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なるべくしてなった

「それにしても、麻里弥は高校の入学式にも出れず仕舞いだったな……」

と、残念そうに告げるのは、十も離れた兄である、新弥だ。新弥は年の離れた麻里弥を可愛がっており、花總財団の役員としての忙しい日々の合間を縫っては麻里弥の学校行事に参加してくれていた。

「そうだね。でもそろそろ退院できるかな」


本来麻里弥は、4月から付属の高等部に進学する予定だったが、今はもう5月も終わりかけ、梅雨に差し掛かろうとしている。


目覚めた頃は立ち上がるのもやっとだったものの、ほとんど今まで通り動けるようになった。目立っていた痣も元通りだ。

もちろん勉強もしている。日中は家庭教師からほぼ毎日のようにオンライン講義を受けているお陰で、遅れを取り戻すどころか、ひょっとしたら追い越してしまったかもしれない。


「麻里弥、もし学校が怖かったら、別の学校に転入したり、留学してもいいのよ?」

そう告げる母、清乃に苦笑する。母もまた、麻里弥にはとことん甘い。

「怖くはないよ」

「無理しないでいいの。お父様も、麻里弥に怪我をさせるような不届き者がいるなんて、ってご立腹だったんだから」

「そうそう。例の男、謹慎処分が続いているけど、麻里弥の意向を聞いてから本処分は決めるよう整っているよ」

爽やかな笑みと共に新弥から語られた言葉に、麻里弥は瞠目した。

「……………お兄様?」

「なんだい?」

「聞き間違いでなければ、俺が入院している間、ずっと先輩は謹慎しているんですか?」

「そうだよ」

先輩なんて呼ぶ必要はないけどね。と悪びれる様子なく告げる兄の姿に、もっと早く聞いておけばよかったと麻里弥は後悔した。

「今すぐやめてください!」

先輩は卒業生だったし、きっと4月から大学生のはずだ。巻き込んでしまったことに頭を抱える。

「庇うのか?」

「どう伝わっているかわかりませんが、ただの事故なんですから」

彼に悪意があったわけではないし、無視して去ろうとした麻里弥の態度は間違いなく悪かった。そもそも階段の踊り場で呼び止められたのも、麻里弥に取りつく島がなかったからに違いないのだ。

結果的に自分が大怪我を負うことになりはしたが、自分には明らかな非がある。


「……そんな、麻里弥がそんな風に言うなんて…………」

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