24話
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「これで全員かな」
マージは追手になり得る兵士をのした。この場に立つのはマージとシズクばかりである。マージは立ち上がったシズクに向けて〈鋲槌朱雀〉を構えた
「最後の警告です。シズクさん
見逃して下さい」
「それはできない!」
シズクが走り出す。マージは歯を食いしばると武器を振り絞る。シズクに対して回復可能な負傷を負わせるべく行動を取ろうとしたその時
「え…」
シズクが目を開いていないこと、攻撃の意思がわざとらしく隠されていないことに困惑した。先程までの戦闘方法とまるっきり違うのだ
〈何で〉───ここで仕留めなければ恐らく捕まる。そうなれば逃れようのない罪を被せられる恐れがある。攻撃すれば少なくとも逃げ仰せる
〈振らなければやられる〉〈何の意図が〉
〈狙いがまるで隠されてない〉
〈近づいてくる〉〈捕まるわけにはいかない〉
「ごめ…ん」
マージが攻撃の意思を固め、武器を振り抜こうとするも『加速制限』による攻撃までの時間が十分にできてしまっていた
〈捨てられてなかった〉
〈魔が差した〉───マージの視線がシズクの腰元で揺れる〈学習書〉に止まった。思考にして1秒の気の迷いにより、マージは長もの不利の状況からのシズクによる〈捨て身の突撃〉を真正面からまともに受けることになった
「しまっ、グ…」
倒れ込むマージとシズク。マージはシズクの拘束を警戒して振り解こうとしたものの、今の戦況、環境を思い出し、シズクを包む様にして衝撃を殺した
家屋の屋上、投げ飛ばそうものなら高所からの落下は避けられない状況。マージは逃走不可能─── 〈不殺制圧〉が不可能であることにため息を漏らした
◆
「やっぱり、攻撃してこなかったなマージ」
「狡いですよ、シズクさん
僕が攻撃してたらどうしてたんですか」
「そこは、あれだ…」
「どれですか」
「折れるまで突撃する」
「えぇ…」
地面に大の字で寝そべるマージは夜になった空を仰ぎ見た。星空がやってくる時間帯の空はどうにも心を解きほぐしてくる様で眉間に寄せていたシワがいつの間にかなくなっていた
「これから僕は連れて行かれるんですか?」
「そうだな、狼の里に連れて行く」
「え?」
「森が死んでいってるって言ったが
身を隠すにはうってつけなんだ
人間が入って来ないし」
「いやいや、シズクさん?
さっき逃げるなって」
「それはゲランが」
「〜…ゲランさんめ」
「?」
◆
「分かりました。ご苦労様」
ゲランは包囲網に綻びを作る様に根回しをしていた。懸賞金を超える額を包囲を担っている兵士に握らせるという何の捻りもない直接的な行動に出ていた
「ゲラン様、本当に宜しいのですか?
アビーク領主にバレたら」
「それ以上の利益が生まれるからいいの
シズクはそれ以上の価値がある
それにマージ君には借りがあるのよ」
「アビーク様が怒りますね」
「そもそも狼人を人狼と偽っている時点で
バレれば極刑よ。今更だけど
まぁ、アビークの今の情勢じゃあ
領民が離れるのも時間の問題
ワタシ達もその波に乗れば問題ないわ」
地下の一室で自慢の財産に囲まれ高笑いするゲラン───狸親父ゲラン、教育期間を早期打ち切りに関して〈借り〉という形を取っていたのをこの機会に精算し、教育者シズクを獲得していた
結果プラマイプラスという豪胆ぶりである
「【黄金律】が反応しましたか?」
「そりゃもうビンビンにね」




