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18話

◆◇◆◇◆


「あぁそいつなら辞めさせたよ」


「は?」


 マージが来ないことを気にしたシズクが雇い主の聞くと「辞めさせた」その一言が飛び出した


「なんで」


「シズクお前はもう持続力強化を覚えたんだろ?

 無駄な出費を抑えるのは当たり前なんだよ」


「違う、それをいうなら持続時間拡張だ

 それに…」


「なんだっていいだろう

 仕事に戻れ」


◆◇◆◇◆


「なんでなんだ」


『魔力貯蔵』により常に〈脚力強化【5】〉を使える様になったシズクは麻袋を持ち上げつつ町中を往復していた


 マージが居なくなったことがどうしても納得できないシズクは何処か浮かない顔をしていた───その反面、不思議と近くで見守っている感覚はあるため相反する二つの感覚に晒されていた


「なんで…」


 片手に本、片手に麻袋、一見不安定ながら〈脚力強化〉により片手でも安定して運べるため、この状態に落ち着いていた


 しかし、元戦士として両手は開けておきたい心境が残っていた。今や使える様になったため〈学習書〉は不要なのだが手放そうにも手放せずにいた


「どうして…」


「そこのお前さん、ちょっと」


「…?僕??」


「片手じゃ危ないだろ」


「別にいいだろ、これが、安心できるんだ」


「なら、これを買っていきな」


「なんだこの、細っこい革製品」


 シズクに声を掛けた革職人はベルトの様なものを取り出した。奇妙なことにベルトから伸びている〈それ〉は一見すると端材の切り残しの様にも見えた


「こいつはブックホルダー、腰に巻きつけて

 本を包むとこの通り」


 職人は実演して見せた。腰に巻きつけ、〈びらびら〉しているそれに本を入れると、本の表紙と裏表紙に皮の十字を現した


「おぉ…」


「本来は商人の帳簿なんかを落とさない様に

 する製品だが、お前さんが後生大事に

 抱えている本にはうってつけだと感じてな」


「確かに」


「今なら安くしておくよ」



 腰に巻きつけたブックホルダーとその中に『魔力貯蔵』の〈学習書〉を入れたシズクは両手で麻袋を持ち上げつつ仕事に戻った。しかし、その顔に安心が戻ってくることはなかった

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