新宮司 純編 聖女と吸血姫 その7
<異世界(新宮司 純)サイド>
落下していく中、どこまでも底が見えない恐怖。永遠と思える時間も突然終わりを告げた。どん。ごき。べちゃっ。それらが不快な音が同時に響き、肉体がバラバラに吹き飛んだ。
数百メートルという高さからの落下だった。それは何の因果か、異端討伐隊の罠から命を救ってくれたのだ。感謝しなければならないのか?
そろそろ…本気でどっちにするか…。いや、ハーデェレンをメインにしないと生命維持も難しいだろう。 ”新宮司 純”という個が消えてしまうかもしれないが、もう仕方ないだろう。
ハーデェレンに”新宮司 純”が持っている肉体や精神のすべての権限を譲渡した。
それから数時間が経過して。どうやら生きていけるだけの機能を確保できた。可能な限り肉体を繋ぎ合わせ這いずるように移動も可能となったのだ。
「絶対に生き残って見せますわ…」
暗く冷たい地下通路を這いずり回る。少しでも体力を回復するため、途中でねずみを見つければ喰った。どれだけ移動しても出口に繋がりそうな通路は見つからない。いや一つの通路を調査するだけでもこの体では大変な時間がかかるのだ。
クンカ、クンカ。聖女の妹としてはしたないかしら? でも人間の匂いがするの。男性の匂いだけれど、まだ大人になる前の子供。だから、そこそこ良い香り。その匂いに誘われるように近づく。体が、本能が、生命活動のために勝手に動いている。
でも…また異端討伐隊の罠だとしたら? その危険性を考えても体は止まらない。
ズリズリ…。ズリズリ…。あった! あそにいる! 裸の男の子が!!
待って! おかしいわ!! こんなところに男の子がいるわけないじゃない!!
でも、体は止まらない…。
男の子の体内を透かしてみると、殆どの骨が砕けていた。よくも…まぁ、生きていられるわね?
私は男の子の体の上に乗っかる。乗っかると目と目が合った。しかし男の子は目が見えないようだ。私は意識を最大限に行使して、体の暴走を抑えることに成功した。
「こんにちは? こんなところで何をしているの?」
男の子は顎の骨も砕かれていて話せないようだった。男の子の香りが鼻から入ると脳を刺激する。犬歯がニョキニョキと鋭く口の中で生えるのがわかった。多分、この子が死ぬまで吸血を止めないだろう…。もう体の暴走を止める自信はなかった。
【禁止事項:アークを傷つけることはできません。】
【命令事項:アークと主従関係を結びなさい。】
【最重要事項:アークの命を救いなさい。アークの命を守りなさい。】
このために…日本から? 廃城から? 私は、ここに呼ばれたのかしら? この子が私のご主人様? まぁ、私に選択肢は無いのね。
長い時間をかけて、男の子に説明する。「私があなたから血を少しだけもらう。そして力が蘇れば、あなたを治療することができます。問題ないですか?」
男の子が何を心配しているかわかった。
「あなたは吸血鬼になりませんよ。それに考えてみて下さい。私は吸血鬼です。動けないあなたに許可なんて取ると思いますか? そうしないのは、あなたがご主人様になる人物だからです」




