第17話 俺の娘たちはデキる娘たち(後方腕組みパパ)
「お前たちは右のダークドラゴンの動きを抑えろ。ダークドラゴンの連携が断ち切れた隙に残りの二体は俺が討伐する!」
「「承知しました!」」
俺の指示にオデットとシャロットが動きだす。
それに合わせて俺は素早く残りの二体に接近し、大剣を一閃した。
「グギャアアアアアアアアア!!!!」
ダークドラゴンがのけぞって悲鳴をあげた。
俺の一閃はダークドラゴンの巨木のような足を切断し、その巨体をぐらりと傾かせたのだ。
別の一体が俺を攻撃したが素早く避ける。
「わかってたよ」
ダークドラゴンの知能指数は高い。同種で連携攻撃を仕掛けてくることもあるくらいだ。
だが、それが分かっていれば複数のダークドラゴンの動きを予測できるということ。
「ここだろ!!」
「グアアアアアアアアアアアアア!!!!」
隙をついて一気に距離をつめ、ダークドラゴンの首をひと突きした。
一体討伐。すかさず二体目に向かって大剣を投げる。
ダークドラゴンは寸前で避けたが、その一瞬に風魔法発動。
強力な突風に俺の体は跳躍し、投げた大剣を受け止める。
「これで二体目!!」
ザンッ!!
背後からダークドラゴンの首を両断した。
二体のダークドラゴンを討伐し、残りはオデットとシャロットが対峙している一体のみ。
俺は戦闘を見たが、少しして鞘に大剣を収めた。
手助けは……いらねぇな。
オデットとシャロットは冷静だった。ダークドラゴンの動きを読み、攻撃を巧みに封じている。オデットの見事な戦術と剣捌き、シャロットの素早い動作と強力な一撃、それがうまく噛みあってダークドラゴンを追い詰めていた。討伐は時間の問題だろう。
俺は腕を組んで戦闘を見守る。
ふと、俺の背後に整然とした気配が広がった。
張りつめるような緊張感。それは俺がよく知るものだ。
――――ザザッ!
山一面に騎士が整列し、騎士団の軍旗が風にはためく。
そう、招集した俺の騎士団が到着したのだ。
補佐官が俺の後ろに立って敬礼する。
「団長、お待たせしました。第一部隊、第二部隊、第三部隊、第四部隊、招集完了しました。残りの部隊は王都防衛を展開しております」
「ご苦労。急に悪いな」
「いいえ、まさか王都の山にダークドラゴンが出現するとは……」
「まったくだぜ。この山に召喚士がいるはずだ」
「はっ、すぐに捜索します」
補佐官が分団長に命じて召喚士の捜索を始めさせた。
俺は腕を組んだままオデットとシャロットの戦闘を見守る。その隣には補佐官が控えた。
「必要あるとは思えませんが、念のためお聞きします。オデットとシャロットの援護に騎士を行かせましょうか」
「いやいい。二人が始めた戦闘だ」
「さすが団長の御令嬢です。見事ですね」
「気遣うなよ、今はただの騎士だ。俺もあいつらも休み返上になったからな」
「それは御気の毒です」
「ああ、もっと同情してくれ。だが、おかげでいいものも見れた。――――オデット、シャロット、決めろ!!」
俺が声を張り上げた。
それはダークドラゴンが見せた決定的な一瞬の隙。
その隙を見逃す二人じゃない。
「はっ!」
ザンッ!! オデットの華麗な一閃が背中の翼を切断する。
「えええいッ!」
ドゴオオオオオオ!!!! シャロットの強力な一撃がめりこむ。
二人の攻撃にダークドラゴンの巨体が地面に沈んだ。三体目、討伐完了だ。
戦闘を終えたオデットとシャロットが俺のところに戻ってくる。騎士の二人は団長の俺に報告しなければならない。
「団長、ただいまダークドラゴン討伐完了いたしました」
毅然とした二人の報告。
俺は腕を組んだまま頷くだけだ。
「そうか、二人ともご苦労。下がっていいぞ」
「「はっ」」
オデットとシャロットはまた敬礼すると、他の騎士と同じように整列した。
俺はそれを視界の端だけで見る。
よくやった!!
本当は今すぐ駆け寄って抱きしめたい。すごかったぞ、見事だったぞ、俺の娘たちは最高だと思いっきり褒めてやりたい。たかいたかいしてグルグル回して、胸がいっぱいになるほどの喜びを惜しみなく伝えたい。
だが、それは許されない。
今、俺は騎士団団長で、二人は新人騎士。公私混同は言語道断。がまんだ、家に帰るまでのがまんだ。家に帰ったらたくさん褒めてやろう。
「団長、奥様をお連れしました」
振り返ると騎士に守られてアイリーンが立っていた。
騎士団の到着と同時に保護させていたのだ。
「一人にして悪かった」
「いいえ、戦闘中に私はお邪魔になってしまいますから」
「無事でよかった。ここにいろ」
「はい」
アイリーンが俺の隣に控える。
アイリーンは他の騎士たちと整列しているオデットとシャロットを見ると穏やかに表情をゆるめた。
今ここで騎士団団長の妻であるアイリーンは手放しに娘たちを褒めることはしない。駆け寄って抱きしめたいのをぐっとがまんしている。
「……悪いな」
「あなたの妻ですから」
そう言ってくれたアイリーンに感謝しかない。
俺にはもったいないほどの妻で、オデットとシャロットの母親だ。
「団長、召喚士を捜索していた騎士から報告が入りました。召喚士を発見した模様、現在戦闘中ですが間もなく捕縛するかと」
「そうか、油断するなよ。ドラゴン級を召喚する召喚士だ」
「はっ」
ダークドラゴン三体討伐は完了した。
このまま召喚士を捕縛すれば最悪の事態はまぬがれ……。
ピカッ!!
山全体に閃光が走った。それは召喚魔法発動の光。
「――――っ、全員衝撃波に備えろ!!!!」
ドオオオオオオオオン!!!!
ダークドラゴン三体出現の時とは比べものにならない衝撃波。
俺は咄嗟にアイリーンを腕の中に庇う。
そして衝撃波がすぎさり、俺はその光景に目を見開く。
そこには山の空を覆うほどのダークドラゴン。その数はゆうに五十体を越えていたのだ。




