吸収する性質が他の地域のものより強い品種で、魔素の増減の影響が特に色濃く出るとか。

土壌自体は問題ないはずと言っている。

ていうかそもそも魔素ってなぁに?

魔力にかかわりがあるだろうことは分かる。


『魔力の構成物質のひとつよ。

魔力は生物の持つエネルギーと魔素を組み合わせて作られる。その魔力は微量ながら大気中に漏れ出していて、それを分解する精霊が魔力を魔素にする。その精霊が不足したり、そもそも大気中の魔力が少なくなるとこういう木が成るの。ちなみに生物が死んだ際は魔力が一気に体から抜け落ちるようになっているわ。』

「ほうほう。」

『蜜柑と梨は魔素の少ない地域にも構わず生えるから、たまたま抜けた木を選んできたのでしょうね。』


つまり地球で言うなら動物が出した糞を分解して植物の栄養に出来る形にするバクテリア的な存在が精霊とやらで、魔素は窒素的な何か、肥料的な何かと思っておけばいいのだろう。

ちなみに魔力が分解されないで漂うと非常に有害な物質だとか。魔力は個別の波長があるくせに別の波長でも引き合う性質がある。このために大気中の魔力が多いとそれを吸い取ったほか生物が波長の合わない魔力を取り込んで調子を崩すらしい。当然木も生物なので微量ながら魔力を持つ。糞をそのまま草にやっても枯らせてしまうように、魔力を分解させるための精霊の数も重要で、蜜柑と梨の木は魔力の量、もしくは精霊の数が少ない場所になっていたと思われる。

ちなみに木は光合成でデンプンを作るというところまでは地球と同じだが、この世界では水と太陽の光と空気中の魔素で魔力も生成され、それもまた成長するためのエネルギーに使われているという。

デンプンと魔力の二つの要素があるため、この世界の木々の成長は地球のものと比べて格段に早く、実をつけるまで10年以上かかるような木でも、約1、2年で済むとの事。すごいね、ファンタジー。

余談であるが、ちょっと前に人間が行ったゴブリンの大量虐殺は死体から大量に発生した魔力を精霊が分解しきれず、魔力溜まりという現象を引き起こし、あのままでは森の生物が死にかねないほどの魔力の濃さだったために森食みを起こしたとのこと。

森食みってなぁに?って聞いたら、ボケが始まった老人を見るような目で見られた。

わけが分からない。



『毎日、葉に付く虫を取ったりと世話をしてれば近くにいる貴方から魔力がにじみ出てそれを精霊が分解する。抜け(・・)はそのうち解決できるでしょうね。』

「なるほど。」

『貴方が桃と呼んでる果物は元々魔素が濃い場所でしか育たないものだから、これだけは甘かったの。・・・うん、美味しいわね。この桃は良い木(こ)よ。』

「食べないでよ。これからジャムにするんだから。」

『・・・ジャムとやらがなんだか知らないけど、なんでわざわざ手を加えるのよ。こんなに美味しいのにもったいないわ。』


これが第一の問題であった。

第二の問題がジャムの作り方がよく分からないということである。

とりあえず桃を一個。煮込んでみることにする。

鍋を用意し、火の魔道具(ガスコンロ)の上に置いて、中に種と皮を取り除いた桃を入れる。

芯まで甘い桃はジュジュウと音を発てて煮込まれていく。

それとヘラで潰しながらかき混ぜていき、水を加えてみた。


が、失敗。

桃ジュースを水で薄めた・・・いわばそのまんまの味である。

ジャムのべたべた感と濃厚な甘みがまるで感じられなかった。

次にやったのはメープルシロップを加えて煮込んだ。

美味しい。

美味しいけど桃にメープルシロップを漬け込んだものを食べている感覚だ。

もといそのまんまである。

これがジャムなんじゃないか?

