23話
◆◇◆◇◆
「…っ」
「シズクさん、忠告しておきます」
着地をしたシズクがよろめいた
「降伏を」
「だからなっ…うわっ!」
シズクは一歩を踏み出そうとした時身体が重くなっていた───否、速度が乗らないことに驚いた。意識と現実との差による肉体の不和。その瞬間にマージは杖術による技でシズクの意識を飛ばしにかかった
「ぐっ、あぁ…」
「…どうか、もう追ってこないでください」
〈意識奪いの2連撃〉によりシズクは戦っていた家屋の屋根───地面に両膝から崩れ落ちる様にして敗北となった
◆
「嘘だろ、あのシズクを…」
「勝てんのか、俺ら」
「怯むなお前ら、俺たちの役目を忘れたか」
士気が落ちる最中、エルドロが鞭を構え、兵士を鼓舞し始めた
「全力で引き留めろ!それだけだ」
【腕力強化】による、初速と衝撃時の音速に達する鞭打が威嚇を兼ねた破裂音を町に響かせた
「行くぞお前…」
エルドロが突然黙り込む
「エルドロさん?」
近くにいた兵士が恐る恐る振り返る───心臓の鼓動が鼓膜を揺らし、圧迫感を音と錯覚する感覚が鳴り止まない状況、魔力による圧がエルドロのいた方からするのである
それは今し方までシズクが対峙していた魔力に酷似していた
「うわぁ!うわぁ!!」
「囲め!囲め!」
「逃すな!」
エルドロが一撃で意識を飛ばされていた
◆
〈鋲槌朱雀〉が風を切る。ひと刺しで武器を貫き、一振りで盾を砕く、握りによる40の兵士は瞬く間に無力化されていくのを見た兵士はその様に漏らした
「六碗…だ」
〈六碗〉───〈阿修羅の六碗〉無双の意。曰く闘いの場に見られる一騎当千の猛者のひとりを"暴風が如き止まることを知らない3腕1対が如き手数と早業"こう評する
◆
「何が…」
シズクが辛うじて意識を取り戻した。しかし、包囲網は崩壊していた
「凄いな、マージは…」
シズクはそんな中でも散乱した金属片などから、マージが兵士の武具に対してのみ武器が振るわれたことを認めた
「だから、だから今…ここで」
〈手を離しちゃダメなんだ〉
シズクは揺れる視界で立ち上がると深呼吸をして『加速制限』を勘で理解した。到底扱える代物ではない───故にマージへの信頼を持ってこの作戦を実行することに決めたのだった




