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ユウキサーガ ~ 悪を撃ち抜くCheckmate!~  作者: クレキュリオ
恋歌編

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エピローグ 喪失

 柴葉はパソコンに、レポートを書きこんでいた。

 ビジランテ社をめぐる、一連の騒動。

 誰に提出するわけでもない。日記代わりの記録だ。


 一週間経って、ようやく気持ちの整理がついた。

 ビジランテ社のビルがなくなり。

 空が白く光った。衛星の情報で、ビルの爆発だと判明した。


 世間では様々な憶測が飛んでいるが。

 公的機関は既に答えを出している。

 斎野親子の暴走。NAIをめぐる攻防。


 ただし防衛軍も、一人で戦った少年の事は知らない。

 彼は同時期に行方不明と言う扱いになった。

 こちらは軍の中でも、様々な意見があるらしい。


 斎野親子の野望を阻止した、孤独な英雄。

 他には彼らと結託して、失敗をした反逆者。

 様々な意見が、各々の憶測として飛んでいた。


 柴葉が何故そんなことを知っているかというと。

 軍の情報をハッキングしたからだ。


『やっぱマズイじゃねえの? バレたら人生終わりだぞ』


 パソコンのスピーカーから、音声が聞こえる。

 柴葉は誰とも、通話状態じゃない。


「うるせぇ! 私にも知る権利はある! あとお前も共犯だからな!」

『居場所を無くしたAIに、酷すぎねぇ?』


 柴葉と話しているのは、NAIの一体だ。

 事件が始まった時、恋歌が回収したもの。

 これが冬木ユウキを、事件に関わらせてしまった。


 回収したNAIは『シャイニング』と名付けられた。

 NAIの中で、一番処理速度が速いらしい。

 ビジランテ社が無くなり、本来ある場所を失った。


 そこで柴葉は自分の補助AIとして、居場所と役割を与えた。

 ハッキングのアシストとして、優秀過ぎるが。

 光の速さで、お喋りなのが傷だ。


「どんな手を使ってでも、早く冬木を見つけねえと……」

『なあ。何度も言うが……。あの状況でとても……』

「分かってる! 理屈では分かってんだ!」


 柴葉は机を叩いた。反動すら無視する力で。

 カフェの仕事がサボってでも。柴葉はハッキングを続けていた。

 世界中の情報を集めて。手がかりを集めている。


「でも……。このままじゃ、恋歌の心が持たねえ……」


 恋歌は全てが終わったあの日から……。

 殆ど部屋に閉じこもったままだ。

 本来の人格は、すっかり凶暴さが消えた。


 代わりにずっと。虚ろな表情でベッドに寝ころんでいる。

 もう一つの人格が滅多に出てくることがない。


「私が恋歌を巻き込んだんだ。だから、なんとかしてやりてぇんだよ」

『気持ちは分かるが……。このままじゃ姉ちゃんも、おだぶつだぜ!』


 NAIの情報を仕入れたのは、柴葉だった。

 同じ事件被害者だった、恋歌に相談して。

 過去を乗り越えるために、復讐を計画したのは柴葉だ。


 それがユウキを巻き込むこととなり。

 このような結末を引き起こしたのだ。

 どうしても。自分が復讐など考えなければと思う。


「不思議だよな。前に進むため、過去を消そうと思ったのに……」


 柴葉は背後の扉を……。恋歌が寝泊まりしている部屋を見る。


「私は恋歌の笑顔……。奪っちまった……」


 静かになった、リベリオンを見つめる。

 この時間。恋歌はそこら辺で、ゲームをしていた。

 その都度、なんか手伝えと柴葉はごねたものだ。


 もうそんな姿を見ることは出来ない。

 それだけじゃない。ユウキと一緒に居た……。

 心の底から嬉しそうな、恋歌を見る事も。


「早く帰って来いよ……。冬木……」


***


 街中をスーツケースを引いて、歩く少女が居た。

 カフェ、リベリオンの前に辿り着くと。

 立ち止まって看板を見る。


「ここがリベリオンですか……」


 金色のロングヘア―を、風でなびかせた。

 少女は腕を組んだ。何かを見定めているように。


「ユウにしては……。良い趣味してますね」


 少女はニヤリと笑いながら。

 店のドアに手を乗せる。押すのに、少し間が開いた。


「お前がさっさと戻って来ないから。彼女達にチクります」


 少女。冬木アリスはリベリオンの扉を開けた。

 店内に入り、カウンター席を探す。


「いらっしゃいませ。カウンターどうぞ……」


 新人なのだろうか。妙にぎこちない接客をする少女が居た。

 辺りを見渡しても、目当ての少女はいない。

 アリスは警戒されずに、どう説明しようか考える。


 取り合えずカウンターに座る。

 少女以外に、店員が居ないか見渡す。

 怪しまれない様に、注文だけはしておく。


「キャラメルマキアート。マシュマロ添えて」


***


 恋歌はベッドに寝ころんでいた。

 なにをするのでもなく。なにを考えるのでもなく。

 ただ時間が過ぎるのを待っていた。


 あれだけ消したかった恐怖心が。今は全く浮かんでこない。

 なのに全く嬉しくない。虚しさが増しただけだ。

 失った瞬間。彼の存在が大きく感じるようになった。


 頭の近くで、携帯が響く。

 メッセージが届いたようだが、恋歌は動かない。

 現実に居るのに。夢の中で過ごすような感覚だ。


「ユウ……」


 ただその名前だけを言う日々を、彼女は送っていた。

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