武器を作ろう!
「おや、何をしているんだい?」
第27代創世神、クラウド・ゴッドの元へと遊びに来たサリエリ・ヴィーナスはうんうんとうめき声を漏らす部屋の主を見つけた。
サリエリは、愛と美を司るヴィーナスの、第30代目を襲名している。
世間的に愛と美の「女」神と思われているが、今代――、サリエリは立派な美青年である。
サリエリは、数少ないクラウドの友人だった。
世界を創り、神をも生んだ初代創世神はいまだこの天界において権力を握っている。
クラウドはその創世神に準ずる似た力を持つということで選ばれた、いわば雇われ社長に過ぎない。
世界作りはもう何代も前に終わっている。
クラウドは世界の綻びを修繕したり、他の神々の陸を創れだの山を壊せだのという要求をのんだりのまなかったりするのが仕事と言えば仕事だ。
そんな体の良いパシリ…アパートの管理人のようなクラウドには、尊敬してくれるような者も、友人も非常に少なかった。
そんな彼を、サリエリは友人だと公言してはばからない。
まさにヴィーナスにふさわしい、美貌と慈愛の心を持ち合わせている男だ。
「また何か言われたのかい?後光が差してるとか、歩くより転がった方が早いとか、ニュートンの役に立って来いとか…」
……たまに、悪気なく辛辣な言葉を発するが。
「言われてないよ。引きこもってるから会わないし。っていうか、君そんなこと思ってたの?」
じとり、とクラウドがサリエリを睨む。
「まぁ、良い」
深く追求することなく、クラウドが下界を指さす。
追及して傷つくのは己自身である。
「ネコとイヌに、武器を与えようかと考えてたんだ」
「あぁ、君の尻拭い隊」
「……下界ではダメンジャーと呼ばれている」
改めて下界の様子をのぞくと、爪で相手を切り裂くネコ、拳で殴り倒すイヌの姿があった。
「いらなくない?」
十分強いんですけど…。
そんな思いを込めて、サリエリがクラウドを振り返る。
視線の先には、拳を固めたクラウドがいた。
「やっぱり、武器は萌えポイントだと思うんだ!」
クラウドは声量を上げた。
「はぁ」
対するサリエリは、気の無い返事をするだけだ。
下界のサブカルチャーに特に興味を持っているわけでもない。
「それなのに、イヌはへったくそな氷細工の武器を自作するし、ネコは…鉄パイプだ!拾った鉄パイプって…無いだろ!」
「はぁ」
まぁ、サリエリとしても、美しくないだろうということは分かる。
「だから、作って与えてやろうかと思ってな」
「ふーん」
「どんな武器がいいか、悩んでいたんだ」
「あ、そう」
サリエリにとっては心底どうでも良い。
「それはそうと」
サリエリはここへ来た本来の用事を思い出した。
「そのダメンジャーに関することで、君、懲罰会議だって」
武器がどうとか言ってる場合じゃないよ、というサリエリに、クラウドはただただ顔を青くさせるのだった。