この味こそがジャムだろう!?という感じ、すなわちジャム感がまるで無かった。


ああ、そういえばジャムには砂糖を混ぜ込むんだったということを思い出して桃と砂糖を混ぜ込んで煮てみた。

今度は水を加えずに煮てみる。

桃に含まれる水分でちょうど良いと思ったからで、しばらく煮込むとジャム感あふれる食べ物が完成。

ジャムが砂糖と果物を混ぜ込んでつくるもの、程度の知識しかない割には良く出来たと思う。


「・・・ふむ、まぁ成功かな。非常に簡単な気がするけど。」


そのまま単体で食べる分には甘すぎるものの、パンと一緒に食べればなかなか美味しいであろう桃ジャムが完成した。

ただ、桃は他の果物に比べて酸味が弱く、地球産のものであればあったはずの芯近くの酸味も無かったため、すごく甘ったるいものになった。

もう少し砂糖を減らしてよかったのかもしれない。

ただ甘ったるいだけのものなので子供は好きそうだが、甘いものが苦手な人には進められないものとなった。

万人向けのジャムは蜜柑に期待することにしよう。

とりあえず砂糖を控えめにしたものも作り、食卓用のテーブルの上に置いておく。

ビンは熱湯消毒したものを使っている。

三日くらいは持ってほしいけれど、高温多湿で年中暖かいこの森では難しいかもしれない。

熱帯雨林のような環境だし。

かと思えば北のほうに行くと乾燥した場所もあったりでそこは異世界の森、さまざまな環境の森が内在しているようである。


「すごく甘いにおい・・・なにこれ?」


やまいが目を輝かせてジャムを見る。

甘いものだと分かっているのだろう。

ビンに居れずに今日使うつもりだった分の一部をヘラで掬って食べさせてあげる。


「・・・お、おいしいっ。」


夢中になってぺろぺろと舐める。

あまりあげるとそれだけでお腹いっぱいになるので、途中で切り上げ、残念そうに「まだまだ欲しいよぉ」と上目遣いで見つめるやまいを努めて無視して、今日の朝ごはんはパンにすることに――と思ったところで、パンを作れないことに気づいた。

材料的な意味ではなく、カマドが無いよ的な意味で。


おおう、これではなんのためにジャムを作ったのかわからない。

いや、甘味の種類を増やすためであるが、なんにせよどうしよう?

ジャムにあう食べ物なんてパンくらいしか思い浮かばない。

こうしてジャムの使い道に困ると、嗚呼、メープルシロップの使い勝手の良さを再認識する僕である。

とりあえずホットケーキを焼いてそれとあわせて食べることにした。

これは朝食じゃなくておやつだな。

さすがにそれは困ると言うことで養殖してるデカミミズのステーキも食卓に出す。

明日はカマドづくりに挑戦してみようと思いつつ。


どんどん家まわりが拡張されていくことにちょっとした充実感を感じる朝のひと時であった。




感想やメール返信(感想などは勝手ながら要点をまとめて書いています。ご了承ください。)

》加護で解決はずるい。

A.確かに。そういうご都合主義には飽きていた僕がなんてこったい。

以後自重します。ただやまいのぼっち能力緩和は見逃していただければ。あくまで「緩和」です。

根気良く付き合っていけばなんとかなるレベル。

仲良くなるまで数年単位必要です。


》漆で出来た剣、もとい漆黒のギミックはいつ登場?グリューネが色々驚いてたけど?加護より凄いんでしょ?

A.地味に凄いんじゃないかな・・・という能力。ぶっちゃけ風呂敷を広げたは良い物の中身をまだ入れてない状態的な、もといこうしようかな程度でしか無いです。何個か複数の候補があって、まだ決め切れてないため登場しないというのが実際のところ。ただチートにはならない程度のバランスを考えてます。

人間相手ならチートです。でも、人間は野生動物に比べると概ねの能力で劣っており、質より数が武器ですからそれで良いかなと思ってます。


》元々の食道楽的なコンセプトはどったの?強い敵倒して、それを食べたりとか。

A.今回がそんな感じの話。強い敵はいませんが。サバイバルな感じで、色々な敵を試食していく感じは新しいフィールドに行ってからになるかと。まだこの森で食べたことのないのは居ますが、身一つじゃ叶わない相手しか居ません。

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