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岩下 さくら編 アークと羅針盤 その1

<異世界(岩下 さくら)サイド『暗黒六芒星魔導書:本』>


二級冒険者のヴァグナー、聖女ウェリルメル、薬草学師のメイダスが、霧の都ベスタラへ出発したのは、アークの10歳の誕生日の翌日であった。


「ご主人様。参りましょう。絡んでくる連中は、全てなぎ倒します。ご安心を」


ゴシック・アンド・ロリータ風のドレスを着た赤い瞳の少女の吸血鬼ハーデェレンは、ぎゅっと拳を握った。


「い、いや…冒険者ギルドに登録するだけだから…あまり…騒ぎを起こすのは…」


「だが、我が主としては、やられたら、やり返すぐらいが丁度いいな!?」


腰に付けた魔法のランプは、外套で隠してあるが、しゃべられたらバレてしまう。


「うん、でも、エミーラも冒険者ギルド内では、黙っていてね」


(アーク…。こいつら、本当に大丈夫かしら?)


アークが手に持つ魔法の本から、無詠唱系スキルの意志の疎通で、心配だと忠告された。


「よし、行こう! いざ、冒険者ギルドへ」


アークは盲目である。しかし、アークは幾つかの確認手段がある。予知で自分の行動に問題ないかを確認。探知でまわりの人間の居場所を確認。調査で空間の形を認識している。それに追加して、魔法のランプのマナ感知により、千里眼と同等の力を得た。つまり通常の人間よりもずっと視力が良く、目で認識する必要があった魔法も使えるのだ。


効果的には、空間認識は半径15mまで。生命探知は半径100m。危険予知は一分先。千里眼は実質2km先の人物の顔まで認識できるのだ。それに”空間:透視”にて、任意の物を透視する力を得て、アークは、通りの様子を確認していた。


何の問題もなく、王都ベスベスタの冒険者ギルドにたどり着く。一階が酒場、二階が受付、三階以上がギルド本部となっていることは、事前にヴァグナーに聞いていた。


一階の酒場からは、からかい甲斐の有りそうな子供が、二人入り込んで来たことで、ちょっと騒々しくなる。


新人には、ちょっとした洗礼式と呼ばれる非道な歓迎イベントがあるのだ。勿論、ヴァグナーは黙っていた。良くも悪くも、その程度でヘコタレていたら、冒険者など務まらないのだから。


アークは、ハーデェレンに護られながら二階に行くが、それが、また…一階の男どもの闘争心に火を付けたのである。


二階の受付で、アークとハーデェレンは、初級として登録された。これもヴァグナーに聞いておいたため、滞りなく申請が通ったのだ。しかし、酔っ払っていたヴァグナーに、7ヶ月で五級に昇格したこと、それまでの自慢話をたっぷりと聞く羽目になってしまったのだ。


「その冒険者ギルドカードは失くさないでくださいね」


受付のお姉さんに注意を受けながら、アークは、自分の名前の横に”初級冒険者”と書かれたカードを見て、本当に冒険者になったんだと興奮する。


「あ、はい。ありがとうございます」


「そ、それと…。はぁ…。一階で、年甲斐もなく大人たちが、嫌がらせをして来ますので、何かあったら、二階まで逃げて来てくださいね」

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