4話
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「オレ様の勘が正しければ、こいつが
最深部に最も近い部屋だ」
「む、もうか。意外に早かったな」
「同感」
「短かった」というものの迷宮に入って既に3日なのだがそれに気がつくものは少ない。それというのも【天使の白翼】は元来、神への祈りを絶やすことなきようにと神から与えられた恩寵であり、祈りによって命を落とすことを良しとしない神の計らいの形なのである
それを常に展開しているのだから疲労による時間感覚は機能を失い、日の届かぬ洞窟の中ともあれば狂うのも無理はないというものだった
ただひとりマージを除いて、軽くなった背嚢の重さと【天使の白翼】が消えていないかを常に見守っているのは彼くらいのものだろう。その他の者は【これ】が消えることを毛ほども考えていないのである
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「よし、作戦を説明する。マージ!」
迷宮の大扉の前、背嚢から荷物を取り出し皆に配るマージにアルトラが声を掛けた。迷宮の最深部近くで小休憩自体珍しいことであり、ましてや戦えないマージに「作戦」などはそもそもあるわけがないのだが
「さてマージ、ここはどこだ?」
「迷宮の最深部です」
「いくらお前でもそんくらいは理解してるか」
【…】
アルトラがマージを指さし告げた
「そんなお前に一番槍の名誉をやろうと思う」
「え?」
「勉強熱心なお前のことだ
この先に何がいることぐらい分かるだろ」
「うん、核とそれを守護する魔物…」
「それ以外にあるかよ」
「でも僕が入ったところで…」
マージはアルトラのいう作戦の合理性を理解できずに小刻みに震え始めた。心拍は早くなり、呼吸は浅く口から吸い、吐いている
そんな様子にアルトラは深い深い溜息をついて、言い放った
「お前、ほんっと鈍いな」
「ごめんなさい」
聡い故に抵抗が無意味なことを知るマージは説明の意図を考えながら助けを求める様に周囲を見回した。しかし、エリアもゴードンもアルトラの作戦に意を唱える様子はなかった
少しの沈黙の後、アルトラに視線を戻したマージは震える唇で辿り着いた結果を口にした
「この先で魔物の情報を集める作戦?」
「なんだ、分かってるじゃねえか
犠牲は少ない方がいいだろ?」
「そっか、そうだね。僕も、そう思う」
服の裾を掴み、地面を焦点の合わない視界で少し眺めた後、マージは背嚢から小さな手帳とペンを取り出して笑って見せた
「で、できるだけ。長く生きて
情報を、残すね」
「おう、さっさと行け」
マージはゆっくりと扉の前まで歩いて行くと振り返り、4人を見ると唇を引き攣らせながら笑顔を見せて一礼をすると
「ゴードンさん、無茶はしないでください」
「無論そのつもりだ」
「エリアさんは頑張り過ぎないで下さい」
「愚問」
「ティーナさん、お世話になりました
たまにでいいので教会に行って下さいね」
【ええ、後で行きます】
「皆さん大変お世話になりました」
震える手でマージが扉に触れるとそれは見た目とは裏腹に軽々と開いて見せた。言うなれば入ろうとしているものを招き入れる様に独りでに開いた様に見える。開けるものの力が関係ない程に
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迷宮の最深部は落ち着きを取り戻し、静寂を極めていた。そんな中アルトラに問い掛けた
【あんなことを言って、いざとなれば
仲間を助けに扉の先に進むのでしょう?】
「ティーナ、何度も言ってるだろ
マージは邪魔なんだよ。ここで
事故として片付けるのが1番なんだって
これで報酬も山分けできる額が増えるしな」
【そうは思えませんが】
「は?…ティーナ、何か隠し事か?
今日はやけにあのクズを庇うじゃねぇか」
【私はただ、事実を言っているだけですよ
見捨てることは悪手であると
そう言っているだけです
アルトラ、ゴードン、エリア】
立ち上がり、扉の前まで歩いて向かい始める
「疑問。マージを助ける必要性が不明」
「ティーナ嬢、貴方も言っていたじゃないか
才能がないと」
【才能の差は何ともし難い
見捨てることを容認したわけでは
決してありません】
「なんなんだ?ティーナ
さっきからマージを庇いやがって
既に後釜を用意してんだぞ?
もしかして、惚れてんのか?」
問答の末にアルトラが【私】にそう言った。惚れているのかと、答えは決まっている───そんな言葉で片付けられることが腹立たしい。しかし、人の解する言語で言うところの「それ」は説明的に合っているのだと思う
【ええ、生まれた時からずっと】
「はぁ?…っ!!?」
「く……が……!」
「なん……だ……!?」
〈効果範囲外〉視界が反転し、呼吸が喉を焼き、強烈な耳鳴りが頭蓋を割る勢いで増していくだろう。皮膚が所々裂ける感覚と手足が痺れ地面に溶けて吸い込まれる疲労感を受けると同時に
「ど、く……!?」
「な、ぜ…ッ?」
「…」
【【天使の白翼】を元に戻しました
不敬にも信仰のない者が神の威光に
縋っていたのも見るに耐えなかったので】




