大山 駿編 二級冒険者と加齢臭 その13
<異世界(大山 駿)サイド>
ゴブリン国の親書を冒険者ギルドに提出してからというもの、冒険者ギルドに呼ばれたり、第三王子であるサージル・ウルス・ゴールディンに呼ばれたりと、寝る日間もなく奔走し続けていた。そこにアーク失踪の件が加わった。
「メイダス。お前だって8日病のレシピとか実物の薬とか、あーいろいろあんだろ? 登録とか報告とかさ」
「それよりも、アークの安否が心配です」
「あー、そんなこったぁ、わかってる。だがな…。王都の地下迷宮ってのは、全容がまるでわかっちゃいねんんだ。その魔法のランプってのも眉唾物だし。何処から迷宮に入り、何処を目指しているのかわからなければ、探しようがない」
「地下? 地下ですか?」パメラはアークを探す時、偶然に地下への落とし穴を見つけていたのだ。そう、アークが入り込んだ、あの場所だ。この話を聞くまで、目の見えないアークが、地下などに行っているはずもないため、全く意識していなかったのだ。
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<異世界(岩下 さくら)サイド>
(ごめんなさい。回復させてあげられる魔法がないの…。)
(ううん。大丈夫って言ったら、嘘になっちゃうけど…。すごい楽しかったよ。)
何処とも知れない地下迷宮の大きな空間。そこには絶えず水が流れ込んでいた。地下水路なのかな? その水路の脇に倒れている。多分…全身の骨を砕かれて。手足の感覚がないのだ。
目が見えない自分は、子供だから仕方がないと思われていた事も多かっただろう。でも…毎日少しずつ大人になっていく。いつかは…多くの人から邪魔者扱いされるのだ。それが一番怖い。それなら…今みたいに冒険できて、それで思いっきり失敗して死んだほうが満足できるさ。
(そんな風に…考えないで…アークは生きていて良いんだよ? 誰も邪魔なんて思わないよ…そんなの寂しいすぎるよ…)
(本音を言える相手がいるっていいね。それと、こちらこそ…ごめんね。魔法の本さんも、巻き込んじゃった。俺は死んでしまうけど、魔法の本さんは…ずっと…ここにいることになってしまうかも)
(そのときは、そのときよ。)
アークの探知魔法に…生命反応があった。魔物や小動物に生きたまま食べられるのは…嫌だなって思った。その生命反応は、小動物よりも、全然大きく。そして、すごく移動する速度が遅い。うわっ…ス、スライムとか? 今、軽く自分の命を投げ出していたが、実際に殺されるとなると、とても怖かった。
ズリズリ…。ズリズリ…。っと、何かを引きずるように、地面に仰向けで倒れている自分の頭の方から、それはやってきている。まだ空間認識の範囲外なので、それがどんな形なのかは不明だ。
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<異世界(藤浪 花音)サイド>
湖畔に面した街アルフローテから離れた小さな村、そこは奴隷商人の村。その中の比較的大きな屋敷に目を付けたエーサは、そこそこ立派な服装の男に話しかけた。
「そこのあなた。エーサに、奴隷商人のなる方法を教えなさい」
「はっ?」
「耳が遠いの? それとも、頭が悪いのかしら?」




